68 切り捨てられたもの
68 切り捨てられたもの
レオピンは泥人形軍団を置き去りにしたあと、日も暮れかけていたので、全力で走って学園へと戻る。
夜の校庭には誰もいないかと思っていたのだが、モナカとコトネがゴールテープを手に立っていた。
レオピンはそのゴールテープを切る。
彼が叩き出した記録は、『地獄マラソン』の世界記録を塗り替えるものであった。
しかし大記録は公になることはなく、闇へと葬り去られる。
レオピンにとって、そんなことはどうでもよかった。
ふたりの少女が自分の帰りを待っていてくれて、そして盛大に祝福してくれたことが、なによりものご褒美だったから。
そして3人は寄り添いながら、祝砲のように、夜空を彩る花火を見た。
「うわぁ、きれい……!」
「書いてある文字はなにやら不穏でございますが、とっても美しいのでございます。
まるで、パッと咲いた花が散りゆくかのようで……」
「モナカだけじゃなくて、コトネも花火は好きなのか?」
「はい、お師匠様。
実を申しますと、こうしてお師匠様といっしょに、花火を眺めるのが憧れだったのでございます」
「願いごとが叶ってよかったですね、コトネさん!」
「はい、ありがとうございます、モナカ様。今日は、とっても素敵な一日となったのでございます」
「そういえばふたりに礼を言ってなかったな。今日はふたりのおかげで完走できたようなもんだ」
するとモナカは、レオピンに白いツムジを向けるように頭を預けてきた。
それを見たコトネは、先住猫の真似をする子猫のように、おずおずと後に続く。
「よしよし、ふたりとも、ありがとうな」
レオピンは右手でモナカを、左手でコトネの頭を撫でる。
ふたりの少女はレオピンのワイシャツをキュッと握りしめ、喜びを分かち合うように手を握り合っていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
さて、教師という身分でありながら、誰よりも早く『救難信号』を使ってしまったニックバッカ。
彼はここから、なんとかしてレオピンに罪を被せようと躍起になった。
しかし、救助隊によってゴブリンにボコボコにされている姿が目撃されており、しかもそのときレオピンは学園の校庭にいた。
どんなウルトラC級の言い訳をしたところで、レオピンに責任転嫁するのは不可能であった。
今回の発起人である教頭は、ニックバッカを弁護するどころか、早々に切り捨てる立場に回る。
「ノーッ! ニックバッカ先生! 体育教師ともあろうあなたが、『地獄マラソン』などという無茶を生徒にさせるざますとは!
しかも帰れなくなるくらいまで走らせたうえに、ゴブリンに襲われて救助を求めるざますとは!
わたくしども『王立開拓学園』の教員に、どうやって採用されたのか、不思議なくらいざます!」
「ミートっ!? そ、そんな、教頭先生! 自分は、教頭先生の言われたとおりに……!」
「ノーッ! 黙らっしゃいざます!
ゴミ……じゃなかったレオピンくんだけでなく、このわたくしめにも罪をなすりつけるだなんて、とんでもない教師ざます!
2ランクダウンといきたいざますけれど、自分から退職を申し出ている以上、それは勘弁してあげるざます!
さぁ、荷物をまとめてとっとと出て行くざます!」
「そっ……そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
『王立開拓学園』に、ついに初の脱落者が出る。
それは当初、多くの者たちが予想していた。
最初に消えてなくなるのは、あの、器用さだけが取り柄の少年であろうと。
しかしフタを開けてみたら、脱落者は彼どころか、生徒ですらない、体育教諭……!
ニックバッカは有名アスリート揃いの名門一族で、ニックバッカ自身もかつては軍隊で活躍していた。
そして彼が教鞭を振るっていた『王立開拓学園』は、世界にその名を轟かせることは間違いない、未来の名門校。
その創立時の教諭ともなれば、将来は王族の仲間入りすらも夢ではなかった。
そんなエリート中のエリートである彼が、どこで道を間違えたのであろうか……?
そう、レオピン……!
彼は、レオピンを敵に回したばっかりに……人生のなにもかもが、周回遅れに……!
学園からの『追放』が決定した次の日の早朝、ニックバッカは学園の太い柱にしがみついて叫んでいた。
「みっ、ミート! いっ、いやだ! いやだいやだいやだっ! いやだーーーーっ!
この学園をクビになったとわかったら、自分は一族からも『追放』されてしまうっ!
そうなったら、自分はもう生きていけないっ!
おしまいだっ! なにもかもおしまいだぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!」
とうとう、学園の警備兵たちが力づくでニックバッカを引き剥がし、動物用の檻に閉じ込めて運び出す。
彼はサーカスに売られるゴリラのように、鉄格子の向こうで叫び続けていた。
「たっ……助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーっ!
じっ、自分が悪かった! 思えば、最初の体育のときに、薄々感づいていたんだ!
キミはこの学園の誰よりも、優秀であると……!
その思いが決定的になったのは、『地獄マラソン』での一件からだ!」
嗚呼、なんたる皮肉であろうか……!
最後の最後で、彼の優秀さに、気付いてしまった……!
「キミならこの鉄格子を破って、自分を助け出すことなど簡単なはずだ!
だからお願いだぁ! いますぐ、ここから出してくれぇ!
なんでもする、なんでもするからあっ!
キミのそばに置いてくれっ! キミの家で、働かせてくれぇぇぇぇぇぇっ!
レオピンっ! レオピィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーンッ!!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺は助けを求めるような叫びを聞いたような気がして、目がさめた。
「う~ん、なんだよ、空耳か……」
そして例によって、身体が輝いていることに気付く。
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レオピン
職業 ニンジャ
LV 16 ⇒ 17
HP 1010
MP 1010
ステータス
生命 101
持久 1001
強靱 101
精神 101
抵抗 101
俊敏 1001
集中 101
筋力 101
魔力 101
法力 101
知力 101
教養 101
五感 101
六感 101
魅力 1
幸運 5
器用 300 ⇒ 400
転職可能な職業
生産系
木こり
鑑定士
神羅大工
石工師
革職人
木工師
魔農夫
陶芸家
菓子職人
花火職人
探索系
レンジャー
トレジャーハンター
NEW! 地図職人
戦闘系
戦斧使い
ニンジャ
武道家
罠師
調教師
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教頭のざまぁは、この次から始まる新エピソードの後になりますので、ご期待ください!
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