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55 ラッキー・キッス

55 ラッキー・キッス


 窓の向こうは、青くなったアケミファンたちが悲鳴の大合唱。

 誰もが顔をかきむしり、さながら集団感染が起こったような有様だった。


「う……うそだうそだうそだっ、うそだぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!」


「アケミ様があんなヤツに『ラッキー・キッス』をなさるだなんてぇ!」


「以前、森の中でゴミ野郎にキッスした噂もあったけど、あれはウソだと思ってたのにぃ!」


「や……やっ……やめろぉーーーっ! アケミ様から離れろぉぉぉぉーーーーっ!!」


 アケミがガッチリと俺を抱きしめているので、離れたくても離れられなかった。


 いや、いつもであれば、その気になれば離れられるはずなのだが……。

 どこまでも甘美な感触で、力が入らなかった。


 まるで力が吸い取られる、いや、新たなる力が注ぎ込まれているような気がした。

 俺の頬はペロペロされているのだが、やられている俺も、やっている彼女も、いまどんな表情をしているかはわからない。


 壁に設置してある鏡を横目で見てみると、アケミは恍惚とした表情で俺の頬に吸い付いていた。

 まるでグルグル巻きにした獲物を、夢中でしゃぶりつくす女王グモのように。


 俺はしばらくされるがままだったが、やがて工房に突入してきたアケミのクラスメイトたちの手によって、なんとか引き剥がされる。


「ん……私としたことが、つい取り乱しちゃったわ」


 アケミは乱れた髪と制服を直しながら、そしらぬ顔をしていた。

 俺の頬はキスマークだらけになっていて、ハンカチを貸してもらってなんとか落とす。


「じゃ、じゃあ俺は、そろそろ行くよ」


「んっ、ちょっと待って、お願いがあるの」


 俺はじゃっかんの警戒を滲ませながら「なんだ?」と問い返す。


「んふっ、そんなに構えなくても大丈夫よ。錬金術に必要な素材を集めてきてほしいの。

 もちろん、お礼はするわよ」


 アケミからもらった『つむじ声の薬』には助けられた。

 今後も世話になるかもしれないから、協力するのはやぶさかではない。


「なにが必要なんだ?」


「んっ、そうね……。いま欲しいのは、ブラックセサミの種、サンフラワーの種、ヨルツメクサの花びら、腐ったオチエダの葉っぱ、クラヤミ苔、ヤケドソウの根っこ、グリフォンバードの砂肝、ゴブリンのツメ、レオピンのツメよ」


「わかった。森を探索した時とかに、ついでに集めといてやる……って、最後なんて言った?」


 アケミは顔色ひとつ変えず「なんだったかしら?」ととぼける。


「いや、レオピンのツメって言っただろ!? 俺のツメが欲しいのか!?」


「あはっ、ドサクサまぎれに言ったら、くれるんじゃないかと思ったんだけど……」


「ゴブリンと同レベルなのか、俺のツメは!? なにに使うつもりだったんだよ!?」


 アケミはひとさし指を唇に当て、「ナ・イ・シ・ョ」と艶っぽい声でウインクを飛ばしてくる。


 どうにも彼女の相手をしているとペースが狂う。

 まあいいやと思いつつ、俺は「またな」とだけ言って店を出ようとする。


 背を向けた俺に、アケミがいたずらな小悪魔のように、ペロリと舌を出しているのにも気付かずに……。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 居住区では他にすることもなさそうだったので、俺は自宅へと帰ることにした。

 その道すがら、身体がピカピカする。


--------------------------------------------------


レオピン


 職業 陶芸家(ポッター)

 LV 14 ⇒ 15

 HP 2010

 MP 2010


 ステータス

  生命 201

  持久 201

  強靱 201

  精神 201

  抵抗 201

  俊敏 201

  集中 201

  筋力 201

  魔力 201

  法力 201

  知力 201

  教養 201

  五感 201

  六感 201

  魅力 1

  幸運 5

  器用 500 ⇒ 600


 転職可能な職業

  生産系

   木こり(ウッドマン)

   鑑定士(アプレイザー)

   神羅大工(セレス・カーペンター)

   石工師(ストーンクラフター)

   革職人(レザークラフター)

   木工師(ウッドクラフター)

   魔農夫(マナファーマー)

   陶芸家(ポッター)

   NEW! 菓子職人(パティシエ)


  探索系

   レンジャー

   トレジャーハンター


  戦闘系

   戦斧使い(アックスバトラー)

   ニンジャ

   武道家(マーシャルアーツ)

   罠師(トラッパー)

   調教師(テイマー)


--------------------------------------------------


「ぱ……菓子職人(パティシエ)かぁ~」


 新しい職業を確認した俺は、思わず唸ってしまった。


 開拓において、菓子職人というのはかなり縁遠い職業だ。

 なにせ開拓の最中は、嗜好品の食料よりも、まずは腹を満たす食料の確保が優先されるからだ。


 生活に余裕が生まれはじめる、開拓の末期にこそ需要が増す職業といえるだろう。


「せめて料理人だったら良かったんだがなぁ」


 なんてことをブツブツ言いながら家に戻る。

 すると帰宅を待ちわびていたかのように、マークが出迎えてくれた。


「くおん! くおん! くおんっ!」


 マークはハチミツが入っているであろうツボを、俺に差し出してくる。


「なんだ? またたくさん採れたのか? もしかして、お裾分けしてくれるのか?」


「くおん!」


--------------------------------------------------


 ハチミツ

  個数1000

  品質レベル6(素材レベル6)


  ハチの巣から採ったハチミツ。

  とても甘く、食用や薬になる。


--------------------------------------------------


 ツボの中には黄金色の液体があって、とろりとしている。

 指を差し入れて、ひと舐めしてみると……。


 歯が浮くような甘さが、口いっぱいに広がった。


「あ……あんまぁ~! 甘い物なんてずっと食べてなかったら、すごく染みるなぁ!

 ありがとうな、マーク!」


 寝転がったマークのお腹を撫でていると、そばでムスッとした顔をしていたトムが立ち上がる。

 プイとそっぽを向いて森の中に消えていったのだが、しばらくして束になった草花を咥えて戻ってきた。


 それは、小さな花とサヤ状の実がついた植物だった。

 それを俺の足元にボトッと落として、ドヤ顔のトム。


--------------------------------------------------


 ブラックセサミ

  個数30

  品質レベル2(素材レベル2)


  野生のブラックセサミ。

  種子が食材や油などに利用できる。


--------------------------------------------------


「おっ!? ブラックセサミじゃないか! どこで見つけてきたんだ!? ちょうどアケミに頼まれてたんだ!」


 トムはさっそく寝転がって、「撫でて」といわんばかりにゴロゴロくねくね。

 俺はペットを飼い始めた途端、彼らのエサのことを心配してたんだが……。


「まさか、食べ物を俺にくれるだなんて……! えらいぞ、お前たち!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 次回 レオピンは菓子職人のスキルを手に入れた レオピンはハチミツを手に入れた レオピンは菓子を作った 女子生徒達のレオピンへの評価がとどまることを知らない
[気になる点] ジュエリー忘れてない?どぶねずみの
[一言] アケミ、なんか精神がオオカミになってない!? あんなキス、普段はしないのに それだけレオピンを自分のものにしたいとか 独占欲ありすぎじゃない?
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