46 モナカ vs クマ
46 モナカ vs クマ
入学式の『能力開花の儀式』で明らかになった俺のステータス。
そのなかで、『魅力』のパラメーターは『1』だった。
そのとき俺は、自分がずっとモテなかった理由を理解する。
しかし今の俺は、『魅力』が101ポイントもある。
それがどれくらい高いかどうかはわからないが、たしかヴァイスの『魅力』は50ポイントだった。
ヴァイスは小さな頃からモテていたので、その倍の魅力があるというのはとんでもない。
しかも俺を基準にすれば、一気に101倍だ。
そりゃ、幼なじみがいきなり101倍も魅力的になったんじゃ、モナカも挙動不審になるだろう。
俺はとりあえず、『魅力』を元に戻すことにした。
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レオピン
職業 調教師
LV 13
HP 2010
MP 2010
ステータス
生命 201
持久 201
強靱 201
精神 201
抵抗 201
俊敏 201
集中 201
筋力 201
魔力 201
法力 201
知力 201
教養 201
五感 201
六感 201
魅力 101 ⇒ 1
幸運 2
器用 300 ⇒ 400
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まだ木陰で震えているモナカのところに行く。
モナカは俺が近づいてきたのに気付くと、「ひゃうっ!?」とシャックリみたいな悲鳴で振り返った。
その顔は燃えるような赤さだったが、俺がいつもの俺に戻っていたので、目をパチクリさせている。
「あ……あれ……?」と取りだした白いハンカチで、目をこしこししていた。
「す、すみません……。
レオくんが、別人のようにカッコよくなられていたので、ビックリしてしまったのですが……。
どうやら、わたしの見間違いだったようです……」
言葉の途中でハッとなったモナカは、わたわた手を振って言い直す。
「あっ、それじゃまるで普段のレオくんがカッコ悪いみたいに聞こえてしまいますね!
すっ、すみません! レオくんはいつでもカッコよくて、とっても素敵ですっ!」
「でも、見間違えた俺のほうが良かったんじゃないのか?」
するとモナカは考えるまでもない、といった様子で首をふるふる左右に振った。
「いいえ。わたしはどんなレオくんでも、大す……。あっ、いっ、いいえ! なんでもありません!」
ずっと手をパタパタさせていたモナカだったが、その動きがピタリと止まる。
真っ赤だったはずの顔が、急転直下のように真っ青になる。
「れ……レオくん……う、うしろ……に……」
そのリアクションだけで、俺はなんとなくわかった。
「ああ、コイツは俺が調教した『マーク』だ。マーク、モナカに挨拶して」
やはり背後にはマークがいて、「くぉん」と頭を下げていた。
モナカは青みの残る顔のまま、慌てて頭を下げ返す。
「ご、ご丁寧に、ありがとうございます! わ、わたしはモナカと申します……!
って……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
モナカは目をグルグル回して絶叫していた。
いろんなことが起こりすぎて、もう理解が追いついていないらしい。
卒倒しそうになっていたので支えてやると、俺にしゅばっ! としがみついてきた。
「ほっ、ほほっ、本当に、あのクマさんを調教なさったんですか!?
わたし、見世物小屋の調教師さんから伺ったことがあります!
野生のクマさんを調教するのは、プロの方でもたいへん困難だそうです!
ですのでプロの方でも、繁殖させたクマさんを調教されるとおっしゃっておりました!」
「そうか、じゃあ俺は運が良かったのかもな。せっかくだから、乗せてもらえよ」
「よ……よろしいのですか?
って……ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
俺たちのやりとりが終わる前に、俺とモナカはマークの手によって抱え上げられていた。
まるで子猫でも扱うかのように、軽々と両肩に俺たちを乗せる。
モナカはマークの顔にひしっと抱きついて、こわごわと下を見ていた。
「すっ、すごいです……! クマさんの、肩に乗せていただけるだなんて……!」
「なかなかいい眺めだろ?」
「はっ、はひ! 実を申しますと、わたし、クマさんと遊ぶのが子供の頃の夢だったのです……!」
「そうか、じゃあいっぱい遊ぶといい。よぉしマーク、『ベッド』だ!」
マークは俺たちを放り投げ、ゴローンと横になる。
俺たちは「おおっ!?」「きゃあっ!?」と宙を舞ったあと、マークの腹の上に落ちる。
マークの腹の上は波打つほどに柔らかく、トランポリンみたいだった。
それまでモナカはおっかなびっくりだったが、子供のように目を輝かせていた。
「ふわあっ、とってもフカフカです! わたし、クマさんの上に横になるのが夢だったんです!
あっ、で、でも、お外で横になるだなんて、はしたないことは……」
「なに言ってんだ。ここには俺とお前、そしてマークしかいないんだぞ。
こういう時くらい、ハメを外して楽しもうぜ! それっ!」
俺が勢いをつけて弾むと、モナカが「ぴゃっ!?」とひっくり返る。
笑いあう俺たちに、マークも「くぉん!」と嬉しそうに鳴く。
胸の傷からは、とうてい信じられないくらいのやさしい顔で。
それから俺たちは時間を忘れ、子供の頃に戻ったように遊びまくった。
マークの胸の上で沈む夕日を見送りながら、モナカが言う。
「マークさん、今日は本当にありがとうございました。
こんなに楽しかったのは、本当に久しぶりです」
「くおーん」とマークが鳴き返す。
頭上に湯気のようなハートマークを立ち上らせていて、どうやら大満足だったようだ。
「でもモナカ、大丈夫か? ローブがだいぶ汚れちまったうえに、毛だらけになってるぞ。
帰ったらどやされるんじゃないのか?」
「はい。でもこれはとっても嬉しいことです。
お姉ちゃんもおっしゃっておりました。
聖女のローブが真っ白なのは、いろんな方たちと触れ合って、たくさん汚すためにあるんだって。
それに……」
そこまで言ったモナカは、急にうつむいて口ごもる。
そして、思い切った様子の上目遣いで俺を見つめなおすと、
「だっ、大……ちゅきな方といっしょに汚すのは、しぇっ、聖女にとってのいちばんの幸せだ、そうです……!」
カミカミのその言葉は、ほとんど俺の頭の中に入ってこなかった。
なぜならば、にわかには信じがたいものを目撃してしまったから。
モナカの頭上から、タンポポの綿毛をフッと吹いたみたいに……。
数え切れないほどのハートが、ぽわぽわと浮かび上がっていたんだ……!
俺は思わずコートの袖で、目をゴシゴシやってしまった。
……いくら調教師だからって、人間の感情の変化まで見えるだなんて……。
そんなこと、ありえるはずがないよな……?
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