26 東の国の少女
26 東の国の少女
新しく増えた職業に、俺は待ってましたとばかりに叫んだ。
「よしっ、木工師だ!」
木を扱う職業はすでに、『木こり』と『大工』を持っている。
しかしこの2職は、木の小物などを作るには適さない。
作れなくもないが、やっぱり本職には劣るんだ。
「これで、家具を作ることができるぞ! なにもない我が家とはおさらばだ!」
俺はさっそく転職した。
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レオピン
職業 罠師 ⇒ 木工師
職業スキル
木の細工
木に細工を施す
木の工作
木を使った道具を作成する
木の装備
木の装備を作成する
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庭に積んであった『ギスの木材』を使って、さっそく工作を開始。
石のナイフを使って組み木を作り、木槌でトントンと組み合わせる。
「職業スキルがあると、やっぱり作業スピードが違うなぁ」
そして出来上がりまで段違いだった。
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ギスの食卓
個数1
品質レベル25(素材レベル12+器用ボーナス3+職業ボーナス10)
高品質なギスの木材で作られた、大きめの食卓。
各種ボーナスにより、耐久性に優れ、またサッと拭くだけで汚れが落ちる。
ギスの椅子
個数10
品質レベル25(素材レベル12+器用ボーナス3+職業ボーナス10)
高品質なギスの木材で作られた椅子。
各種ボーナスにより、耐久性に優れ、座る者を落ち着かせる効果がある。
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「あっという間にテーブルと椅子ができた。木工は楽しいなぁ」
家を建てるのも楽しいのだが、それより細かい作業の木工にも違った良さがある。
木を削りながらあふれる香りを嗅いでいると、無心になれて好きなんだ。
「よぉし、この調子で、いろいろ作るぞ!」
俺はそれから、さらにふたつの家具を作った。
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ギスの道具箱
個数1
品質レベル25(素材レベル12+器用ボーナス3+職業ボーナス10)
高品質なギスの木材で作られた棚。
各種ボーナスにより、耐久性に優れ、中にいれたものを長持ちさせる。
ギスのベッド
個数4
品質レベル25(素材レベル12+器用ボーナス3+職業ボーナス10)
高品質なギスの木材で作られたベッド。
各種ボーナスにより、耐久性に優れ、安眠効果がある。
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これで家の中はかなり賑やかになった。
そして家も喜んでいるかのように輝きだす。
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拠点
LV 2
規模 さびれた一軒家 ⇒ 普通の一軒家
人口 1
拠点スキル
活動支援
拠点内の活動において、ステータスにボーナスを得られる
NEW! 拠点拡張
拠点に隣接する地域を開拓・制圧した場合、拠点とすることができる
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「よし、拠点もレベルアップだ!」
実を言うと気になってたんだよな。
規模のところにある『さびれた一軒家』ってのが。
しかも新しい拠点スキルにより、拠点を拡張できるようになったらしい。
俺はますますやる気になったが、ここで思いだしたかのように腹が鳴った。
「そろそろ昼かな? ちょっと休憩がてら、メシでも探しに行くとするか」
家の門を出ると、木々のトンネルの向こうに、校舎の城と居住区が見えた。
居住区では、アリンコのように多くの生徒たちが集まっている。
なにをやってるのか少し気になったので、森を出て近づいてみると……。
ヴァイスが台の上にあがって、みなに演説していた。
「これからみんなには、『拠点委員長』である僕の指導のもと、拠点作りを行なってもらう!
ここが拠点に昇格すれば、『忌避』の魔法の効果が薄れても、なにも怖れることはなくなる!
みんな! 賢者の僕の言うとおりにするのだ!
そうすれば、夜までにはこの居住区は拠点となるだろう!」
「おーっ」と、やる気があるんだか無いんだかよくわからない声を返す生徒たち。
そういえば教頭先生が「今日は開拓の自由時間になった」と言っていたけど、こういうことだったのか。
まあヴァイスの言うとおり、居住区が拠点になればモンスターに襲われる確率も減るだろう。
俺は「がんばれよ」とだけつぶやいて、森に戻った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
いつものように、森のなかで木の実やキノコを集めていると、木漏れ日に照らされたひとりの少女と出会う。
少女は、木の枝に止まっている鳥に狙いを定め、弓を引き絞っていた。
その姿はまるで、1枚の絵のように美しい。
束ねた艶やかな黒髪、白い肌に生える黒目がちな瞳、控えめながらも通った鼻筋に、桜色の唇。
服装はひときわ風変わりだった。
聖女のローブに負けない白さの上着、しかしスカートは鮮やかな赤。
「もしかしてあれは、東の国の民族衣装といわれる『ハカマ』……?」
俺が声を出したので少女は気が散ってしまったのか、打ち放った矢は大きく標的からそれていった。
標的だった鳥は枝から離れ、少女の頭上をからかうように旋回している。
「……すべての矢を、打ち尽してしまいました……。これでは、みなさまに合わせる顔が……」
細い肩を落としている少女に、俺は声をかけた。
「邪魔して悪かったな」
すると少女は顔をあげ、自らを戒めるように首を左右に振った。
「いいえ、あなた様のせいではございません。わたくしが未熟だったのでございます」
「狩りをしてたのか?」
「はい。開拓をなさっているみなさまに、少しでも精をつけていただきたくて。
でも、いままで動かない的しか射ったことのないわたくしには、無理だったようです」
「お詫びってわけじゃないが、手伝わせてくれよ」
「ありがとうございます。でも、お気持ちだけ頂いておきます。もう矢も残っておりませんし……」
丁寧にお辞儀する彼女の前で、俺はさっそく枝を削る。
「あなたさまは、木工師さまなのですね」
「いや、無職だよ」
「そうなのですか? でしたら、ご存じないのも無理はございませんね。
矢は木だけではできないのでございます。矢羽根となるものがございませんと……」
木の枝を10本ほど成形し終えた俺は、空に向かって『ギスのシュリケン』を放つ。
頭上で「ピギャー!?」と悲鳴がしたかと思うと、ドロップアイテムが降ってきた。
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ミーンバードのもも肉
個数1
品質レベル3(素材レベル3)
こってりしてジューシィな味わいの鳥肉。
焼き物または揚げ物にすると、調理ボーナスが得られる。
ミーンバードの羽根
個数10
品質レベル3(素材レベル3)
色鮮やかな羽根。
矢羽根や羽根ペンなどに加工できる。
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「ん? なんか言ったか?」
とドロップアイテムをキャッチする俺に、少女は黒目をこれでもかとまん丸にしていた。
「わ、わたくしがいくらやっても落とせなかった鳥を、一発で……!?
しかも、手投げ武器で落としてしまうだなんて……!?」
次回、少女が思いも寄らぬ行動に…!?
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