23 悪だくみの裏側
23 悪だくみの裏側
時間は少し戻り、お昼休み。
レオピンが、美少女たちと和気あいあいのランチを楽しんでいた頃……。
イエスマン教頭は、校長室に呼び出されていた。
「教頭! なんたることであるか!
せっかくの、我が校の初めての生徒会長を選抜するイベントだったのだぞ!
虎の子の『飛竜の皮』まで出して、ドラマチックに演出しようと思っておったのに……!
それなのにやすやすと、『特別養成学級』のゴミに見つかるだなんて! ありえないのである!」
ネコドラン校長に怒鳴られ、困り果てた様子で指を突き合わせる教頭。
「そ、それが、おかしいんざます!
『飛竜の皮』はたしかに偽装魔法を施し、校旗のなかに紛れ込ませておいたざます!
魔法が効いているうちは、プロのトレジャーハンターでも見つけるのは難しいざます!」
校長は、目の前の書斎机にドンッ! と拳を振り下ろした。
「それが何よりもの、キミの失態の証拠なのである!
プロのトレジャーハンターにも難しいものが、無職のゴミに見つけられるわけがないのである!
キミの手違いで、皮に偽装魔法が掛かっていなかったのである!」
「そ、それでも、おかしいんざます!
『飛竜の皮』は、校舎の高い壁に掲げてあったざます!
ニンジャか盗賊が登って取るか、または魔術師などが魔術で引き寄せないと取れないようにしておいたざます!
なにもできない無職に取れるはずが……!」
「ふん、それも同じことなのである!
キミがしっかり取り付けておかなかったせいで、風かなにかで飛ばされたのである!」
「そ、そんな!? わたくしめはそんな、ミスだらけの人間じゃないざます! あのゴミとは違うざます!」
「なら、『飛竜の皮』を『ばっちいもの』呼ばわりしたミスはどう弁明するつもりなのであるか!?
あの皮は、支援者の中でも特に有力なお方がくださった逸品であるぞ!
それをキミが『ばっちいもの』呼ばわりしたせいで、カンカンに怒っておるのである!」
「そ、それは……! き、聞き間違いざます! わたくしめは『バッチリなもの』と言ったざます!」
「だったら、あのゴミから皮を差し出されたときに、受け取るべきだったのである!
そうすれば支援者も怒らせずに、丸く収まったのである!」
「わ……わたくしめが受け取ってしまったら、あのゴミを生徒会長だと認めたことになってしまうざます!
校長もわかっているはずざます! 『特別養成学級』のゴミが生徒会長になるなんて、ありえないことだと!」
「フン! 言い訳はもうたくさんなのである!
あのゴミの手に『飛竜の皮』がある以上、我輩たちの面目は丸つぶれなのである!
なんとかして取り返すのである! でないとキミは、教頭代理に降格なのである!」
「ううっ……!」とたじろぐイエスマン。
しかし彼は追いつめられるほど悪知恵の働くタチだったので、すぐに名案を閃いた。
「な、なら、こういうのはどうざましょう!?
あのゴミに、自分から『飛竜の皮』をズタボロにさせるざます!」
「貴重な皮を、ズタボロに……!? なんと、愚かなことを……!」
「それが狙いなんざます! そうすればあのゴミは価値のわからない者として、支援者の総スカンを受けるざます!」
「な……なるほど! それは妙案なのである!
あのゴミが支援者の反感を集めれば集めるほど、我輩たちは大手を振ってゴミをポイできるのである!
……しかし、どうやってやるのであるか?」
「そのへんは、このわたくしめにお任せざます!
あのバカを陥れることなど、このわたくしめには朝メシ前ざます……!」
校長と教頭は、顔を見合わせニタリと笑いあう。
「「今度こそ、あのゴミの吠え面を……! イッヒッヒッヒッ……!」」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
しかしこの悪だくみが大失敗に終わったのは、もはや言うまでもないだろう。
イエスマン教頭は、レオピンから『飛竜の皮』を取り戻すどころか、コートに仕立てあげられてしまった。
しかも魔法の道具を貸して、レオピンの作業をアシストしてしまうという、究極のオウンゴール。
革職人の教室を飛び出したイエスマンは、奇声とともに廊下を暴れまわっていた。
「きえっ! きえっ! きえぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!
またしてもあのゴミにっ! またしてもあのゴミにっ! いまいましい、いまいましいざますっ!」
廊下には、校長と教頭の胸像が交互に飾られている。
イエスマンは、校長の胸像だけを選んで倒しまくっていた。
そこに、ご本人登場。
廊下の向こうから、ネコドラン校長が走ってくるのを見て、イエスマンは慌てて取り繕う。
「こ、校長、大変ざます! レオピンはとんでもない不良生徒だったざます!
校長のおっしゃっていたとおり、本当に腐った卵だったざます!
見てほしいざます、あのゴミは廊下をこんなに破壊してしまったざます!」
イエスマンはナチュラルにレオピンに罪をなすりつける。
しかし校長は、自分の胸像が倒されているのを気にも止めなかった。
「そんなことより、大変なのである!
イエスマン教頭の所有しているゴッドアイテムのことで、支援者からの問い合わせがあったのである!」
「へ? ゴッドアイテム?」
「さっきの革職人の授業で、キミがレオピンくんに貸し与えていたものである!
まさかキミが、あんな超絶レアアイテムを持っていただなんて、しらなかったのである!」
「えっ、あ、あれは、実はその……」
口からでまかせだと言う間もなく、校長は教頭の胸ポケットから飛び出ていた針と鋏を、サッと取り上げていた。
そして特に珍しくもない針と鋏を、神からの授かり物のように拝んでいた。
「おお、さすがゴッドアイテムなのである!
一見して普通の針と鋏であるが、オーラが違うのである!」
「あ、あの校長、それは実は……」
「教頭! 『王立博物館』の100周年記念に、ぜひこれを展示させてほしいと問い合わせがあったのである!
わが校の教師がゴッドアイテムの所有者とわかれば、『教員ランク』アップ間違いなしなのである!」
「そ、それはマズいざます! その針と鋏は……!」
「教頭! まさかあのゴミに貸しておきながら、『王立博物館』には貸せないなどと言うつもりではないであろうな!?
そんなことを言ったら、『王立博物館』を侮辱することになるのである!」
……結局、本当のことを言い出せぬまま、ただの針と鋏はゴッドアイテムとして校長に持っていかれてしまった。
教頭のストレスはさらに加速する。
「ぐぎぎぎぎぎっ! これもなにもかも、あのゴミのせいざます!
こうなったらなんとしても、ヤツをケチョンケチョンにしないと気が済まないざます!」
「どうしたでありますか、教頭先生! だいぶ荒れておりますなぁ!」
廊下で暴れていた教頭に、体育教師のニックバッカが声をかけてきた。
その瞬間、教頭の頭に、邪悪な黒い電球がともる。
「イエス! ニックバッカ先生! このあとの体育の授業は、なにをするざますか?」
「はい、今日は初日なので、オリエンテーションもかねて、森のまわりをランニングでも……」
「ノーッ! それよりも実戦ざます! 今日の体育は、素手での殴り合いにするざます!
そこで、ぜひニックバッカ先生の熱血指導をお願いしたい、不良生徒がいるざます!
腐った性根を叩き直すために、ボッコボコのグッチャグチャにしてほしいざます!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
しかしこの悪だくみが大失敗に終わったのは、もはや言うまでもないだろう。
そしてついに、天罰が下る。
『王立博物館』に送られた針と鋏は、専門家の鑑定で、すぐにニセモノだとバレてしまった。
教頭は一躍、教育界で『ニセ教育者』として名を馳せてしまう。
しかも、ニックバッカがレオピンにノックアウトされてしまったことが、さらに災いする。
事態を重くみた『開拓教育委員会』は、即日、異例の声明を発表した。
「ニセモノの教育者だけでなく、生徒にあっさりやられる体育教師がいるだなんて!
『王立開拓学園』は生徒の質は高いようですが、教師の質は低いようですね!」
生徒たちがランクで評価されているように、教員たちも『開拓教育委員会』によってランク付けされている。
「これは、評価を見直す必要があると判断しました!
よって、『王立開拓学園』の校長、教頭、および体育教師のランクを、ワンランクダウンといたします!」
ネコドラン校長 SS- ⇒ S+
イエスマン教頭 A+ ⇒ A
ニックバッカ教諭 C+ ⇒ C
「えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
教育委員会の長からその旨を伝えられたネコドラン校長とイエスマン教頭、そしてニックバッカは、この世の終わりのような顔をしていた。
しかし、彼らはまだ知らない。
レオピンを目の敵にしている以上、この終わりは、ほんの始まりでしかないことを。
次回、レオピンの新たなる器用無双が始まります!
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