22 自宅レベルアップ
22 自宅レベルアップ
ニックバッカ先生は、ホコリまみれの身体をはたきながら、誇り高く笑った。
「にくくくくくくくくく! いまのを見たかね!?
いまのは『浮身』といって、打撃を受けた瞬間に身体を浮かせて、ダメージを最小限にする高等テクニックだ!
そうとも知らずに有名人くんは得意そうにして、実に滑稽だねぇ!」
周囲の生徒たちはホッとする。
「なんだ、そういうことだったのか……」
「おかしいと思ったんだよ、ワンパンKOだなんてありえないもんな」
「そうそう、1年20組のモンスーンくんならともかく! 無職のゴミ野郎にできるわけがないよ!」
そういえばモンスーンの姿が見えないな、というか1年20組のメンツは誰もこの体育に参加していないようだ。
そんなことはさておき、俺はニックバッカ先生に問う。
「でも、気絶してませんでしたか?」
すると先生の顔は、沸騰したヤカンのように赤くなった。
「そ、それは……! それは……! 『死んだふり』という超高等テクニックだ!
そんなことよりも、遊びは終わりだ! 次からは本気でいくぞ、有名人くん!」
「えっ、まだやるんですか?」
「ミート! 当然だ! やられっぱなしで……いや、手本をまだ見せていないだろう!
さっき1発殴らせたんだから、今度はこっちが1発殴らせろ!」
完全に子供のような言い分だった。
ニックバッカ先生は丸太のような腕を振り上げながら、俺の前にドスドスと歩いてくる。
「え、ちょ、先生?」
「問答無用っ! さあっ、ぶっとべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
俺は焦りながら、『器用な肉体』スキルを発動。
『筋力』にかけていたポイントを、大急ぎで『強靱』に振り分ける。
--------------------------------------------------
レオピン
職業 武道家
LV 8
HP 10
MP 10
ステータス
生命 1
持久 1
強靱 1 ⇒ 2501
精神 1
抵抗 1
俊敏 1
集中 1
筋力 2501 ⇒ 1
魔力 1
法力 1
知力 1
教養 1
五感 1
六感 1
魅力 1
幸運 2
器用 200
--------------------------------------------------
唸る豪腕が、俺の顔面に迫る。
インパクトの瞬間、観衆のところに戻っていたモナカが「キャッ!?」と両手で顔を押さえていた。
……ごちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!
石の壁を思い切り殴ったような音が校庭じゅうに響き渡る。
俺はブッ飛ぶどころか、その場から微動だにしていなかった。
「ぜんぜん痛くない……?」と思わず漏らす。
俺は辛うじて平静を保っていたが、内心は驚きに満ちていた。
ほんの一瞬だけだったが、俺の身体は岩のように硬化し、山のようにどっしりとした。
魔法も使っていないのに、なぜ?
『強靱』のステータスというのは、高ければ高いほど、物理的な攻撃に耐えられるようになる。
でもいくら上昇させたところで、身体が硬くなったり、重くなったりするわけじゃない。
涼しい顔の俺とは真逆に、ニックバッカ先生の顔と拳は、同時に赤く膨れ上がっていく。
そして、強烈なカウンターパンチを食らったように後ろにブッ倒れていた。
「うぎゃああああああっ!? 骨がっ!? 骨がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」
陸に打ち上げられたクジラのように、ドスンバタンと暴れるニックバッカ先生。
俺のまわりにいた男子生徒たちは、今度こそ恐れおののくように俺を見ていた。
「あ……ありえねぇ、ありえねぇよ……!
あのパンチをくらって平気などころか、なにもせずに返り討ちにするだなんて……!」
「い、いや、これもニックバッカ先生の高等テクニックじゃ……!?」
「そんなわけあるかよ! 見ろ! ゴミ野郎……いや、レオピンくんの顔を!
まるでそよ風を受けたみたいになんともねぇじゃねぇか!」
そんなことより、ニックバッカ先生のことを心配したほうがいいんじゃないか、と俺は思う。
そしたら、「ご、ご無事ですか!?」と声が。
女生徒たちの観衆から、またしてもモナカが飛び出してくる
いくらなんでも今度こそは、と思ったのだが、モナカはまた俺のほうにまっしぐら。
ハラペコの猫かと思うほどの全力疾走でやってきて、俺の身体をあちこち触って確かめていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ニックバッカ先生の骨折は、聖女の卵である女生徒たちには治せなかったので、タンカで保健室へと運ばれていった。
ちょうど体育の授業も終わり、放課後となる。
生徒たちはみな体操服を着替えるために校舎に戻っていった。
俺は制服のままだったので、そのままひとり学園の敷地から出る。
森の我が家への帰り道、『木こり』に転職。
体育の授業で偏らせていたステータスを、バランスよく配分しなおした。
--------------------------------------------------
レオピン
職業 武道家 ⇒ 木こり
LV 8
HP 10 ⇒ 1810
MP 10 ⇒ 1810
ステータス
生命 1 ⇒ 181
持久 1 ⇒ 181
強靱 1 ⇒ 181
精神 1 ⇒ 181
抵抗 1 ⇒ 181
俊敏 1 ⇒ 181
集中 1 ⇒ 181
筋力 1 ⇒ 181
魔力 1 ⇒ 181
法力 1 ⇒ 181
知力 1 ⇒ 181
教養 1 ⇒ 181
五感 1 ⇒ 181
六感 1 ⇒ 181
魅力 1
幸運 2
器用 2700 ⇒ 180
--------------------------------------------------
「さぁて、戻ってひと仕事といくか」
俺は森に戻ると、石斧を使って一心不乱に木を切り倒しまくる。
その最中、俺はずっとニックバッカ先生の言葉を思いだしていた。
『いま現在、この学園の周囲には保護魔法が掛けられている!
しかし明日からはじょじょにその効果が薄れていく!
この意味がわかるか!? 明日以降、お前たちの住んでいる居住区にモンスターが入り込んでくるということだ!』
この言葉が本当なのであれば、明日からはモンスターと遭遇する可能性が出てくるということである。
他の生徒たちがいる居住区は人が大勢いるので、モンスターも襲いにくい。
夜も交代で見張りをすれば、モンスターの奇襲を受けることもないだろう。
でもひとりぼっちの俺は違う。
しかも森の中に住んでいるので、モンスターからすればこれほど襲いやすい人間もいないだろう。
だから俺は、自己防衛をすることにしたんだ。
「木材はこんなもんでいいかな」
--------------------------------------------------
ギスの木材(大)
個数80
品質レベル12(素材レベル2+器用ボーナス1+職業ボーナス9)
柔らかく軽量で、加工が容易な木材。
各種ボーナスにより、建材にも利用可能。
--------------------------------------------------
それから『大工』に転職。
家を建てられるくらい集めた木材で、家のまわりに塀と門を作り上げた。
--------------------------------------------------
ギスの塀
個数1
品質レベル22(素材レベル12+器用ボーナス1+職業ボーナス9)
高品質なギスの木材で作られた木塀。
各種ボーナスにより石塀よりも堅牢で、地震・火事・腐食への耐性がある。
ギスの門
個数1
品質レベル22(素材レベル12+器用ボーナス1+職業ボーナス9)
高品質なギスの木材で作られた木門。
各種ボーナスにより石門よりも堅牢で、地震・火事・腐食への耐性がある。
--------------------------------------------------
家をぐるりと取り囲んでそびえる壁は、なかなかに頼もしい見た目だった。
そして、思わぬことが起こる。
家、門、塀……その3つが揃った時点で、まるでひとつになったかのように輝きはじめたんだ。
まさか、レベルアップ……!? と思っていると、目の前にウインドウが出現した。
『自宅が拠点に進化しました!』
今日も3話更新できました、ありがとうございます!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への評価お願いいたします!
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つでも大変ありがたいです!
ブックマークもいただけると、さらなる執筆の励みとなりますので、どうかよろしくお願いいたします!














