19 ハイクオリティ連発
19 ハイクオリティ連発
俺が作っていたものが糸だとわかった途端、窓際の生徒たちは大騒ぎ。
「す、すごいです、レオくん! 糸を作ってしまうだなんて!」
「マジかよ、糸って作れるのかよ!?」
「私、裁縫を趣味にしてるけど、糸がそんなふうにして出来るだなんて、知らなかった……!」
いちばんビックリしていたのは、教師陣のふたり。
「う、うそぉ……まさか革細工の授業で、糸から作っちゃうだなんてぇ……!?
レオピンくん……なんて生徒さんなのぉ……!?」
「の……ノーッ! そ、そんな糸、使い物にならないに決まってるざます!」
「それはどうかな」と、俺は窓をのぼって教室へと戻る。
窓際で見物していた生徒たちは、海が割れるように俺に道を明けわたす。
俺は自分の席に戻ると、できたての『ダイジャヅルの糸』を魔法の鉄針に通した。
糸を通した針と『飛竜の皮』を手にして、首をコキッとひと鳴らし。
「それじゃ、いきますか。……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!」
……ドババババババババババーーーーーーーーーーーーッ!
俺は『革職人』のスキル『革の装備』を発動。
猛然とした勢いで、『飛竜の皮』を縫い上げる。
女子生徒のひとりが「す、すごい……! まるで、魔導裁縫機みたい……!」と唖然として言った。
まわりが呆気に取られている間に、俺の手元の中では、1枚の皮だったものが『革』へと変わっていく。
それにいち早く気付いたのは、やはりフィラフィー先生だった。
「え、襟!? それに、袖!? ああっ、ポケットまで!?
まさかレオピン君は、革の服を作ろうとしているのぉ!?
革の服って、授業ではもっともっと先にやる、とっても難しい装備なのに……!?」
「で……できたっ……! 『革のコート』だ……!」
俺は額の汗も拭わずに、漆黒のコートを天に掲げる。
それは光を吸収するほどの黒さだったのに、ぼんやりと光り出した。
「ああっ、あの輝き……!? ま、まさかあのコート、『ハイクオリティ』……!?」
眼鏡ごしの瞳をまん丸にするフィラフィー先生。
驚愕が教室を駆け巡った。
「えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
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飛竜のコート(ハイクオリティ・マジックアイテム)
個数1
品質レベル96(素材レベル67+器用ボーナス12+職業ボーナス7+クオリティボーナス10)
飛竜の皮とダイジャヅルの糸から作ったコート。
通常のコートよりも高い防御力を誇り、耐熱、耐冷効果がある。
特殊効果
容量拡張
ポケットの中身が、飛竜の魔力により10倍に拡張される
重量無視
ポケットの中身に入れたものは、飛竜の魔力により重量が無くなる
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『ハイクオリティ』。
生産職の生産品において、ごく希に発生する効果のことである。
戦闘職に例えるなら『クリティカルヒット』に近い。
自分の持てる力をすべて注ぎ込んだ結果、真芯を捉えたということだ。
『ハイクオリティ』となった生産品にはボーナスがつき、また素材に秘められていた魔力を引き出すことができる。
俺は一張羅の制服だったので、衣服が欲しくて『飛竜の皮』をコートに仕立てたのだが……。
「ま……まさか、『マジックアイテム』を作っちゃう生徒さんが、こんなに早く現れるだなんて……!」
フィラフィー先生は、瞳孔の開ききった瞳で、ヨロヨロと俺の元へと歩いてくる。
『飛竜のコート』に手を伸ばしてきたので渡してやると、愛でるように撫でていた。
「ううっ、この型取り、この縫製、この仕上げ……! 一糸乱れぬ縫い跡……!
ほ、本当に『ハイクオリティ』ですぅ……!」
パッと顔をあげたフィラフィー先生は、いまにも泣きそうだった。
「『ハイクオリティ』は、先生であるこの私も、一度も作ったことがありませぇん……。
プロの革職人さんでも、10年にいちどあるかないかと言われているものですぅ……。
そんな大変なものを、こんなにあっさり作っちゃうだなんてぇ……。
レオピンくんは、10年にひとりの天才ですぅ……!」
「はい、レオくんは天才です! 間違いありません!」と大喜びで手をぱちぱち叩くモナカ。
フィラフィー先生が認めたことにより、生徒たちの俺を見る目は一変。
誰もが俺を、羨望のまなざしで見つめていたのだが……。
「ノーッ! それは大きな間違いざます!
レオピンくんのコートが『ハイクオリティ』になったのは、わたくしめの針とハサミのおかげざます!」
見ると、教頭がこれみよがしに、俺に貸していた魔法の道具を胸ポケットにしまっていた。
「これは我が一族に伝わる、『ソイグの神針』と『キルシャの剣鋏』ざます!
これを使えば、どんなバカでもハイクオリティな品を作ることができるざます!」
フィラフィー先生がギョッとなる。
「ええっ!? あの伝説のゴッドアイテムの!?
で、でもそのふたつはゴッドアイテムじゃなくて、たしか学校の備品だったはず……」
「ノーッ! これはわたくしめの私物ざます! さぁ、わたくしめは忙しいざますから、これにて失礼するざます!」
教頭は話を強引に打ち切って、そそくさと教室を後にする。
廊下に出た途端、「きえーっ!」と例の絶叫が轟く。
俺のまわりに集まっていた生徒たちは、すっかり肩透かしをくらった様子だった。
「なんだ、そういうことだったのかよ」
「ゴッドアイテムを使えば、そりゃ誰だって高品質なものが作れるわよねぇ」
「あーあ、こんなヤツをちょっとでも尊敬しかけた俺がバカだったぜ」
しらけた様子で自分の席に戻っていく生徒たち。
俺の立場はすっかり元の『無職のゴミ野郎』に戻っていたが、俺は気にしない。
「わたしは信じています! ハイクオリティになったのは、レオくんがすごいからだって!」
だってモナカだけは、俺のことを変わらずに慕ってくれていたから。
「あの、わたしもレオくんみたいなすごい職人さんになりたいです!
どうか、針の使い方を教えていただけませんか?」
俺は『革職人』で、彼女は『裁縫師』。
ジャンルは違えど、針さばきくらいなら教えられる。
「よし、じゃあ一緒にやってみようか」
「はいっ!」
俺はモナカと肩を寄せ合うようにして座ると、モナカのワッペン作成にアドバイスした。
「急がなくていいから、針はゆっくり、しっかりと狙いを定めて通すんだ」
「はい、レオくん先生」
モナカは素直に返事をし、かわいい寄り目でワッペンの生地をチクチクとやりはじめる。
「物作りのコツは、しっかりと気持ちを込めること。
誰かにプレゼントするものであれば、その人の笑顔を想像するんだ。
そうすれば、おのずと丁寧になる」
「……その人の、笑顔を……」
モナカは手を止めると、祈りを捧げるように瞼を閉じる。
きっと、好きなヤツのことでも思い浮かべてるんだろう。
「おっと、外周のところは『サテン』と『ロングアンドショート』を組み合わせた針目にしたほうがいいぞ、そのほうが仕上がりの見た目がよくなる」
気付くと、俺たちの机のへりから、フィラフィー先生がひょっこりと覗いていた。
先生は頷きながら、ひたすらメモを取っている。
「……ふむふむ、その人の笑顔を想像し、気持ちを込める……。
外周は『サテン』と『ロングアンドショート』を組み合わせる、と……」
「で……できましたっ! レオくん先生っ! フィラフィー先生っ!」
そう言うモナカの手元は、見覚えのある光に包まれていた。
その光を間近で浴びたフィラフィー先生は、驚きのあまり、後ろでんぐり返しの勢いでひっくり返る。
「まっ、また、『ハイクオリティ』……!?」
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モナカのワッペン(ハイクオリティ)
個数1
品質レベル13(素材レベル3+クオリティボーナス10)
ハートの形をしたワッペン。
作り手の大きな愛情が込められている。
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最近このお話に対するモチベーションがあがりまくりで、今日も3話更新させていただきました!
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