14 いきなりトレジャーハント
14 いきなりトレジャーハント
俺はレベル6になり、転職可能な職業が増えた。
「トレジャーハンターか、これからの探索に役に立ちそうだな」
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レオピン
職業 鑑定士 ⇒ トレジャーハンター
職業スキル
財宝発見術
隠されたお宝を見つけ出す
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ためしに転職してみたところで、大きなアクビが出た。
「ふぁ~あ。いま何時かわからんけど、そろそろ寝るか。明日も早起きしなくちゃいけないからな」
ギスの木の床にゴロンと横になる。
朝になれば窓から朝日が差し込むから、それが目覚ましがわりになるだろう。
「今日は本当にいろんなことがあったなぁ。明日は始業だから、もっといろいろなことがありそうだけど……。
『器用貧乏』のスキルさえあれば、なんとかなるだろ……」
そうつぶやきながら目を閉じるだけで、あっという間に眠りに落ちてしまった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺はふと目覚める。
どのくらい眠ったかはわからないが、深い眠りに落ちていたようだ。
窓の外はまだ暗い。
むしろ月明かりすら差さなくなり、真っ暗といってよかった。
「なんだ、まだ夜か。なら、もうひと眠りするかな」
そう思って俺はまた瞼を閉じる。
そして、しばらくしてから再び目覚めたのだが、あたりは夜のままだった。
寝過ぎたのか、頭がボーッとしている。
いくらなんでもおかしいと思った。
「おかしいな、もうとっくに朝になっててもいい頃だぞ?」
もう暗闇にも目が慣れていたので、這い起きて窓のほうに向かう。
窓の向こうは星どころか、景色すら見えない暗黒だった。
「どうなってんだ、これ……?」
と外に向かって手を伸ばしてみたら、手のひらがザラザラしたものに当たる。
力を込めて押してみたら、手はバリッ! と突き抜け、鮮やかな光が差し込んできた。
俺は、手に残った紙片に唖然となる。
「なんだこりゃ!? 黒く塗った羊皮紙が窓に貼ってある!?
どうりで、陽が差さなかったわけだ! 誰だよ、こんなことしたのは!?」
しかし犯人探しをしている余裕はなかった。
太陽は天高く昇っていて、ひと目で寝坊だとわかる。
「ちっ……ちこくだぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっ!」
俺は朝メシも食べずに家を飛び出し、全力疾走で森を抜ける。
居住区にはもう誰ひとりとして残っておらず、みんな登校した後だった。
俺は掘っ立て小屋をかいくぐり、校舎である城を目指す。
正門を抜けて正面玄関に入ろうとしたところで、視界の隅でなにかを捉えた。
ふと立ち止まって、目の前にそびえる城を見上げる。
城の壁には『王立開拓学園』の旗がいくつも立てられていて、風を受けてはためいていた。
それは、何の変哲もない光景のはずなのだが……。
なぜだろうか、気になって仕方がない。
こんな所でノンビリしているヒマはないのだが、どうしてもモヤモヤするので、旗をひとつひとつ凝視した。
すると、真ん中のあたりにあった旗の色が変わる。
『王立開拓学園』の校旗は青なのだが、ひとつだけ海賊旗のような黒いものが混ざっていた。
俺はハッとなる。
「これは、もしかして……トレジャーハンターの、『財宝発見術』のスキルが発動してるのか……!?」
『財宝発見術』は、近くにある隠されたお宝を見破ることができるスキル。
その発見力は、レベルとステータスに依存するのだが、どんなに優れたトレジャーハンターでも、発見できる範囲は5メートル程度だという。
「でも、あの旗までは50メートルは離れてるぞ……!?
あんな遠くのものを、発見できるものなのか……!?」
俺は半信半疑だったが、あの旗の正体を確かめずにはいられなくなってしまった。
遅刻が大遅刻になるのを覚悟で、ニンジャに転職。
城の壁のわずかな手掛かりを頼りに、するすると登った。
旗のところまで登りつくと、旗の支柱をつかみ、わずかな出っ張りに足を置いて伸び上がる。
問題の旗を手に取ってみると、肌触りからして異質だった。
俺はそのままの体勢で鑑定士に転職し、『鑑定』スキルを発動してみた。
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飛竜の革
個数1
品質レベル50(素材レベル50)
幻の飛竜、『ブラック・ストーム』の背中の皮をなめしたもの。
大きな一枚皮で傷ひとつないため、かなりの価値がある。
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俺は心臓が口から飛び出しそうになった。
「うおっ!? なんでこんな凄いものが、こんな所に!?」
竜の皮といえば、モンスター素材のなかでもトップクラスのレアアイテムである。
そもそもドラゴンというのは倒すこと自体が大変なうえに、皮を剥ぎ取るのも苦労するらしい。
「これ、なにかの間違いだよな……?」
俺はとりあえず、『飛竜の革』を支柱から取り外し、肩にかける。
ニンジャに転職したあと、支柱から手を離して飛び降り、猫のように回転して着地を決めた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
その頃、『王立開拓学園』の生徒たちは、イエスマン教頭の引率で、校舎の中庭にいた。
「イエス! それでは午前中の授業である、校内オリエンテーションはこれにて終了ざます!
そして今日は始業初日ざますから、特別に支援者の方々からお弁当の差し入れがあるざます!
この中庭でランチとしゃれこんで、午後からの授業開始の鋭気を養うざんす!」
弁当の差し入れと聞いて、沸き立つ生徒たち。
イエスマン教頭は生徒たちに弁当を配りながら、わざとらしい声で言う。
「あーあ、せっかくこのお弁当だけは、『特別養成学級』の分もあったざます!
それなのにレオピンくんは遅刻するだなんて! あーあ、もったいないざますねぇ!
せっかくだから、このわたくしめが、ゴチになるざます!」
イエスマンは内心でほくそ笑んでいた。
――『お寝坊大作戦』、大成功ざます……!
昨晩、レオピンのヤツが寝静まったところで、黒い羊皮紙を窓に貼っておいたざます……!
きっとヤツは大幅に寝過ごして、いまごろになって青くなって登校しているはずざます……!
大遅刻している姿を支援者の方々に見せつけて、大恥をかかせてやるざます……!
「いただきま~すざます! あっ、そうだ! みなさんに大切なことをお知らせするのを忘れていたざます!」
中庭で、思い思いの場所で弁当を広げる生徒たちに向かって、イエスマンは喧伝する。
「この学園の生徒会長を決定しなくてはならないざます!
その方法は、選挙や決闘ではなく……『レアアイテム探し』ざます!
校舎のどこかに、支援者の方から提供いただいた、『飛竜の革』を隠したざます!」
『飛竜の革』と聞いて、色めきたつ生徒たち。
「それを手にいれて、わたくしめの所にもってきた生徒を、生徒会長とするざます!
しかも、その『飛竜の革』は、そのままプレゼントするざます!
開拓系の学園の生徒会長はみな、竜の革の装備を持っているざます!
手にいれた革を好きなようにクラフトして、生徒会長の証とするざます!」
生徒たちは大盛り上がり。
なかには、弁当そっちのけで探しに行こうとするクラスもいた。
「ふふふ……! 急いだところで、今は絶対に見つからないざます!
なぜならば、『飛竜の革』はとんでもないところに、しかも魔法で偽装を施して隠してあるざます!
偽装魔法は1週間ほどしたところで、効果が少しずつ薄れていくざます!
だからそれより早く見つけるのは、不可能といっていいざます!
もし1週間以内に見つけることができたら、生徒会長どころか、この教頭の座をあげても……」
「す、すいませんっ! 遅れましたぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!」
と中庭にすべりこんでくるレオピン。
その肩に無造作に掛けてあるものを目にしたイエスマンは、
「きっ……きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
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