38 学園裁判開廷
新年あけましておめでとうございます! 今年も『器用貧乏』をよろしくお願いいたします!
そして新年早々、嬉しいお知らせです!
『器用貧乏』の第1巻がついに1月8日(土)に、マッグーガーデン・ノベルズ様より発売となります!
イラストレーターは、なかむら様です!
書籍版には加筆修正が施されており、書き下ろしのエピソードもあります!
いままで本編中で触れられていたものの、描写されることのなかった『保健室』が初登場!
ざまぁとして多くの者たちを送っていた、謎のヴェールに包まれた施設がいよいよ明らかに……!
ついにレオピンも保健室送りとなってしまうのか、それともざまぁでおなじみの、あの先生か……!?
もちろん、レオピンとヒロインたちのラブラブっぷりも増量しております!
さらに書泉様・芳林堂書様店におきまして、購入特典としてSSペーパーが配布されます!
その名も『モナカといちゃラブ 愛のセーター』です!
レオピンのためにセーターを編もうとするモナカ!
本編ではなかなか見ることのできない、いちゃいちゃするレオピンとモナカをお楽しみください!
そして今回はサイン本もあります!
書泉ブックタワー様
書泉グランデ様
丸善 ラゾーナ川崎店様
有隣堂 横浜駅西口コミック王国様
星野書店 近鉄パッセ店様
以上のお店におきまして、私のサイン入りの『器用貧乏』がお求めいただけます!
購入特典、およびサイン本には開催期間、および数量には限りがありますのでご了承ください。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、営業状況や時間が変更になっている店舗様もございますので、ご確認のうえお求めください!
書籍版はなかむら様の素晴らしい挿絵に加え、ステータスも見やすくなっており、さらにパワーアップしております!
1月8日はぜひ書店にて、お手に取っていただけると嬉しいです!
38 学園裁判開廷
「僕は……このまま……死ぬ……のか……」
ふと、光のようにまぶしい羽衣をまとった女性が前に出る。
これから地獄に堕ち行く亡者を見送る、女神のような穏やかな微笑み言う。
「命乞いをしたら、助けてあげてもよいですよ☆」
「たっ……たすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」
脊髄反射のようは速さでヴァイスは泣き叫ぶ。
すると、その身体はゆっくりと落下をはじめた。
ヴァイスを落下死から救ったのは、女神の生まれ変わりのように美しい女性だった。
彼女がが手をかざすと、ヴァイスの身体は羽毛のようなオーラに包まれ、ふわふわと宙に浮かびはじめる。
「ふぎゃああっ!? ……た、助かった……! あ、あなたは大聖女の、ラヴリン……!」
ヴァイスは救いの神を見るような目で、ラヴリンを見ていた。
ラヴリンも慈愛に満ちた目で、ヴァイスを見返している。
助けた者と助けられた者、ふたりの間に、やさしい時間が流れる。
しかしラヴリンは、ヴァイスが命乞いをやめたとわかるや、かざしていた手をグーにした。
「あら? 命乞いが止まっていますね、えいっ☆」
瞬間、ヴァイスを包んでいた羽毛は消え、ヴァイスはふたたび真っ逆さまに。
「ぎゃあああっ!? たたっ、助けてくれっ! 助けてくれぇぇぇぇーーーーーっ!?」
ラヴリンは己の力を使い、ヴァイスの身体を宙に浮かせたり落としたりして弄んだ。
まるで煮出しされるパックの紅茶のように、浮いたり沈んだりするヴァイス。
紅茶の味を楽しむかのように、満足げな笑みを浮かべるラヴリン。
その情けない様は居住区からもよく見えたので、気がつくと中庭はヤジ馬の生徒たちでいっぱいになっていた。
「おい、見ろよ! ヴァイスのヤツが、空を飛んでるぞ!?」
「いや、違う! 飛ばされているんだ! 校舎の上のほうに、人がいるぞ!」
「あ、あの方たちは、もしかしてっ……!?」
人が集まってきたことろで、ラヴリンはヴァイスの身体を、ヤジ馬の真上に固定する。
カケルクン校長から差し出された魔導拡声装置を受け取り、装置に向かって話し始めた。
校舎には全校放送用の魔導音響装置があり、声は居住区一帯に響き渡る。
降り注ぐ声は、天上の音楽のようにやさしかった。
『みなさん、はじめまして、ラヴたちの自己紹介は不要ですよね☆。はい、1年11組ですよ☆』
中庭から「おおっ……!」と漏れる驚嘆。
女神の声が広まった途端、居住区に残っていた者たちも、慌てて校舎に向かって駆けつけてくる。
『本当はラヴたちは、この学園に来る予定はありませんでした。
ですがみなさんの開拓生活を拝見したところ、まるで使用済みのオムツのような有様でしたので、こうして来ることになってしまったんですよ。
こんなおトイレのような所に、ね☆』
ラヴリンはモナカやコトネに匹敵するほどの、清純系の美少女。
慈母のような笑みから紡ぎ出される声は清音そのものだったが、単語のチョイスはストロングだった。
『さてさて、ここをばっちい所にしてしまった元凶のひとつは、申し上げるまでもないですよね☆
いまこちらで、おまるの中身のように浮かんでいる、ニセ賢者さんですね☆』
「ぼ、僕は、ニセモノなんかじゃ……! ぎゃあっ!?」
ヴァイスは抗議しようとしたが、ガクンと落下させられ黙らされていた。
『というわけで、今からラヴは、「学園裁判」の開廷を宣言しますね☆』
突然の開廷宣言に、中庭から「おおーーーーっ!?」と熱気が噴き上がる。
かつてレオピンが入学式のとき、追放されるキッカケとなった『学級裁判』。
『学級裁判』はクラス単位のものだが、『学園裁判』は全校生徒を巻き込んだものである。
ルールは『学級裁判』とまったく同じ。
全校生徒の生徒の過半数の支持が得られれば、被告となった生徒に裁きが下されるというのもの。
ラヴリンは裁判とは無縁の、おっとり笑顔で続ける。
中庭の生徒たちは興奮のあまり、口を閉じるのも忘れてあんぐりと彼女を見上げていた。
『それじゃあ、お尻の穴みたいなお顔をされているみなさんから、決を採りましょうね☆
ヴァイスくんを追放したほうがいいと思うお尻の穴さんは、手を挙げてくださいね☆』
……バッ!
すると迷う様子もなく、生徒たちは一斉に手を掲げた。
彼らの真上にいたヴァイスは声をかぎりにする。
「ふ……ふざけるなっ!? 賢者のこの僕を、追放だと!?」
「そうだ! お前は入学してから、いばりくさるばかりだったじゃないか!」
「そうそう! 賢者らしいことはなにひとつしてなかったでしょ!?」
「お前の言うとおりに居住区に壁を作ったら、崩れて大変なことになっただろうが!」
「賢者じゃなかったら、とっくの昔にブッ殺してたところだ!」
「そうよ! あんたなんか死んじゃえばいいんだわ!」
『あらあら』と困り笑顔を浮かべるラヴリン。
『そんな乱暴で、怖い言葉を使ってはいけませんよ。
でもまさか、お尻穴さん全員から見放されるだなんて……こちらの賢者さんは、正真正銘のおまるさんだったんですね☆』
コロコロと笑いながら、かざしていた手をあげるラヴリン。
その動きに連動するように、ヴァイスの身体がひときわ高く浮き上がる。
「な、なにをするんだ!?」
『なにをするって、決まっているではありませんか。あなたがおまるさんだと証明されてしまった以上、ラヴがこうして助ける意味もありませんよね?
ゆっくり下に降ろすのも面倒ですから、こうして、一気に……!』
ラヴリンは高く掲げた手を拳につくりかえ、親指を下にして、クンッ! と振り下ろす。
次の瞬間、ヴァイスの身体は見えない吊り糸を切られた人形のように、急転直下した。
「たっ……たすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
大の字になったヴァイスの身体が、中庭のレンガ道めがけてまっすぐに落ちていく。
しかしあと数メートルとなったところで、
……ガクンっ!
と落下は止まった。
ヴァイスは涙を迸らせながら、殺虫剤をかけられた虫のように、空中でジタバタともがく。
「たっ……たすけてっ! 助けてくださいっ! ぼ、僕はまだ、死にたくない! 死にたくないんですぅぅ!!
お、お願いだから、助けてくださぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!
ラヴリンしゃまっ! ラブリンしゃまぁぁぁぁぁーーーーっ!!」
賢者としてプライドを全て捨て去ったような、全身全霊の命乞い。
それを、砂かぶり席のような間近で見ていた生徒たちは、すっかりヴァイスに呆れはてていた。
「俺たちは、こんなどうしようもない野郎を、ほんの一時とはいえ、尊敬してたのか……」
不意に、彼らの顔にぽたりと雫が落ちた。
「うわっ!? くっせぇ!? ヴァイスの野郎、漏らしやがった!」
「きゃああっ!? 最低! いやぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」
まるで爆弾が落ちたかのように、ヴァイスのまわりから人がいなくなっていく。
そのタイミングで、ラヴリンはヴァイスの身体をべしゃりと地面に落とした。
途端、逃げ去ろうとした生徒たちが戻ってくる。
「おいみんな、やっちまえっ!」
「俺たちの顔にションベンひっかけやがって! どこまで迷惑かければ気が済むんだよっ!」
「死ねっ! 死ねっ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!」
暴徒と化した生徒たちに囲まれ、よってたかって暴行を加えられるヴァイス。
その様はまるで、ピラニアの池に落ちた子鹿のようであった。
ヴァイス、ついに死す……!?
そして新連載のほうも、連日更新中です!
このお話がお好きな方であれば、ぜったいに楽しんでいただけると思います!
このあとがきの下に、お話へのリンクがありますので、ぜひ読んでみてください!














