36 村づくりのはじまり
36 村づくりのはじまり
「さーて、それじゃまずは家を10軒ほど建ててみるか」
と、神羅大工に転職しようと思ったが、その前にふと、昨日のレベルアップを思い出す。
「そういえば、新しい職業が増えたんだよな……」
俺は『器用貧乏』の『器用な転職』スキルを発動。
新しい職業へと転職した。
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職業 木こり ⇒ 魔贋作師
職業スキル
道具複製(アクティブ)
道具を複製する
武器複製(アクティブ)
武器を複製する
建物複製(アクティブ)
建築物を複製する
インスタント(パッシブ・スペシャル)
複製に必要な素材を大幅に減少させる
プロキシ(パッシブ・スペシャル)
複製に必要な素材に代替品を使える
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『贋作師』というのは生産職の一種だが、彼らが作るのは普通のものではない。
その名のとおり贋作、ようはニセモノを作る職業だ。
名もなきモノのニセモノを作ってもしょうがないので、彼らは美術品や名剣などの価値のあるものを作る。
それをニセモノと白状して売買する者もいれば、中にはホンモノと偽って売りつけるようなヤツもいる。
そのため世間的には、盗賊や山賊に近い、必要悪のような扱いを受けている。
ニセモノを偽って売るのは良くないが、ニセモノを作ること自体は、俺は悪くない事だと思っている。
俺のクラフトも、先人たちが作ったものに憧れ、マネしているうちに上達していったからな。
そして魔贋作師というのは、贋作師の魔法使い版とでもいう職業だ。
彼らは手先の器用さでニセモノを作るのではなく、魔力を使ってニセモノを作り上げる。
俺は器用さでモノ作りのをする人間だったので、魔力でのモノ作りに興味があったんだ。
「家のニセモノを作ってみたらどうなるんだろう」
興味本位で、さっそくやってみることにした。
「たしか魔贋作師」って、『魔力』と『知力』と『教養』が重要なパラメーターなんだよな」
俺は『器用貧乏』の『器用な肉体』スキルを発動。
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レオピン
肩書 村長
職業 魔贋作師
LV 23
HP 2510
MP 2510 ⇒ 10010
ステータス
生命 251
持久 251
強靱 251 ⇒ 1
精神 251 ⇒ 1
抵抗 251 ⇒ 1
俊敏 251 ⇒ 1
集中 251
筋力 251 ⇒ 1
魔力 251 ⇒ 1001
法力 251 ⇒ 1
知力 251 ⇒ 1001
教養 251 ⇒ 1001
五感 251
六感 251 ⇒ 1
魅力 1
幸運 5
器用 700 ⇒ 200
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「とりあえず、1000ずつあればじゅうぶんだろう。あとは、こうして……」
俺は、樹皮もまだ剥いていない、切り倒したばかりのギスの丸太に向かって手をかざす。
そして頭に浮かんだフレーズを、そのまま口から紡ぎ出した。
「我が脳よ、灰となりて、手妻より出でよ……! 万象に潜む影となり、万物となりかわれ……!」
……シュォォォォォォッ……!
かざした手のひらから灰燼のようなオーラが現われ、風に吹かれた粉雪のように舞い散る。
そのとき俺の傍らにいた秘書コンビは「きれい……」と見とれていた。
しかしその灰が、ギスの丸太にまとわりついた瞬間、
……ゴォォォォォォォォッ!!
丸太は宙に飛び上がり、うなりをあげながら回転。
まるで世界を早回ししているかのような速さで樹皮が向け、角材として加工されていく。
「ええええっ!?」と目を剥くモナカとコトネ。
それは、やった俺自身もビックリするほどの、世紀のイリュージョンだった。
角材は空中で組み合わさって幾何学模様を描き出すと、透明の巨人が工作しているかのように、空中でどんどん形をなしていく。
土台、壁、屋根、そして扉や窓、それどころか、ベッドや棚などの家具までもができあがっていく。
やがて、俺の家そっくりのものができあがると、
……ズズゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーンッ!
深く根を下ろすように、大地に着地した。
「すげぇ……! 30秒もかからずに、家が一軒できちまった……!」
俺は、こわがってしがみついてくるモナカとコトネの腰を抱きながら、家の中に入ってみる。
中身は丸写しみたいに俺の家とソックリで、違うところを探すほうが難しいくらいだった。
壁を強く押したり、床の上で弾んだりしても、軋みひとつたてない。
強度としても、太鼓判を押せるレベルだった。
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ギスの家(複製)
個数1
品質レベル22
高品質なギスの木材で作られた家を複製したもの。
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鑑定してみると、ベースとなった俺の家と、レベルまで一緒だった。
「しかも、ギスの丸太1本でできるだなんて……!」
これはおそらくパッシブスキルの『インスタント』のおかげだろう。
そうなると、もうひとつのパッシブスキルである『プロキシ』のほうも気になってくる。
「もしかすると、もしかして……」
俺は家の外に出て、2軒目の家に着手する。
さっきと同じように、ギスの丸太に向かって手をかざし、複製呪文を詠唱した。
「俺の家がこれほどの再現度で複製できるなら、こいつもきっと……!」
祈るような気持ちが天に通じたのか、俺たちの目の前には、香り高い家がそびえていた。
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キノヒの家(複製)
個数1
品質レベル23
高級かつ高品質であるキノヒの木材で作られた、2階建ての家を複製したもの。
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「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
これにはモナカとコトネも、絶叫とともにぎゅーっと抱きついてきた。
「れ、レオくん!? いま、なにをしたんですか!? こちらは、キノヒのお家ですよね!?」
「ギスの木がキノヒになるだなんて、とても信じられませんっ!?」
初めて手品を見た子供のように、おっかなびっくりの秘書コンビ。
俺も、ギスの木がキノヒになるだなんて信じられなかった。
五感をフル活用して調べてみたのだが、この家は俺がかつて建てた、高級木材をふんだんに使った家とまったく同じ。
「これはひょっとして、とんでもねぇ職業なんじゃねぇか……!?」
複製の元になるものは必要だが、この職業があれば、モノ作りの意味はほとんどなくなる。
しかし同時に、こうも思った。
「村づくりにこれほど便利な職業もないよな! 高級住宅建てまくりじゃないか!」
俺はなんだか嬉しくなって、複製呪文を連発。
新たにできた敷地に家を建てまくり、あっという間に30軒ほどの家を作りあげる。
ついでだからと調子に乗って、牧場のそばにキノヒを使った厩舎まで建ててしまった。














