27 西の開拓者の朝食
27 西の開拓者の朝食
「「「コケコッコォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」」」
次の日、俺は部屋中を揺らすほどの絶叫に飛び起きてしまう。
見ると、窓枠のところに3匹のニワトリが止まっていて、今にもまた合唱を始めそうな勢いで、コッコッと鳴いていた。
ニワトリというのは鶏舎で飼うものだが、放し飼いにしておいたほうがいい卵が採れるので、馬といっしょに放し飼いにしておいたのだが……。
「まさか柵を抜け出して、こうして起こしに来てくれるとはな。ちょっとビックリしたけど、ありがとうな」
お礼を言うと、ニワトリたちはバサバサと外へと飛び立ち、庭で遊びはじめた。
窓枠のところに、白くて丸いものをちょこんと残して。
「これは……? そうか、さっそく産んでくれたんだな!」
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ニワトリの卵
個数3
品質レベル4|(素材レベル4)
家畜のニワトリが産んだ無精卵。
焼くと調理ボーナスが得られる。
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家畜のニワトリに期待することといえば、やっぱり卵。
それを初日から得られるだなんて、朝から最高のプレゼントだ。
目覚ましといい、卵といい、いきなり家畜として大活躍じゃないか。
もしかしたら、拠点スキルのおかげかもしれないな。
「待てよ、それなら他の家畜も……!」
俺は家から飛び出し、牧場へと向かう。
柵を跳び越え、馬たちに混ざって草を食むウシの元に近づく。
「なあ、乳を搾らせてもらってもいいか?」
するとウシはもしゃもしゃしながら、「ンモォ~」と鳴く。
いいのかダメなのか分かりづらかったが、どうやらオッケーのようだ。
俺はコートのポケットから革の水筒を取りだしつつ、ウシの足元にしゃがみこむ。
ウシのお腹の下に、口を広げた水筒を置いて、垂れたお乳をつまんでみる。
それは見よう見まねだったが、お乳から白い液体が水鉄砲のような勢いで飛び出し、白い筋を描きつつ水筒に入っていった。
「やった! 牛乳ゲットだ!」
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牛乳
個数10
品質レベル4|(素材レベル4)
家畜のウシから絞った牛乳。
栄養価が非常に高い。
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卵と牛乳だけで、もう俺の腹は鳴り止まなくなる。
そして俺のハラも決まった。
「よぉし、今日も休みだし、ちょっと豪華な朝食でも作ってみるかな……!」
俺の中で豪華な朝食といえば、もはやひとつしかない。
すでにメニューは頭の中でできあがっていた。
「あとはそれを、現実で作るだけだ……!」
牛乳の入った革袋をひっさげ、さっそく行動開始。
家の庭にある作業場へと向かう。
ポケットから『ギスの木材』を取りだし、『オオイノシシの大ナイフ』で粉々にする。
チップみたいに小さくなったところで、陶芸をした時に作った『森林石の焼き窯』の中に敷き詰めた。
さらにその中央に、昨日ゲットした『オオイノシシのバラ肉』をデンと置く。
あとは焼き窯に火を入れ、蓋をしてしばらく待つ。
「よし、その間に別の一品を作ろう!」
といっても、そんなに難しいものじゃないけどな。
コートのポケットから取りだしたのは、木のボウル。
そして『ノビル』と『クレソン』という野草、あとは少しばかりの花だ。
これらの素材を、俺はとある洞窟で手に入れた。
「アイツ、元気でやってるかな……」
アイツの笑顔を思いだしながら、ノビルとクレソンを手で細かくちぎる。
あとは花の蜜を絞ったものを加え、アケミからもらった塩をさっとひと振り。
「できたっ! アイツの大好きなサラダだ!」
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ノビルとクレソンのさっぱりサラダ
個数5
品質レベル61(素材レベル40+器用ボーナス8+職業ボーナス13)
ノビルの根とクレソンの葉を、塩と花の蜜で和えたもの。
天使も分け前を求めるほどの美味で、食べると生きる気力が湧いてくる。
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そしてそうこうしている間に、焼き窯からもうもうと煙があがっていた。
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イノシシのバラ肉のベーコン
個数1
品質レベル14|(素材レベル4+調理ボーナス2+拠点ボーナス8)
イノシシのバラ肉を燻製にしたもの。
各種ボーナスにより、通常のベーコンに日持ちがし、脂身の旨味も多い。
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「できたーっ! これを使って二品目いくぞ!」
また熱いベーコンを抱え、作業場の近くにある調理場へと向かう。
『森林石のカマド』に火を入れ、カマドの上に『森林石とギスのフライパン』を置いた。
フライパンが熱せられるまでの間、ベーコンを調理台で薄くスライスする。
フライパンがちょどいい熱さになったところで、スライスしたベーコンを投入。
ベーコンから出た油が弾け、香ばしい匂いがたちこめる。
そこでさらに、コートのポケットから取りだした産みたての卵を、割り入れれば……。
……じゅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーっ!!
ベーコンと卵のハーモニーが広がる。
そこに、アケミ塩をさっとひと振り。
「アケミの塩がこんなに活躍するだなんて、くれたアケミ自身も思ってもみないだろうな」
「クシュン!」とアケミのクシャミの空耳が聴こえたような気がした。
そしてメインディッシュ、完成っ……!
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ベーコンエッグ
個数1
品質レベル28|(素材レベル18+調理ボーナス2+拠点ボーナス8)
イノシシのベーコンと、ニワトリの卵の目玉焼きを合わせたもの。
各種ボーナスにより、食べると朝から元気になれる。
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できたてのベーコンエッグを皿に移し、木のトレイに乗せる。
あとは木のコップに牛乳を注ぎ、『天使のふわふわパン』をセットにすれば……!
「さ……最高だ……! これこそ、夢にまでみた朝食……!」
サラダ、ベーコン、パン、そして目玉焼きと牛乳。
この学園に入学する前までは、当たり前のように口にしていたものだ。
しかしこの開拓生活においては、どれも高嶺の花といえるもの。
サラダは野草で、適切な採取を必要とする。
ベーコンは狩猟を成功させて肉を手に入れたあと、燻製の設備を作らなくてはならない。
パンは農業をスタートし、コムギを作る必要がある。
そして卵と牛乳は、畜産ができるようにならなくては、手に入らない。
そう……!
この朝食は、開拓生活における、ひとつの節目……!
チェックポイントと呼べるほどに、重要なものなんだ……!
そう考えると、感慨もひとしお。
俺は震える手で木のナイフとフォークを持ち、ベーコンと目玉焼きを切り分け、重ねて口に運ぶ。
ベーコンのカリカリの食感、目玉焼きのふっくらとした食感。
濃厚な油とこってりした卵の味わいが、生き物を食べていることを実感させてくれる。
そしてパンをひとかじりすると、雄大な小麦畑を彷彿とさせる豊かな味わいが、口いっぱいに広がった。
追って口にした牛乳は、まさに母に抱かれているような、やさしい味わい。
それらはすべて、筆舌に尽しがたいうまさだった。
俺はもはや、言葉もない。
いや、この食事の前に、言葉はいらない。
あ、ありがとうっ……!
すべてのものへの感謝が胸の底からわき上がってきて、ホロリと涙がこぼれる。
俺は今日、人間としてまたひとつ成長。
大きな壁を乗り越えたような気がした。
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西の開拓者の朝食
個数1
品質レベル213|(素材レベル213+限界ペナルティ93+限界突破ボーナス93)
ベーコンエッグとサラダ、パンと牛乳。
西の開拓者にとって究極にして至高、そして原点ともいえる朝食。
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