21 伝説の調教師ふたたび
21 伝説の調教師ふたたび
俺は森に入ったところで、遠くのほうに馬の群れを見つけた。
馬は『炎の七日間』のときにはいなかったから、きっと今になって森に戻ってきた野生の馬たちなのだろう。
俺はこれ幸いとばかりに、『魅力』のステータスを爆アゲして、馬の群れを呼び寄せる。
捕まえる手間もいらず調教に成功し、そのリーダーだった黒馬に乗せてもらうことができたんだ。
クラスメイトたちの馬車のところに戻る前に、『魅力』のステータスだけはちゃんと元通りに減らしておくのも忘れない。
俺が馬の群れを引きつれて颯爽と現われたので、みんなは騒然となっていた。
「な、なんで、馬に乗ってるんだ!? アイツは走ってたんじゃなかったのかよ!?」
「しかもあの馬、手綱を付けてないぞ!? ってことは野生の馬を捕まえてきたのか!?」
「さすがです、レオピンくん! お馬さんとお友達になるだなんて!」
「乗馬もお手の物だなんて! お見事です、お師匠様! 」
「すごい……! やっぱりレオピンくんは、伝説の調教師だ……!」
俺はクラスメイトたちの驚愕と羨望のまなざしを浴び、馬たちを引きつれ、馬車の先頭に躍り出る。
監視役の先生方は、いまにも落馬してしまいそうなほどにのけぞり、ビックリしていた。
「ブィィィィンッ!? なっ、貴様っ!? なんで馬に乗ってるんだ!?」
「でもこれはルール違反じゃないですよね? 校長先生が、そのへんの野生動物を捕まえてきて乗るのはオッケーだって言ってましたし!」
「ぐっ……ぐぐぎっ! あ、アレは、言葉のアヤっていうか……! っていうかなんでこんな短時間で、馬を捕まえられるのぉぉぉぉぉーーーーーっ!?」
悪夢のように頭を掻きむしるカケルクン。
サー先生は腰に提げていたムチを取りだし、ヤケっぱちになった様子でビシバシと振り回していた。
「ブィィィィンッ! こうなったら、馬車を全力で走らせてやるっ! 手綱のない貴様は、引っ張れば簡単に落馬するはずだ! そのまま地面に叩きつけて、全速で引きずり回してやるっ!!」
とても教師とは思えない思考と発言だった。
サー先生は手綱を打ち鳴らして馬を飛ばし、一列になってゆっくりと走っている馬車の馬を、ムチで打ち据えていた。
「おらっ! トロトロ走ってんじゃねぇ! 全速前進だ!」
強くムチで打たれた馬車の馬は、いななき、半狂乱になって走り出す。
走り出す馬車に置いていかれないように、俺も馬のスピードをあげた。
馬車はかなりの速さだったが、馬車を引かされている馬が、俺の乗っている野生の駿馬を降りきれるわけもない。
馬車の馬はすぐヘトヘトになってしまう。
それでもサー先生は、怒鳴りながら馬を打ち据えるのをやめない。
とうとう馬は暴れだし、馬車は激しく揺れ、乗っている生徒たちは悲鳴に包まれていた。
「キャァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?!?」
見かねた俺は、調教した馬のうちの一頭に命じる。
命令を受けた馬は、先生たちの乗っている馬に追いつき、横からジャンプ。
障害物競走のように馬を乗り越えながら、飛んだ前足で、横暴な騎手たちを突き飛ばしていた。
……パッカァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!
「ぶ……ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!?!?」
豚のような悲鳴とともに、吹っ飛んでいくサー先生。
巻き込まれるようにして、いっしょになって飛ばされるカケルクンと教頭先生。
トリオが飛んでいった先は運悪く崖で、真っ逆さまに落ちていく。
しかも最悪なことに、カケルクンがいちばん下になって落ちていた。
崖下は岩場になっていて、カケルクンが叩きつけられた瞬間、ボキッ! と嫌な音がする。
「ぎゃいんっ!?」
轢かれた犬みたいな悲鳴とともに、札束のようなエフェクトが舞い散る。
「あれはたぶん、HPのかわりに所持金が減ったんだな。あんなに大金をまき散らすだなんて、相当なダメージを受けてるんじゃ……」
さらに最悪なことに、カケルクンの上に教頭が降り注いでいた。
ドスッ! と大柄な女性にのしかかられ、轢かれた猫みたいな悲鳴があがる。
「ふんぎゃあっ!?」
そしてトドメとばかりに、サー先生の巨大な尻が、カケルクンの顔をプレスする。
ゴシャッ! と潰れるような音がして、カケルクンの首がへんな方向に曲がっていた。
普通の人間なら、どれも即死クラスの三連撃だと思う。
しかしカケルクンはピンピンしていた。
その点はさすが、『100億の男』と呼ばれるだけはある。
カケルクンがクッションになったおかげで、教頭のサー先生も無傷ですんだようだ。
それは喜ぶべきことのはずなのに、カケルクンは泣き叫んでいた。
「うっ、うわぁぁぁぁん! い、いまので2億! 2億も吐き出しちゃったぁ! ど、どうしてくれるのさ、サー先生! このゲームはぜったいに勝てるはずだったのに、サー先生が余計なことをするからっ! からぁ!」
「ぶ、ブィィィィンッ!? サーのせいにするおつもりですか!? 校長が、野生動物に乗っていいだなんていうルールを付け足すから、こんなことになったんですよ!」
お互いを案ずることもせず、真っ先に仲間割れをはじめる先生たち。
崖上の馬車たちは何事もなかったように、元のペースでゆっくりと進んでいた。
馬車には御者がいないのだが、目的地は教え込まれているらしく、足を止めずに進んでいる。
俺は腰のロープを外して、崖下にいる先生たちに投げてやろうかと思ったが、ロープを外したから負けとかイチャモンを付けられそうなのでやめておいた。
かわりに、3人に向かって呼びかける。
「せんせーっ! 馬が止まらないんで、俺ももう行きますねーっ! 自力でがんばって這い上がってきてくださーいっ! 湖で待ってまーすっ!」
俺は先生たちの返事を待たず、馬をさっさと走らせる。
「まっ、待ってぇ! レオピンくん! そうだ、新しいゲームをしよう! カケルクン救出ゲームだよ! ボクを助けられた、特別に500¥のボーナスをあげるね! ねっ!」
「ぶっ、ブィィンッ!? まっ、待て! 上官を置いていくとは、戦場なら軍法会議ものだぞっ! 待たんか、こらぁーーーーっ!!」
背後から怒声が追いすがってきたが、もう気にしない。
そこから湖までの道のりは、晴れの日ということもあって、実に快適で気持ちのよいものとなる。
木漏れ日の中の俺は、キラキラと輝いていた。
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レオピン
職業 調教師
LV 21 ⇒ 22
HP 2510
MP 2510
ステータス
生命 251
持久 251
強靱 251
精神 251
抵抗 251
俊敏 251
集中 251
筋力 251
魔力 251
法力 251
知力 251
教養 251
五感 251
六感 251
魅力 1
幸運 5
器用 500 ⇒ 600
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調教師
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