15 にぎやかな集落
15 にぎやかな集落
ふたつのクラスが手伝ってくれたおかげで、畑仕事はいつも以上に賑やかに、そして楽しくなった。
モナカとコトネは汚れるのもかまわず、一生懸命に土いじりをしている。
そこに、マーチャンたち『商人連合』のメンバーがやって来る。
「レオピンくーん! 畑仕事を手伝いにきたよ! ……あれ? 畑のほうが賑やかだね? ボクたち以外にも手伝ってくれる人がいたんだ」
「ああ。噂を聞きつけて、わざわざ来てくれたんだ。お前たちにはちょっと堅苦しい相手かもしれんが、仲良くしてやってくれ」
「へへーっ! もうレオピンくんにはさんざん驚かされっぱなしだから、誰がいたってもう驚かないよ!
ペイパー様をビンタする以上にビックリすることなんて、そうそうあるわけないし!」
マーチャンは余裕しゃくしゃくといった様子でクラスメイトを引きつれ、袖捲りしつつ畑へと向かった。
しかし、畑に広がるゲストたちを目にした途端、
「えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
『商人連合』はドミノのようにバタバタと倒れ、一斉に尻もちをついていた。
「なっ、ななっ、なんで!? なんで、1年2組と1年19組の方々がいるのっ!?」
「しっ、しかもモナカ様とコトネ様までいるよっ!?」
「あのおふたりが、レオピンくんと仲が良いっていうのは知ってたけど、まさかここまでとは……!」
「あああっ! なんてこと、なんてことなの!?
将来は『大聖女』に『姫ミコ』になるのを約束されている、あの、あのおふたりがっ……!」
「畑仕事だなんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
「うわぁーっ!」とさらに後ろに転がり、器用に土下座の体勢になる『商人連合』の面々。
怖れ多い様子で俺を見上げながら、ガタガタと震えていた。
「れっ、レオピンくん! いや、レオピン様!
ごっ、ごごっ、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーいっ!」
「まっ、まさか、まさかレオピン様が、モナカ様とコトネ様に命令できるほどのお方だったなんて、知らなくて!」
「度重なる無礼、どっ、どどっ、どうかお許しをぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」
俺はなんだかこそばゆくなった。
「みんな、顔を上げてくれ。っていうか、土下座なんかするな。俺はただの無職だ。偉くもなんともない」
「う、うそ! うそに決まってます! ただの無職が、モナカ様とコトネ様に相手にされるわけがありません!」
「そうですよ! この学園でモナカ様とコトネ様とお話できる生徒は、賢者様や勇者様だけなんですよ!」
「いや、モナカとコトネは地位や職業で他人との付き合い方を変えたりしない。誰にでも分け隔てなく接してくれるはずだ」
俺はふたりに向かって呼びかけた。
「おーい! モナカ、コトネーっ!」
「そ、そんな!? 犬みたいに、おふたりを呼びつけるだなんて……!?」と仰天する者たち。
モナカとコトネは気にするどころか、仔犬みたいに嬉しそうに、ぱたぱたと俺に所に駆けてきた。
「モナカ、コトネ、ここにいるのは1年9組、『商人連合』のヤツらだ」
紹介すると、『商人連合』の面々は、よりいっそう土下座を固くする。
モナカとコトネはなにを思ったのか、マーチャンの横にチョコンと正座した。
「みなさんで、レオくんにお礼をおっしゃろうとしているんですよね?」
「それでしたら、わたくしたちもご一緒させてください。
お師匠様の感謝の気持ちは朝昼晩、1日3回してもしたりないくらいですから」
「それではみなさん、ご一緒にお願いいたします!」
「お師匠様、いつもわたくしたちを導いてくださり、ありがとうございます!」
モナカとコトネの音頭にあわせ、大勢の男女が俺に向かって深々と頭を下げた。
「まいったな、こりゃ……」
ボリボリと頭を掻く俺。
その横にあった自宅の塀が、またしても金屏風のように光りだした。
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拠点
LV 5 ⇒ 6
規模 普通の限界集落 ⇒ 普通の集落
人口 1
眷獣 3
傍人 21 ⇒ 41
拠点スキル
活動支援
拠点拡張
拠点防御
農業支援
第二の故郷
NEW! 眷獣支援
拠点内にいる眷獣の能力が向上する
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俺の拠点はついに『普通の集落』になった。
「といっても住人は俺ひとりで、他はゲストなんだけどな」
なんてつぶやいていたら、抗議の声をあげられた。
「くぉん!」「ぴゃあ!」と。
「悪い悪い。お前たちも立派な住人だったな」
気付くとマークとトムは畑の中にいた。
マークはモナカのマネをして、熊手で畑の土をならし、トムはコトネのマネをして、ネコパンチで土ほじくり返している。
マークとトムは狩りをした成果を、俺にお裾分けしてくれることが何度かあった。
「でも、こんな風に作業を手伝ってくれたのはこれが初めてだな。
もしかして、拠点スキルの『眷獣支援』の効果がさっそく現れたんだろうか?
あのふたりが畑仕事ができるようになったら、かなりの戦力になるかも」
俺はさっそく実現化に向けて、クラフトを開始する。
作ったものは2種類で、どちらも簡単なウッドクラフトだ。
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ギスのプラウ
個数1
品質レベル39|(素材レベル12+器用ボーナス7+職業ボーナス20)
高品質なギスの木材で作られた農具。
牛や馬に牽引させることにより、土壌を効率的に耕起することができる。
各種ボーナスにより、通常のプラウに比べて土の抵抗が少なく、より少ない力で引っ張ることができる。
ギスとバンブーウッドのレーキ
個数1
品質レベル48|(素材レベル21+器用ボーナス7+職業ボーナス20)
高品質なギスの木材の先端に、バンブーウッドを放射状に取り付けた農具。
枯葉や干草をかき集めたり、土壌をならすのに使う。
各種ボーナスにより、通常のレーキに比べて仕事効率が非常に高い。
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俺はできあがったプラウをトムの身体に装着する。
プラウは、いくつものクワが付いたような幅広の農具で、引っ張ることにより広い範囲を耕すことができる。
本来は牛や馬に引かせるものだが、トムは牛馬並のパワーを持っているようで、どんんどん畑を耕してくれた。
そしてマークにはレーキを渡す。
レーキは東の国では『クマデ』と呼ばれ、その名の通りクマの手が大きくなったような農具だ。
マークもさっそくレーキを使いこなし、トムが掘り返した土を丁寧にならしていく。
そのコンビネーションはまるで、長年連れ添った夫婦のように息ピッタリだった。
「この調子なら、新しい畑を広げてもいいかも」
今、この拠点には3つの畑がある。
『スイートポテト畑』『コムギソウ畑』『ブラックセサミ畑』だ。
「作物を居住区に流通させるなら、もっともっとたくさん育てる必要があるからな」
俺はマークとトムに、草原に向かうように指示。
意図が通じたか不安だったが、ふたりは「くぉん!」「ぴゃあ!」と返事するように鳴き返す。
獣たちは畑のすぐ隣にある草原で、開墾作業を開始した。
ふと気付くと、家の門のあたりに10人ほどのクラスメイトがたむろしているのが見える。
全員が肩に小動物を乗せているので、ひと目で調教師たちのクラスである1年3組だとわかった。
俺はそばまで行って、声をかける。
「どうした? なにか用か?」
すると調教師の卵たちは、「ごめんなさい! レオピンくん!」と、俺に向かって腰を折った。
「やれやれ、今日はやたらと頭を下げられる日だな。なんで下げてるかは知らんが、とにかく顔を上げてくれ」
彼らは直立すると、興奮した様子で口々に言う。
「今までバカにしたりしてゴメン! どうしても謝りたくって!」
「お詫びにどうか、私たちにも畑仕事を手伝わせてほしいの!」
「といっても手伝えるのは僕たちだけで、ペットたちは無理だけどね!」
それはジョークのつもりだったようで、調教師たちは「アハハハハ!」と笑った。
しかし俺は真面目に受け取ってしまい、「そうなのか?」と問い返す。
「レオピンくん、そんなことも知らないの? だって農作業なんて、ペットの本能にないことでしょ?」
「どんな立派な調教師だって、本能にないことは命令できないんだよ!」
「そうだったのか……。まあなんにしても、手伝ってくれるのなら助かるよ。
いま俺の仲間が開墾作業をしてるから、手伝ってやってくれるか?」
1年3組の面々は、「オッケー!」と気軽に返事をして、畑へと向かっていく。
俺は、彼らが『商人連合』と同じように、畑にいるモナカとコトネを見たら腰を抜かすんじゃないかと思って心配する。
調教師たちは、たしかにモナカとコトネには驚きはしたものの、ひっくり返るほどではなかった。
でも、畑仕事をしているマークとトムを目の当たりにした途端、
「えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
調教師たちはデジャブのようにバタバタと倒れ、一斉に尻もちをついていた。
「なっ、ななっ、なんで!? なんで、クマとブラックパンサーが農作業してるの!?」
「クマなんて、器用に『クマデ』を持ってるぞ!?」
「う、うそだろ!? ペットに農作業をさせるのは、サーカスで芸を仕込むより大変で、不可能とすら言われているのに!?」
「や……やっぱりレオピンくんはタダ者じゃねぇっ! 伝説の調教師だっ!」
「れっ……レオピンさまぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「またかよ……」
ボリボリと頭を掻く俺。
その横にあった自宅の塀が三度、純金になったかのように光りだした。
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拠点
LV 6 ⇒ 7
規模 普通の集落 ⇒ にぎやかな集落
人口 1
眷獣 3
傍人 41 ⇒ 52
拠点スキル
活動支援
拠点拡張
拠点防御
農業支援
第二の故郷
眷獣支援
NEW! 料理支援
拠点内の料理において、品質にボーナスを得られる
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