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アイドルという名の悪夢5


ねぇ?アイドルって顔が命なんだよ?

その言葉を思い出した。


殴られて青アザができて顔がボロボロになって泣いても喚いても殴るのをやめなかった。

私の母は殴るのをやめなかった。


アイドルの顔を殴り続けた。

10分を過ぎた頃、母は息を切らし殴るのをやめた。


「私はあなたが好きなのよ?」

そう、言うと家に帰った。


腕を掴み歩き出した。

みんなは止めることが出来ずに私の腕を母は引っ張った。


「あの子キメラだったんだ」とか「それにしてもマネージャーさんすごい殴ってたね」とか「あのマネージャーあの子の母親らしいよ」とか私が帰る背中を見ながらザワザワとしてた。


何故かその日は噂にならなかったらしい


いつもは嫌がらせや悪口を言ってるのになんで今日だけ何も言わないのだろうと思った。


「ねぇ、明日もライブあるから舞台に上がるのよ」


帰りの車のハンドルを握る手が私を殴ったせいで赤くなってるのか私の血で赤くなってるのか分からなかった。


もう、やだよ。辞めたい。アイドルなんて、キメラなんて……


『命なんて』


もう、死にたい……


「返事!!!」

母の声が車内に響いた。

ただ、母の声がいつもの母の声ではなかった。


いや、いつもの母の声だがいつもよりいつも以上に怒っていた。


「は、はい……」


私は声を荒らげた。


「明日……明日で最後にするから……」

聞こえた母の声は怒りなのか悲しみなのか分からない混じった声だった。


次の日


「みんなー!!!今日もうとちゃんのライブ見に来てくれてありがとねー!!!」

城井兎斗のライブで盛り上がらなかったのはこれが最初で最後だった。


顔には痣ができ顔面が膨れ上がりそんなことより人間の耳があるところにはなく頭に耳があったこと


「痛そう」だとか「キメラだったんだ」だとか昨日の他の人達と同じ反応だった。

ただ、規模が違っていた。

数百人……いや、数千人の人数が城井兎斗というキメラのアイドルを見た。


不安と期待とキメラと興奮が混じった中ライブは終了した。


キメラの何が悪いのか人様からすれば人様が大事で自分が大事でキメラなど他人などどうでもいいのだ。


嗚呼、やっとだ。やっと、やっとアイドルとしての城井兎斗は『死ねる』


ライブが終わるとマネージャーが私を抱いた。


マネージャーとしてではなく母としての温もりだった。


初めての愛情と醜い顔が痛んだ。


「雪……アイドルとしての城井兎斗は死んだ。あなたは山田雪なのよ」


そうして、私はアイドルという職業をやめた。




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