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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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王様の散歩

 翌日ヨンたちが揃ってジョーの私室へ行ってしまったので、ハルカは仲間たちを連れて海の方の確認へ向かうことにした。今後は拠点近くの港から船を出して、こちらへやってくることだってあるだろうから、ある程度の整備はしておきたい。

 ニルとウルメアに確認してみたところ、一応港があった痕跡が残されていたので、それを基準に試行錯誤して桟橋などを準備してくれているとのことだった。

 

 コボルトたちにじゃれつかれながら街の中を歩き、その景色を確認しながら移動していく。

 街の中には時折背の高い建物が立っており、ニルたちの話によればそれは、リザードマンやケンタウロスのために建てた家なのだそうだ。コボルトたちはそんな具合に、建築から畑仕事までオールマイティに働いてくれている。


 これが辛そうにやっているとなると色々と考えてしまうのだが、彼らは一生懸命に動いてはいるものの、どこか作業をするのが楽しそうなのだ。むしろやることがないと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりして退屈そうにしている。

 そういった面でも、ウルメアの采配というのは見事なものなのだろう。

 コボルトたちが体調を崩さない程度に、かといって退屈しすぎない程度に、うまいこと仕事を割り振っている。


 これについての懸念点は、コボルトたちが環境によってどんどん増える上に、作業効率が良すぎてやることがどんどん減っていってしまうことである。彼らは人と比べても勤勉で、仕事が遊びのようなものなのだ。

 いずれはジョーが立てたような塔のような要塞じみたものを作って暇つぶしをさせることになるかもしれない。

 あるいは、世界を旅するコボルト探検隊、なんて想像を膨らませながらハルカが歩いているうちに、街の端までたどり着いていた。

 門をくぐって外へ出ると、そこには一面の畑が広がっている。

 今は冬や春に向けての葉物野菜が植えられる時期らしく、コボルトたちは楽しそうに働いている。泥だらけになっても気にしないし、元から背が低いので、土いじりは彼らの得意とするところだ。

 ハルカたちが通りかかると「王様だー」と声をかけたり、「これね、食べる草育ててるよ」とか説明をしてくれるコボルトはいるのだが、半数以上は作業に夢中になっている。


 上空から空飛ぶ魔物とかに襲われないかだけがちょっと心配だ。

 畑エリアを通り抜けると、今度は坂道を塞ぐ立派な門が見えている。


 これは中々に大きな建物で、中に居住区画も設けられており、門の上に上ると坂道を完全に見下ろせるようになっている。

 壁の上ではリザードマンがコボルトたちについてこられながらのんびりと見張りをしているようだったが、一人のコボルトが「あ、王様だー」と声を発した瞬間振り返り、慌てて門の上から降りてきた。

 後ろにはたくさんのコボルトを引き連れている。


「陛下、お久しぶりです」


 緑の肌のリザードマンは、ニルを慕ってリザードマンの里からやってきたうちの一人であった。


「お久しぶりです。ここの警備ですか?」

「はい、こいつらと一緒に見張りをしてます。特に何もないですけどね」

「お疲れ様です、平和が一番です。ちょっと坂の下を見てきますね」

「はい、お気をつけて!」


 門の横にある勝手口をくぐり、坂道をのんびりと下っていく。

 左右が切り立った崖になっているこの地形は、海から徒歩で攻めてくる者たちにとっては難所になることだろう。あの上にずらりと魔素砲を持ったコボルトが並べば、光景自体はかわいらしいが、その攻撃力は中々のものである。


 戦いのことなどあまり想像もしたくないハルカだが、自分が常駐できない以上緊急事態には備えて、〈ノーマーシー〉の民だけで、ある程度戦える態勢は整えておくべきであった。


 さて、坂道を下りていくと、聞いていた通り桟橋が見えてくる。

 思っていたよりもずっと立派なもので、その上では何やら丸っこいフォルムのリザードマンがコボルトたちを背中や肩に乗せながら、海に釣竿をたらしていた。

 すぐ横に置いてある桶には、魚が山になって積んである。

 コボルトたちもそのリザードマンと同じくじーっと水面を見ていて大人しい。


「あ、王様だ」


 一人のコボルトが声を上げると、一斉にわらわらとコボルトたちが近寄ってくる。

 海沿いには随分と家の数もコボルトの数も増えていた。

 魚が干してあり、こちらのコボルトたちものんびりと暮らしているようである。


「陛下、お久しぶりです」


 立ち上がって挨拶をしたのは、モル=ガという若いリザードマンだ。

 丸っこい体つきをしており、元々はリザードマンの里で戦士をしていた。

 ただ、ハーピー達との戦いでころころと崖から転がり落ちて以来、戦士をやめてハーピー達との折衝をしていたリザードマンである。実はニルに匹敵するほどに体が大きく、戦士として期待をされていたのだが、その丸々としたフォルムから、威圧感はあまりない。

 ハーピー達との関係が落ち着いたからと、前回こちらへやってくるときに「何か役に立てることがあれば……」とついてきてくれたのだ。

 ハーピー達とうまくやれていたモル=ガは、当たり前のようにコボルトたちともうまいことやっているようで、こちらの港の管理者的な役割を担っているようだ。人当たりが柔らかく、人魚ともうまいことやっているという話であった。



「お久しぶりです。よく釣れていますね」

「はい。この子たちに釣りのやり方を教えてるんですけど、僕の上に登ってきてるんですよねぇ……」


 ぼやいてはいるが、困っているわけではないようだ。

 魚に関しては人魚たちがある程度とってくれるので、釣りなどはおまけ程度でしかないのであまり気にしていないのだろう。

 ここにいるコボルトたちが主にやるべきことは、干し魚を作ることと、港の建設作業である。


 どうやらここもまた、平和に順調に作業が進んでいるようだった。

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― 新着の感想 ―
モルさん、リザードマンにしては気弱で優しい性格だからな 適任だわ
俺異世界スローライフするならこの街がいいなぁ・・・
コボルトになりたい
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