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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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良かったらどうぞ

「国でも作るの、お前ら」


 本気で言ったわけではないだろうが、港町を見たヨンが放った言葉は、案外的を射ていた。コリンの見立てによれば、この村はいずれ交易港として栄え、【竜の庭】に莫大な利益をもたらすはずである。

 これはハルカたちの知らない事情であるが、そもそも【独立商業都市国家プレイヌ】は、建国当初から港を欲しており、この辺りにも目をつけていた。商人の国だというのに、港を持っていないなどお笑いだ。

 東が〈混沌領〉に塞がれており、南東は山脈を越えなければ海にたどり着かない地形から、ここは【独立商業都市国家プレイヌ】にとって、唯一と言ってもいいほどの、港適性のある地域であった。


 それでもこの場所に港が建設されなかったのは、ひとえにノクトが強くそれを拒否し続けたからである。別にここの土地主でもなく、昔から住んでいるわけでもないノクトがだ。これぞまさに、特級冒険者のわがままを体現したような要求であった。

 ただし、ノクトの強さは【血塗悪夢ブラッディナイトメア】という名で、当時の商人や冒険者には知れ渡っていたし、そうでなくとも建国の功労者だ。


 硬軟織り交ぜた拒否が数十年続いた結果、【独立商業都市国家プレイヌ】の商人の間では、この土地に港を作るのは厳禁であると言い伝えられるようになり、いつしかほとんどの者が手を出さなくなった。


 そんな港を国ではなく【竜の庭】という宿クランが単体で押さえているのだ。

 ちょっと地図を見ただけでもそれの重要性が分かるヨンが呆れるのも当然だった。


「おおー、なにやらまた人が増えてるでござるなぁ」


 呑気に街から現れたのは、リョーガであった。

 ナギが見えたのでハルカたちを出迎えに来たのだろう。


「こちら遺跡探索を得意としている冒険者の方々です。色々あって【竜の庭】に入ってもらうことになりました」

「どんどん大きくなるでござるなぁ。拙者リョーガ=トキと申す者。【神龍国朧】が〈御豪泊おんごうはく〉の侍でござる。宿の仲間ではなく食客でござるが、今はこの村の護衛をしているでござるよ」

「そういやなんか他にも侍っぽいのいた。俺はヨン。よろしく」


 ヨンがフレンドリーに手を差し出すと、それぞれが順番に自己紹介をしていく。

 侍にしては圧倒的にコミュニケーション能力の高いリョーガの手にかかれば、はじめましての相手もお手の物だ。


「折角だから中を案内するでござるよ」


 そうしてそのまま港の中をぐるりと案内していくと、途中でヨンが「お?」と言って足を止めた。海の方から二人の背の小さな男性が、何やら設計図を見てあれこれ話し合いながら歩いてきたのを見つけたのだ。


「ん? お、ハルカ! 船の設計図が上がってさ、ちょっと見てくれよ。これ、キーグが設計したんだぜ。この辺なら木材には困らねぇし……!」


 よく似た二人の小人のうち、潮風で髪を跳ねさせたコリアが走ってハルカの方へと寄ってくる。横を歩いていたコリアの弟のキーグは、相変わらず前髪で目元を隠したままで、慌てて兄の後を追いかけてきた。


「と、おぉ? 小人族……? 珍しいな、こんなとこで会うなんて」

「ヨンさんです。遺跡探索を得意としている冒険者で、先日から宿に入っていただきました」

「へぇ! そっかそっか、よろしくな。俺はコリア。船乗りだ」

「小人族もいたのか、ホント節操ないな。ま、よろしくな」


 お互い多弁だからか、早口であっという間に情報交換をして、一通り話をしたあと、急にハッとした顔をしてコリアがハルカを見上げる。


「これ、船な。半年もすりゃあ形にするから。一応小舟はもう作ってあって、アバデアたちはこの辺の海流の調査とかに出てる。いやぁ、自由に何でもできるのって楽しいよなぁ!」

「そう言ってもらえると私も嬉しいです。……テセウスさんたちはどうしてます?」


 家族を引き連れてやってきた漁師のテセウスの姿が見えないので、気になって尋ねてみると、コリアは親指で海の方を指さして笑った。


「それも含めて海流の調査。みーんな出払ってんだよ、悪いな」

「いえ、皆さんお元気なら。何か不足してるものはありますか?」

「ん、いや、別に?」

「そうですか。ちょっとまた東へ行くのですが、帰りにも寄るので、それまでに何か必要なものがないか聞いておいてもらえると助かります」

「わかった、聞いとくわ。えーっと、じゃあちょっと資材の確認するからまたな! ほら、行くぞキーグ」


 小走りで去っていくコリアは活気であふれているが、それに振り回されているキーグは大変そうだ。ハルカにぺこりと頭を下げて、コリアを追いかけていった。


「ま、こんな感じで問題なく回ってるでござる。最近は魔物の出現率も低いでござるし、賊なども今のところ来てないでござるなぁ」

「いつもありがとうございます。すみません、ずっと見てもらってしまって」

「ま、その分いつか力を借りるつもりでござる。存分に恩を売っておくでござるよ」

「はは、程々にお願いします。あの、相談が一つありまして……これなんですが」


 ハルカが無造作に持っていた刀を、リョーガの方へと差し出す。


「ずっと気になっていたでござるが……、これは……?」

「これ、多分すごくいい刀なんですが、うちでは今使う人がいないんです。もしリョーガさんが使えるようならと思って持ってきたんですけど……」

「ほうほう、なるほど……?」

「鉄徹斎という方が打った刀で、【餓狼】という銘の刀だそうで……」

「鉄徹斎!? 何代目でござるか!?」

「い、いえ、そこまでは分かりませんが……。随分前に【神龍国朧】を離れた吸血鬼が持っていたので、それなりに古い物ではないかと……」


 冷静なリョーガにしてはものすごい喰いつきをしてきたことに驚き、ハルカは少し体を引いた。


「いいんでござるか? 本当に拙者が持ってていいんでござるか?」

「ええ、まぁ、その、お世話になってますし……。眠らせておいてもどうかと思いますし……、貸出って名目で良ければ……」


 さり気なく鯉口を切って刃文を覗いたリョーガは、にっこりと笑った。

 また無精ひげが生えてきているが、人が無邪気に喜んでいるとどうも幼く見えるものである。


「大切に使わせてもらうでござる!」


 世話になっているリョーガが喜ぶ物はないかとみんなで話し合って持ってきたものだが、どうやら大正解であったようである。 

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― 新着の感想 ―
かつて国を股にかけて暴れ回った大妖が振るいし妖刀か これは拍付けとしても最高だな
> 餓狼がどこで出てきたか…思い出せないw 同じくw
餓狼がどこで出てきたか…思い出せないw
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