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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第四章 宿命の吸血鬼編
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第89話 キルって誰のこと?

「よ、よろしくおねらいしますリ」


 にっこり頬笑むイアンさんを見上げて、スピリアちゃんはどぎまぎしながらもペコリとお辞儀。


それを見たイアンさんがまたにっこりと笑みを浮かべる。


「ユキもマコトくんもわざわざ付き添いありがとう。良かったらゆっくりしていってね」


 そう言って、イアンさんは私とまことさんとスピリアちゃんを家へ通してくれた。


「ありがとうございます、お邪魔します」


 私の横では誠さんが黒眼鏡をくいっと上げて、多分『お邪魔する』の合図をしていた。


 家の中はもぬけの殻で、イアンさん以外の吸血鬼の姿が相変わらず見つからなかった。


「キルちゃん達は……」


 私が尋ねると、イアンさんは私に振り向いて教えてくれた。


「キルとレオとミリアで訓練に行ってるよ。でもスピリアが来ることは伝えてるからもう少しで帰ってくるはずだ」


「新しい住人が来るというのに非常識な奴等だと思っていたが、そうでもないのか」


「あ、あはは……」


 誠さんの呟きに私は冷や汗をかきながら笑った。


 幸か不幸か、それはイアンさんには聞こえなかったようで、イアンさんは再びこちらを振り返ることなくキッチンで作業をしていた。


 その事に胸をなでおろしつつ、私はキッチンに向かった。


「何か手伝えることはありますか?」


「ん? ありがとう、ユキ。じゃあ淹れたお茶をダイニングに運んでくれないかな?」


「分かりました」


 頷き、イアンさんが淹れ終わったお茶の入ったカップをダイニングテーブルへと運んでいく。


 白いプラスチック製のカップで、ツルのような金色の模様があしらわれている、それはそれはおしゃれなカップだった。


「おしゃれ」


 運びながらカップを見つめていると、呟きとなって感想が飛び出た。


「どうぞ、お茶です」


 誠さんとスピリアちゃんの前にカップを置く。


「すまん」


「ありらとうリ、ユキ」


「いえいえ」


 二人のそれぞれの反応に返しつつ、私は再びキッチンに戻る。


「ユキ」


 イアンさんの隣に立つと、イアンさんが私を呼んだ。


「はい、どうしたんですか? イアンさん」


「この間は無理かもなんて言ってごめんね」


「あ、いえ! 大丈夫です!」


 首と手を振るアクションとともに私は大丈夫であることを告げた。


「……何で無理かもって仰ったんですか?」


 でもやっぱりその理由が気になって、小声で聞いてみた。


「うん、ちょっと色々心当たりがあってね。もしかしたらユキを傷付けることになるかもしれないけど、その時はちゃんと守るから。皆が合意の上であの子を受け入れることにしたんだ」


 イアンさんはどこか悲しげに、淹れたお茶を見つめながらそう答えてくれた。


 『私を傷付けるかも』っていう理由がよく分からなくて気になるけど、イアンさんの悲しそうな表情を見ると、とてもそんなことは聞けなかった。


「……分かりました」


 それだけ言って、私はまたカップをダイニングテーブルまで運び始めた。


 ※※※※※※※※※※※


「よし」


 私達四人分のお茶を淹れ終えたイアンさんが席について一息。


「歓迎会をする前に一足先にティータイムだ」


 気付けば時間は朝の10時。10時のおやつ(?)だ。


 イアンさんの言葉を合図に、スピリアちゃんがお茶を一口。


「美味しいリ!」


 喉をコクりと鳴らして顔をほころばせた。


「そう? 良かった」


 彼女を見てイアンさんは安心したように笑みを浮かべた。


「スピリアはどこの種族なの?」


 カップをテーブルに置いて、イアンさんがスピリアちゃんに尋ねた。


「ホーリー・ヴァンパイアって言いますリ。でもみんな殺されましたリ」


「敬語じゃなくて良いよ。これから一緒に暮らす家族みたいなものなんだから」


 言いにくそうに敬語で話すスピリアちゃんに、イアンさんは優しく言う。


 スピリアちゃんは驚いたように目を見開いて笑顔を見せてから、


「分かったリ」


 と、くたげた口調に戻った。


 そんなスピリアちゃんを微笑んで見つめながら、イアンさんは自己紹介をした。


「僕はイアン。一応、この家のあるじ。それと鬼衛隊の隊長……って言うのは難しいか。とりあえず、これからよろしくね」


 頭を掻いてイアンさんは笑った。


 スピリアちゃんはコクりと頷いてからイアンさんに倣って自己紹介。


「スピリアっていうリ。……特に何もないリ。よろしくお願いしますリ」


 イアンさんが『家の主』や『鬼衛隊隊長』という肩書きを加えた為に自分も何か言わないとと思ったのだろう。


 スピリアちゃんは名前を名乗った後に、首を傾げて目だけで上を向き、色々と考えていたようだったけど、結局自身には何もないという結論に至っていた。


「面白いなぁ。家も明るくなりそうだ」


 イアンさんは楽しそうに笑ってからスピリアちゃんをまじまじと見つめ、


「キルと同じくらいの年齢だと思ったけど言葉遣いから考えてキルよりも年下なのかな」


「キルって誰のことリ?」


 首を傾げてスピリアちゃんが聞くと、


「僕の仲間でこの家で一緒に住んでるんだよ」


 イアンさんがそう言った直後に、入り口のドアがガチャリと開いた。


「ただいま~」


「ただいま戻りました、隊長」


「遅くなって申し訳ございません! イアン様!」


 キルちゃん、レオくんが挨拶をし、ミリアさんが頭を下げて謝罪する。


「大丈夫大丈夫。あ、あの桃色の髪の子がキルだ……」


「リィッ!」


 イアンさんが言うよりも早く、スピリアちゃんがキルちゃんに飛びかかっていったのだった。

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