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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第286話 お墓参りと招待状

 グリンさんが消滅してから数日後。私は(まこと)さんと一緒に天界を訪れた。


 グリンさんの消滅をその目で見た誠さん。私がグリンさんに花を手向けに行きたいと言うと、自分も行くと私を引率してくれたのだ。


 私と誠さんが魔法陣で現れたのを見て、天界の天使達は相変わらずざわめき始める。


 やっぱり注目の的になっちゃうか……。誠さんはVEOの隊長だけど、私は大した人間じゃないのに何だか申し訳ないな……。


 そんなことを思っていると、王宮の方から白い短髪の天使と薄紫の長髪の天使が歩いてくるのが見えた。


 私達の来訪なんて無かったことみたいに、天使達が黄色い歓声をあげる。その対象は言うまでもなく、白い短髪の天使__ルーンさんだ。


「相変わらず、人気なんですね」


 私が言うと、ルーンさんは目を細めた。


「ああ。今は皆の明るい姿に助けられてる」


 その言葉の裏に隠れた気持ちに触れてしまった気がして、今度こそ本当に申し訳なく思ってしまう。


「ご、ごめんなさい……」


「何故謝る? ユキは何も悪くないではないか。マコトも久しいな。三日ぶりか。よく来てくれた」


 ルーンさんは不思議そうな顔をして私の頭に手を置いてから、誠さんにも笑みを浮かべた。それに誠さんも手を軽く上げて応える。


「ああ。久しぶりだな」


「今日はわざわざお越しくださり、ありがとうございます。どうぞ、ゆっくりなさってくださいね」


 フェルミナさんが礼儀正しくお辞儀をしてから、にっこりと微笑んでくれた。


「あ、あの……」


 私は、王宮へと先を歩くルーンさんとフェルミナさんを見つめ、彼女達二人に『あること』を提案した。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 それから、私、誠さん、ルーンさん、フェルミナさんは、王宮の応接室に向かい合って座っていた。天界に来るたびに何度もお世話になった部屋だ。


「グリンに花を?」


「は、はい。本当ならルーンさんやフェルミナさんの気持ちの準備が出来てから、改めて伺った方が良かったんですけど、どうしても早くお墓参りがしたくて……」


 私の提案を聞き返すルーンさんに頷き、私は細かい事情と言い訳を述べる。私の提案というのは、グリンさんのお墓に花を手向けたいというものだった。


 その場ではお祈りくらいしか出来なかったのもあるし、流石に何もしないのは非常識極まりない。そう思っての提案だったのだけど____、


「墓……。ああ、そうか。確か人間界にはそんな伝統があったな。悪いが、そのようなものは準備していないんだ。形見も無いしな……」


 ルーンさんは少し困ったように考え込んでから、応接室のソファーから立ち上がる。


「そうだ、少し待っていてくれ」


 すると、すぐさまフェルミナさんが立ち上がった。


「ルーンは座ってて。私が取ってくるわ。何が要るの?」


 フェルミナさんに尋ねられたルーンさんは、彼女が取ってくると言ったことに目を見張って驚いていたけど、彼女の耳元に口を近づけて何やら話した。


「分かったわ。ちょっと待ってて」


 フェルミナさんは頷いて微笑むと、応接室を出て行ってしまった。彼女が一体何を取りに行っているのか、私が不思議に思っていると、


「すまない、天界には消滅した者の墓を建てる伝統が無いから、ユキを困らせてしまったな」


 ソファーにもう一度腰をかけつつ、ルーンさんが謝罪してくれる。私は慌てて両手を振った。


「いえいえ、そんな! 私がしたくてやってるだけなので、気にしないでください!」


 それからふと、天界の将来が気になってしまい、私はまだフェルミナさんも戻ってこないうちにもかかわらず、ルーンさんに尋ねてしまう。


「ルーンさん達はこれからどうされるんですか?」


「我らか? 我らなら今までと変わらぬ。多少のルールは変えていくつもりだが、基本的にはもっと強くなるための訓練に励むのみだ。だが……」


 ルーンさんはそこで言葉を切り、優しげに目を細めて口角を上げた。


「亜人界への襲撃は止めようと思う」


「えっ⁉︎ 本当ですか⁉︎」


 驚いて聞き返す私の横で、誠さんも息を呑んでいる。


「ああ、イアン達には色々と助けてもらった恩もある。確かに、お父様____先代を殺されたことは悲しいが、いつまでも根に持っていたって仕方がないからな。受け入れて前に進もうと思う。その方が、お互いにとっても良いだろうしな」


「そうですか……。ありがとうございます!」


 私が頭を下げると、ルーンさんがまた不思議そうに尋ねてきた。


「な、何故ユキが礼を言うのだ?」


 ルーンさんの疑問は尤もだった。今までずっと奇襲を受けてきたイアンさん達がお礼を言うならともかく、人間の私が言うのは明らかにおかしい。


 反射的に言ってしまったお礼だけど、何とか弁明も兼ねて口を開く。


「えっと、私の願いだったんです。天界と亜人界の争いが無くなれば良いなっていうのが」


 私が自分の頬を指で掻きながら言うと、ルーンさんは顔をほころばせた。


「そうか。ならば、ユキの願いも叶えられて一石三鳥だな」


「はい!」


 私がルーンさんの言葉に頷いたところで応接室のドアが開き、フェルミナさんが入ってきた。


「お待たせしました」


 ____灰色の剣を持って。


「フェルミナさん、それ……」


「グリン様がお使いになっていた剣です。持ち主は消滅しても、武器などの物は消滅しませんから、これを形見……もとより、お墓、というものに致しましょう」


「ああ、そうだな」


 フェルミナさんの言葉に、ルーンさんも賛同する。勿論、私や誠さんが異論を唱えるなんてこともない。


 それから、王宮の脇にある、コンクリートが剥げた砂山の上にグリンさんの灰色の剣を突き刺し、私はその側に菊の花束を供えて両手を合わせ、瞑目したのだった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 グリンさんのお墓参りを終えて、私と誠さんが魔法陣でVEOの基地に戻ってくると、そこには金髪を逆立てた少年が居た。


「えっ、藤本(ふじもと)くん⁉︎」


「んだよ」


 私を見るや否や、不機嫌そうに眉を寄せる藤本くん。私のクラスメイトであり、誠さんの弟でもある彼。私も結構な回数、この基地に来たけど、藤本くんを見かけたことは一度もなかったはずだ。


「な、何で藤本くんがVEOの基地に……」


「兄貴に言われたからに決まってんだろが」


「剛も春で高校二年になることだし、そろそろ本格的にVEOの訓練を受けてもらおうと思ってな」


 腰に手を当て、どこか誇らしげな誠さんをチラリと見上げてから、藤本くんは『フン』と鼻を鳴らしてどこかに行ってしまった。


「あ、忘れるところだった。(ゆき)


「は、はい!」


 藤本くんが出て行った部屋のドアを呆然と見つめていた矢先、誠さんに呼ばれて慌てて振り向く。そんな私に三枚の掌サイズの紙が手渡された。


 何だろう、と思って誠さんを見上げると、


「招待状だ。明後日、亜人界でイアン達の戴冠式があるらしい。お前と風馬(ふうま)亜子(あこ)の分も貰ってきたから渡しておくぞ」


「ありがとうございます。って、イアンさんの戴冠式ですか⁉︎」


「ああ、俺も詳しくはよく分からんが、ヴァンもパイアもあいつも……三人ともが戴冠式に出席するらしくてな」


 そ、そうなんだ……。ルーンさんも色々と天界の決まりを変えていくって言ってたし、吸血鬼領も新しくなるのかな。


「分かりました、ありがとうございます、誠さん!」


 初めての戴冠式にワクワクしながらも、私は誠さんに頭を下げた。

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