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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第277話 悔しさを胸に

 その日、私は皆と一緒にグリンさんの廃墟に攻め込む準備をしていた。攻め込むのは私達全員だ。


 人間界サイドは、私、風馬(ふうま)くん、亜子(あこ)ちゃん、(まこと)さん。


 亜人界・吸血鬼領サイドは、イアンさん、キルちゃん、レオくん、ミリアさん、サレムさん、スピリアちゃん。


 亜人界・氷結鬼領サイドは、ルミレーヌ様、グレース。


 天界サイドは、ルーンさん、フェルミナさん、フォレス、ウォル。


 総勢十六名で、いよいよグリンさんの所に攻め込むのだ。


 今の私は『ルミ』の能力(ちから)を返してもらっているから人間と氷結鬼が融合した姿だし、風馬くんは神様の使いらしいし、亜子ちゃんは実質的に亜人だけど、住んでる世界別に仕分けしたらってことで、この区別になった。


 王宮に寄ってヴァンさんとパイアさんに最終決戦のことを伝えてから、私達はグリンさんの廃墟に向かう。廃墟にはウィスカーさんも居るはずだ。


 __そう、思ってたのに。


「ウィスカー……さん……?」


 丸くて小さなガラス玉が、パリンと音を立てて割れた音が聞こえた。消滅したことがはっきりと分かった。黒髭を生やした吸血鬼が魂の核に姿を変えて。


「やぁ、皆お揃いで。ようこそ、歓迎するよ」


 手を広げ、いつものような笑みを浮かべる銀髪の天使を見て、イアンさんが拳を震わせる。勿論、怒りを露にしているのは他の鬼衛隊の皆も同じだ。


「グリン……お前……!」


 怒りを向けられているにも拘わらず、銀髪の天使__グリン・エンジェラは手を合わせた。


「あっ、そうだ! ()()()なら()()()けど、悪く思わないでね? 必要とされなくなった時点で死んだようなものだし」


 分かっていたことだった。この目で見た光景だった。


 それでもグリンさんは、敢えて口に出す。まるで、はっきりとウィスカーさんの消滅を思い知らせるかのように。現実を突きつける。


「ふざけるな……! よくも隊長を!」


「イアン、落ち着け。情に振り回されるな」


 片足を踏み出し、剣を抜いてグリンさんへ迫っていこうとするイアンさんの肩を引き、誠さんが言う。


「くっ……!」


 ハッと我に返ったイアンさんは、悔しそうに歯を噛み締めた。


 本当なら今すぐにでもグリンさんを倒したかっただろう。かつての上司の無念を晴らしたかっただろう。


 でもこの行動は『作戦』にない。ウィスカーさんが消滅すること自体、想定外だったのだから当然だけど。


 作戦__グリンさんの廃墟に攻め込むと決めた時、イアンさんから提案されたものだ。


 既に鬼衛隊、使い手五人、氷結鬼二人、天使二人は、先導を切ってグリンさんの攻撃を行う。


 なお、ルーンさんの強化は常に風馬くんが行う。


 その間風馬くんが無防備になってしまうため、そこを人間界サイド__私と誠さん、亜子(あこ)ちゃんで守るというものだ。


 要は、防御が人間界サイドの役目。攻撃が亜人界サイドと天界サイドの役目、というわけだ。


 イアンさんの悔しさを嘲笑うように、グリンさんは小首をかしげる。


「来てくれて助かったよ。ちょうど余もぶっ潰したいと思ってたんだ。特にルーンと()()()をね」


 その視線は、ルーンさんと風馬くんを射抜いていた。私は風馬くんの前に立ち、グリンさんに向かって叫ぶ。


「そんなこと絶対にさせません! 風馬くんは私が守ります!」


(ゆき)……」


 不満そうなグリンさんと、驚きと喜びが混じった声を漏らす風馬くん。


「約束したでしょ? ちゃんと守るって」


 私が風馬くんを守り、風馬くんが私を守る。両思いの恋人として、お互いを守るのだと約束した。


「ありがとう」


 風馬くんの言葉に私が頷くと、隣のイアンさんが大きく深呼吸をした。乱れた気持ちを振り払うように。


「よし、じゃあ()()通りに行こう! 皆!」


 イアンさんのかけ声を合図に、皆が飛び出していく。


「【破滅(アーテ・)(ハンマー)】」


 悠然と、グリンさんは丸太のようなハンマーを廃墟の地面に叩きつけた。


 でも、私達が地震に踊らされることはなかった。多少の揺れは感じるけど、動けなくなるほどではない。


「【稲妻(ライトニング)】!」


 雷魔法の詠唱。サレムさんが割れる地面を雷で押さえつけ、『縦』の揺れが起こらないようにしてくれたのだ。


「【(ファイヤー・)(トルネード)】!」


「【(バイン・)双剣(ソーズ)】!」


「【(ウォーター・)(アロー)】!」


「【神聖(セイクリッド・)(スピアー)】!」


 炎の使い手・レオくん、草の使い手・フォレス、水の使い手・ウォル、聖の使い手・スピリアちゃんが一斉に技を繰り出していく。


 イアンさん達も地面を踏み込み、駆け出していった。


 相変わらずハンマーでそれらを弾いていくグリンさんだけど、今までの余裕そうな笑みは消えている。


 それを見て、ルーンさんが風馬くんを振り返った。


「フウマ、頼む」


「はい! 【魔術文字(ルーン)太陽(シゲル)】!」


 風馬くんが詠唱するや否や、ルーンさんの純白の剣が黄金に輝き出す。それが風馬くんの能力(ちから)__ルーンさんの、太陽神の力を高める魔法だった。


 ルーンさんの技を強化している間、当然ながら風馬くんが他の魔法を使うことはできない。だから私、亜子ちゃん、誠さんが風馬くんの周りに立って、彼を危険から守る。


 尤も、グリンさんの相手は皆がしてくれているから、そこまでの危険性はないはずだけど。それでもグリンさんは、最初にルーンさんと風馬くんに憎しみの目を向けていた。


 風馬くんが狙われる可能性は、充分に考えられる。


 黄金の光を放つ剣を手に、カッと目を見開いたルーンさんは、フェルミナさんと共にグリンさんへと走っていく。


 最初にルーンさんが近距離で剣を交え、グリンさんの方に生まれた隙をフェルミナさんの銃撃で突いていく、という戦法は変わらないようだ。


「【太陽神(サンゴッド・)魔術文字(ルーン)】!」


「【月光(ムーンライト・)銃撃(バースト)】!」


 ルーンさんとフェルミナさんは詠唱し、グリンさんへ技を繰り出していった。

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