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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第269話 両思いの二人

 私と風馬(ふうま)くんは真っ暗闇のブラックホールの中を進んでいた。自動的に吸い込まれたグリンさんとイアンさんを探さないと、決着のつけようがない。


「ねぇ、風馬くん。本当に大丈夫なの? グリンさんの相手なら、一人より二人でやった方が良いんじゃ……」


 やっぱり不安だ。風馬くんも人間の時とは姿が違っているけど。


 いつもの黒髪は薄い黄色が混じったような白髪になり、纏っている衣装も神様を彷彿とさせるような全身真っ白のもの。おまけに背中からは、ペガサスのような大きくて長く白い羽が生えている。


 上下左右がほとんど分からない奇妙な感覚の中、それでもこのブラックホールの中を進むことができるのは、間違いなく風馬くんの羽のおかげだ。


「二人でグリンの相手をしたら、イアンさんを元に戻すのが遅れるだろ?」


「で、でも、私、風馬くんに傷ついてほしくない……!」


村瀬(むらせ)……」


 私が風馬くんの手をギュッと握ると、風馬くんはにこりと微笑んだ。


「俺は大丈夫だよ。何か俺、神様の使いみたいな存在らしいから」


 自分でもまだ信じ切れていないのか、風馬くんは少し引きつったような笑みを浮かべる。


 風馬くんが人間じゃなくて、神という存在から地上に遣わされた使いのようなヒトだということについては、疑いの余地がない。だってごく普通に産み落とされた人間が、天使の剣であれだけの技を引き出せるはずがないから。


 ルーンさんの純白の剣であんなに強力な技を出し、なおかつルーンさんの技も新しいものに変えて、ルーンさんとフェルミナさんの能力(ちから)も増幅させた。


 そんなことができるのは、人間じゃなくて神様のような存在だけだ。


「嫌だ……怖いよ……」


 それでも怖い。もし風馬くんがグリンさんに勝てなかったら、風馬くんは……。


「村瀬、今は目の前のことに集中しよう。ここまで来たからには、もう引き返せないんだ」


 私の手を包み込むように上から握りしめ、風馬くんは真剣な表情で言う。


「分かってる……分かってるんだけど……」


 でも……。この胸に渦巻いている、今まで感じたことのない痛みは……。この理由は……きっと……!


「風馬くん、私、風馬くんが好きなの。愛してるの。だから絶対、傷ついてほしくないの」


 私は風馬くんの目を見つめ、思い切って告白した。


 夏に私の高校に転校してきた風馬くんは、確かに最初から誰もが唸るほどのイケメンだった。それだけに黄色い歓声をあげて寄ってくる女子も居たし、クラスを超えて人気はあったと思う。


 でも私が惹かれたのは、そんな外見だけじゃない。確かに風馬くんはカッコいいし、私だって何回もキュンキュンさせられた。


 風馬くんは人気者だ。今までも今も変わらずずっと。だからこそ、こんな私に話しかけてくれて、友達になってくれるなんて夢にも思っていなかった。


 夏合宿で同じ班になって、スピリアちゃんを見つけて二人で匿って……。こんなにも濃い時間を一緒に過ごせるなんて、想像もしていなかったことだ。


 でもそれは実現した。受身体制でずっと待っていただけの私でも、風馬くんは優しく手を差し伸べてくれた。だから、私も自分からどんどん風馬くんに歩み寄ることができた。受身体制ではなく、積極的に。


 ルーンさんと話しているところを目撃された時はこの世の終わりだと思ったけど、理由と事情を話したら驚くほどすぐに理解してくれた。理解するだけにとどまらず、風馬くんはちゃんと私に協力してくれた。


 そんな信じられないほど優しい性格を風馬くんが持っていた理由は、今ならはっきりと分かる。風馬くんが神様から遣わされた存在だから。包み込むほどの愛を振りまき、なおかつ自分もその愛を受けることが出来る、そんな存在だったからだ。


 でも風馬くんが人間じゃなかったと知ったところで、私の気持ちは揺るがない。私だって元々は氷結鬼だし。


 信じられないほどの優しい性格も、トマトが苦手で食べられないところも、全部引っくるめて風馬くんが愛おしい。そして大好きだ。ずっと傍に居たいし、風馬くんにもずっと私の傍に居てほしい。


 この気持ちが、『好き』で『愛してる』ってことなんだ。


「良かった。じゃあ俺達、両思いじゃん」


 風馬くんは興奮気味に言って、眩しいほどの笑顔を見せてくれた。


「……え?」


「直接告白の返事をもらえた……わけじゃないけど、俺もだよ。俺も村瀬のことが……(ゆき)のことが大好きだ」


 風馬くんは頬を赤らめて照れ笑いをする。そんな彼の発言に、私は驚きと興奮を隠せなかった。


「風馬くん……! い、今、名前で……。私のこと、下の名前で呼んでくれた……! 雪って……!」


「ああ、うん。晴れて両思いになったんだし、良いかなって思って」


「勿論だよ、風馬くん! これからもずっと一緒に居たい!」


 私が両手で風馬くんの両手を握り締めると、風馬くんも賛同してくれるみたいに強く握り返してくれた。そして、表情をキリッと引き締める。


「でも、だからこそ、早くこの戦いを終わらせて、二人で世界を平和にしたい。一緒に頑張ろう、雪」


「……うん、分かった! 約束だよ、風馬くん。絶対に生きて帰ろう!」


「勿論。俺は簡単に死なないし、雪のことも死なせない。だって俺達、両思いだもんな」


「うん! 私も、簡単に死なないし、風馬くんのことも死なせたりしないよ!」


 私が力強く宣言すると、風馬くんは意気込むように言った。


「よし、決まりだ。雪のおかげで勇気が湧いてきた。ありがとな」


「私も。精一杯頑張るから!」


 真っ暗な空間の中、私と風馬くんは地面に足をついた。どうやらブラックホールの中はブリス陛下が作ってくれただけあって、戦いやすいように地面があるみたいだ。


 グリンさんと怪物化したイアンさん。二人と向き合って、私は改めて覚悟を決めた。


 ____絶対にイアンさんを元に戻して、グリンさんを私達の手で倒し、世界を平和にする、と。

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