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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第268話 太陽神・魔術文字

「「はあああぁぁぁっ‼︎」」


 ルーンさんとフェルミナさんは、声をあげながらグリンさんに向かって突撃していった。

 ルーンさんは純白の剣を振りかぶり、フェルミナさんは黒い銃で的確にグリンさんの急所を突いていく。


「へぇ、やるね。吃驚仰天(きっきょうぎょうてん)。驚きだよ。そこまでそなた達が噛み付いてくるなんて……。余もやっと本気を出せる」


「フウマに負けていたくせに、よくそんな軽口を叩けるな」


 ルーンさんに言われて、グリンさんは頬を緩めた。ルーンさんの剣撃を避けているその隙をついて、フェルミナさんが銃を発砲するので、決定打にはなっていないものの、その身なりはかなり乱れている。


 銃弾がかすめた頬から血がほとばしり、絹のような銀髪が何本も撃ち抜かれた。一応鎧も身に付けてはいるけど、鎧ではない部分はルーンさんの剣によって切られているので、あまりにも無惨な姿になっていた。


「ちょっと気を緩めていただけさ。でもルーンやフェルミナには余裕で勝てるよ?」


「それはどうかな!」


 ルーンさんは剣の柄を両手で握りしめて持ち上げ、天を仰いだ。


「神よ、我に力を!」


 ルーンさんが叫んだ瞬間、雲の切れ間から光が差し込み、その全てが純白の剣に吸収されるように集まっていった。風が天兵長の白髪を美しくたなびかせ、太陽の光はスポットライトのように彼女を照らす。


 その姿を前にして、グリンさんは目を見張った。


「なっ! まさか本当に新しい力を得ていたのか……!」


「【魔術文字(ルーン)太陽(シゲル)】!」


 そこへさらに風馬(ふうま)くんが詠唱を重ねる。すると、ルーンさんを照らす太陽の光が一段と強くなった。


「……どうやら余はみくびりすぎたみたいだね」


 風馬くんの更なる詠唱の効力を、ルーンさんを照らす太陽の光が強くなった理由を、グリンさんは瞬時に察したのだろう。冷や汗をかきつつも笑みを浮かべ、身を屈めて丸太のようなハンマーを構えた。いつもの余裕そうな笑みは引っ込んでいて、表情も引き締まっている。


「ルーン、いける?」


「勿論だ! 一気にケリをつける!」


 自分の横に並んだフェルミナさんを見やり、ルーンさんは声高に詠唱した。


「【太陽神(サンゴッド)魔術文字(ルーン)】!」


 天に向けた切っ先から柄に至るまで、全てが眩しいほどの黄金の輝きに包まれる。剣の刃とルーンさんの足元に出現したのは、金色の魔法陣だった。


 ルーンさんにあわせて、フェルミナさんも黒い銃を構えて詠唱する。


「【月光(ムーンライト・)銃撃(バースト)】!」


 詠唱とともにまず最初に飛び出したのは、フェルミナさんが放った何発もの弾丸だった。


「【破滅(アーテ・)(ハンマー)】!」


 グリンさんも負けじと声を張り上げ、ハンマーでその弾丸をいともたやすく打ち砕く。


「ふん、何だ、大したことないじゃな____ぐっ!」


 フェルミナさんの攻撃を鼻で笑い、こんなものかと余裕そうな笑みを浮かべたグリンさんが、突如黄金の切り跡に吹き飛ばされる。その主は勿論、新たな技を手に入れたルーンさんだ。


「【太陽神(サンゴッド)魔術文字(ルーン)】!」


 このまま押し切ってとどめを刺すべく、ルーンさんはもう一度詠唱。振りかぶった黄金の剣を一気に振り下ろし、グリンさんに剣撃をぶつけた。


「ぐわああああぁぁぁぁっ‼︎」


 迫るスピードが速すぎて、グリンさんがハンマーを構え直すその前に彼の身体をいとも簡単に吹き飛ばすことになったルーンさんの剣撃。


 グリンさんは声をあげながら吹き飛び、やがて地面に何度も体を打ちつけながら転がっていった。さっきはそれでも奇妙な笑い声をあげて起き上がったけど、今回は相当なダメージを負ったようで、そんな気配はしない。


 ルーンさんとフェルミナさんはホッと息を吐くと、向かい合って手を掲げ、それをパチンと鳴らした。

 そのままルーンさんは風馬くんに向き直って膝をつくと、頭を下げて言った。


「子に力を与えし我が神よ、我、天兵長ルーン・エンジェラに新たな力を与えて頂けたこと、光栄に思います」


「る、ルーンさん!?」


「神への挨拶だ。気にするな」


 ルーンさんは驚く風馬くんに向かって笑みを浮かべた。


「く、くそっ……! 余が……あいつに……よりによって、余の居場所を奪ってきた奴に……負けるなんて……!」


 起き上がる気力も、体の一部さえ動かす気力も残っていないのか、ただ発する声音に悔しさをにじませるグリンさん。


「よし、今だ!」


 それを好機と見たのか、背後から声があがった。


「ブリス陛下⁉︎」


 私が振り返ると、そこには薄い髭を生やしたブリス陛下が立っていた。ブリス陛下はグリンさんや、その少し遠くで低い声で唸って威嚇している怪物化したイアンさん、私と風馬くんを見やって、


「今からグリン・エンジェラ、イアン、ユキ、フウマをブラックホールに転送する! フウマはグリンを、ユキはイアンを頼む!」


「はい!」


「え、えっと……」


 ブリス陛下の言葉に風馬くんはすぐに返事をしたけど、私は何のことか分からなくて困ってしまった。すると、風馬くんが優しく声をかけてくれる。


「大丈夫だよ、村瀬(むらせ)。二人でグリンを倒してイアンさんを元に戻そう」


 なるほど、ブリス陛下が作ってくださるブラックホールの中でグリンさんを倒して、イアンさんも元に戻すってことか。そのためにグリンさんの相手を風馬くん、イアンさんの相手を私が、それぞれ分担して行う、と……。


「……準備は良いか?」


 ブリス陛下の言葉に、風馬くんは躊躇なく頷く。それを見て、私は覚悟を決めた。


 きっと風馬くんは鬼衛隊のログハウスに居る間、ブリス陛下と何らかのやり取りを交わして、既に決めていたんだろう。グリンさんを倒し、怪物化したイアンさんを元に戻す、その方法を。


「分かりました……。お願いします!」


 私の言葉に力強く頷いてくださったブリス陛下は、掌を空中に掲げて詠唱する。


「【漆黒(ブラック・)弾丸(バレット)】!」


 すると掌が向けられたその先に、二メートルほどの丸くて真っ黒の空間ができた。本物のブラックホールみたいにグルグルと渦巻いていて、中に入っただけで風圧に負けてしまいそうなほどの威力が、遠く離れた場所からでも感じられる。


 私は風馬くんと頷き合って、自動的に吸収されていくグリンさんやイアンさんを追うような形で、ブラックホールの中に踏み込んだ。

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