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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第253話 風馬の告白

亜子視点の三人称です!

 早朝。後藤(ごとう)亜子(あこ)が階段を降りて村瀬(むらせ)(ゆき)の元に向かおうとしていると、一階から声が聞こえてきた。


「レオさん、ちょっと良いですか」


 柊木(ひいらぎ)風馬(ふうま)の声だと思い、亜子は階段を降りる足を止めた。


 階段の柵からそっと一階の様子を窺っていると、レオが口を開いた。


「俺にさん付けはするな。どうした?」


 レオは椅子に座って、雪の左手を握っていた。おそらく、夜通し炎魔法で雪の手を温めていたのだろう。


「村瀬に、話しかけても良いですか?」


「ああ、良いぞ」


 レオが少し椅子をずらし、空いた隙間に椅子を持ってきて風馬も着席。


 するとレオがベッドに横たわる雪を見ながら、ふっと頬を緩めた。


「……ユキにも言ったことがある。最初に出会った時に、こいつも俺のことをさん付けしてきたんだ」


「そうなんですね」


「全く……お前達は似ているな」


 レオの言葉に、風馬は目を伏せた。


「後藤にも言われました。俺と村瀬はお似合いだって。あっ、亜子のことです」


「そうか……。でも俺もそう思うぞ」


 笑顔を浮かべつつ、首を横に振る風馬。


「俺と村瀬じゃ釣り合わないですよ。村瀬には今回みたいに誰かのために自分を犠牲に出来るくらい勇気があるのに、俺にはそんな勇気なんてない」


「少し外す。ユキにたくさん話しかけてやってくれ」


 レオは風馬と雪を二人きりにした方が良いと思ったのか、立ち上がって椅子を壁につけた。


「はい、分かりました」


 レオが階段を上ってくるとは分かっていたが、急に二階に駆け上がることも出来ずに、亜子はその場にしゃがんでしまう。


「アコ」


 案の定、階段を数段上ってきたレオに見つかってしまった。


 観念した亜子は、何事もなかったかのように普通に尋ねた。


「もしかして寝てないの?」


「別に平気だ。それよりフウマこそ寝てるのか?」


 階段の下を見下ろし、風馬を見つめるレオ。


「あたしが見た時はちゃんと寝てたわよ。雪が心配で早起きしたんじゃない?」


「お前もそうじゃないか」


「あたしは……別に」


 レオに言われて、亜子は思わず顔を背けた。


「あいつのところに行かなくて良いのか?」


「今は二人きりにしてあげたいのよ」


「そうか……。じゃあ、俺はちょっとだけ休む」


 レオは薄く微笑むと、階段を上っていった。


「やっぱり眠いんじゃない」


 亜子がふっと笑うと、一階で風馬が口を開いた。


「村瀬……ずっと言えなかったことがあるんだ」


 風馬は雪の左手を握ったまま、彼女の顔を見つめている。


「もっと早く言えば良かったって後悔してる。こんなことになるなんて思わなくてさ。本当、馬鹿だよな、俺」


 自嘲気味に笑ってから、風馬は言葉を紡いだ。


「イルミネーションに一緒に行った時、村瀬の私服初めて見たけど、すっげぇ可愛かったよ。村瀬は俺のことカッコいいって言ってくれたよな。恥ずかしかったけど、やっぱり嬉しい気持ちの方が大きかったんだ」


 亜子は勝手に二人をくっつけるべくイルミネーション観賞チケットを渡したが、おそらくその時に二人はお互いの私服を褒め合ったのだろう。


 雪と風馬のことだから、お互いに慌てながらの褒め合いになったのだろう、と亜子は推測する。そんな二人の情景も容易に想像できた。


「村瀬はすごいよな。夏合宿でスピリアがハイト達に襲われた時も真っ先に助けに行ってさ。今回もイアンさんを守るのに真っ先に前に立って」


 風馬は雪の脇腹を凍らせているルミレーヌの魔法を解かさないようにか、包帯が巻かれてある脇腹にそっと触れる。


「あいつに刺されて、痛かったよな。あいつ、村瀬のことを結構強めに刺してただろ? 俺、正直見てられなかったんだ。あんなに強く刺されてるのに、村瀬が頑張って立ってるの。胸がギュッて締め付けられて痛かった。村瀬の痛みに比べたら全然だけど」


 雪がグリンにさらに刺されているところは、亜子も雪の後ろ姿だけだったが、はっきりと目にした。


 グリンが最初雪を刺してしまった時に、『邪魔をするな』と言わんばかりの形相でさらに剣を差し込む力を籠めていたところも。


「今更だけどさ」


 そんな光景を思い出して亜子が嫌な気分になっていると、またも風馬の声が聞こえてきた。


「転校したばっかりの俺に話しかけてくれて、最初の友達になってくれてありがとうな。女子にキャーキャー言われるの、正直怖かったんだよ。村瀬も皆も俺のことイケメンって言ってくれるけど、俺はそんな風に思ったことないんだ。女子は皆俺の顔目当てで声かけてきたのに、村瀬だけちゃんと俺そのものと向き合ってくれたから、すっげぇ嬉しかったんだ」


 風馬の顔に、柔らかな微笑みが浮かぶ。


「村瀬と一緒に夏合宿満喫して、秋祭りも一緒にバザーやって、一緒にイルミネーション見に行って……。振り返ったら、俺の思い出は村瀬が絶対に居てくれるんだ。それが嬉しくて、心地良い。後藤にお似合いだって言われてさ、俺、改めて思ったんだ」


 風馬はそこで言葉を止めると、雪の手を握り直して言った。


「俺、村瀬が好きだ」


 雪の手をいとおしそうに握りしめながら、風馬は続ける。


「自分のことダメダメだって思ってるところも、頑張って努力してるところも、顔真っ赤にしながら俺と喋ってくれるところも、笑顔が可愛いところも、行動力があるところも、自分よりも他人を優先できるところも、優しくて他人思いなところも……。全部全部、村瀬の全部が好きなんだ」


 それから、そっと雪の頬に触れる風馬。


「だから早く起きてくれよ。俺だけじゃなくて、後藤もイアンさんも(まこと)さんも、皆が村瀬を待ってるから」


 亜子の位置からは見えなかったが、風馬と雪の距離が一気に近くなった気がして、亜子は反射的に立ち上がってしまう。


「ちょっと恥ずかしいけど、これだけもう一回言わせてくれ。……大好きだよ、雪」


 風馬がもう一度好意を伝えたところで、亜子の踏み出した足がミシッと床を鳴らしてしまう。


「うわっ!」


 当然ながら風馬に驚かれてしまい、亜子は『やってしまった』と思いつつ謝罪する。


「あ……ごめん」


「いや、俺の方こそ……。なぁ、後藤」


「ん?」


 風馬は顔を真っ赤にしながら、亜子の顔を覗き込んできた。


「さっきの、聞いてた?」


「……さっきのって?」


「聞いてないか……。いや、じゃあ良いんだ。ごめん。じゃあ俺、もうちょっと一休みしてくるよ」


 風馬は安心したように微笑むと、急ぎ足で階段を上っていった。


「分かったわ。お休みなさい」


 風馬が完全に二階に上がり終わったのを確認してから、亜子は今まで風馬が座っていた椅子に腰をかけた。


「ほら、雪。今の聞いてた? 一世一代のプロポーズよ? 顔真っ赤にしてビックリしてアワアワしないの? ……って、するわけないか」


 もしも雪が起きていて、ごく普通に風馬のプロポーズを受けていたら、そんな可愛い反応をしただろうな、と想像しつつ、亜子は雪の髪の毛を撫でた。


「早く起きなさいよ、皆待ってるんだから。グリンに何されたか分かんないけど、あいつの変なのなんてさっさと打ち破っちゃいなさい。雪なら出来るわよ」


 それから二人の氷結鬼を思い出し、亜子は最後に付け加えた。


「グレースもルミレーヌ様も、雪のために来てくれてるんだからね」

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