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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第247話 とどめの必殺技

「……えっ?」


 (かたき)を討ってあげるってどういうこと?


 私、もう亜子(あこ)ちゃんのことは許してるのに……。ていうか、むしろ私のために動いてくれてたって分かって、すごく感謝しているくらいなのに。


「ずっと苦しかったよね、ずっと辛かったよね。分かるよ、余もそうだったから」


 グリンさんが何を考えているのか、容易に想像がついた。


「や、やめてください……亜子ちゃんには手出ししないでください……!」


「何でだい? その亜人、そなたがひとりぼっちになった原因じゃないか」


 グリンさんが不思議そうに首を傾げている間に、ミリアさんが駆け寄ってこようとしていた。


 おそらく、亜子ちゃんに回復魔法を施してくれるつもりなのだろう。


「うっ!」


 と、こちらに向かって走っていたミリアさんが突然顔を歪めた。それと同時に、彼女の背中から赤黒い血が流れ出す。


 ミリアさんが地面に倒れると、その後ろのグリンさんが冷酷な瞳で彼女を見下ろしていた。


「余がユキと話してるんだけど。邪魔するとか、神経どうなってるの?」


 グリンさんは平然とミリアさんに近付くと、ドクドクと流血する彼女の背中を踏みつけた。


 そして、痛そうに呻くミリアさんの顔を覗き込み、口角を上げた。


「そうか、そなたか。『能力の低い役立たず』って」


 その言葉に、ミリアさんが息を呑む。


「ミリア!」


 グリンさんは自分の背後から聞こえてきた声に、鬱陶しそうに振り返った。


 彼の後ろに立っていたのは、ブリス陛下の秘書でありナース・ヴァンパイアとしてのミリアさんの先輩・テインさんだった。


「何だい、そなた。ああ、確か……! ナース・ヴァンパイアだっけ?」


 グリンさんの言葉が途中で止まったのは、テインさんが振るってきた鞭を飛んで避けたからだ。


 テインさんはグリンさんをミリアさんから離すことに成功すると、うつ伏せに倒れたミリアさんへと回復魔法を施した。


「【回復(リカバー・)(フローラル)】」


「も、申し訳ありません、先輩……!」


 温かい光に包まれながら、テインさんに謝罪するミリアさん。


「謝らないで。あんな攻撃、誰も予想できないわ」


 ミリアさんに言いながら、テインさんは首を巡らせてグリンさんを見据える。


「まさか、剣を振り切った風圧で肌を斬ってくるなんてね」


(わたくし)も自分が攻撃されるとは……不覚です……」


 言いながら、ミリアさんはゆっくりと身を起こす。それを見て、テインさんが特に驚く様子も見せずに尋ねた。


「起きられるの? 無理しない方が良いわよ」


「いえ……この状況では、アコ様は間違いなく戦力になります。早く彼女を治さないと……!」


「ミリアさん、無茶したら駄目ですよ!」


 身を起こし、這うようにして亜子ちゃんの元に寄っていくミリアさんに、私は思わず声をかけてしまった。


「大丈夫ですよ、ユキ様。ありがとうございます」


 ミリアさんは私に向かって微笑むと、詠唱をして亜子ちゃんの体を温かい光で包み込んだ。


「だから余がユキの(かたき)を討つって言ってるのに!」


 グリンさんがもう一度剣を振るう。すると、テインさんが素早く鞭を振り切った。


 パン! と風船が割れるような音がして、その後に強力な風が吹いてくる。


 二回目の風圧による攻撃は、テインさんの鞭によって防がれたみたいだ。


「種が分かれば、あとは簡単でございます。可愛い後輩を傷つけられたこの怒り、受けてごらんなさい!!」


 テインさんは鞭を構え、素早くグリンさんに迫っていった。


「何だよ……! ナース・ヴァンパイアは戦闘に不向きだっていう情報だったんだけど……!」


「どこでそんな情報を仕入れたのかわたくしには分かりませんが、情報の真偽はしっかりとご自分の目でお確かめになる方が良いでございますよ」


「うるさいなぁ!!」


 剣を振りかぶり、テインさんに向かって突き刺そうとするグリンさん。


 でも彼の隙を突くように、テインさんの鞭の嵐が襲いくる。


「だっ! いったいな! そなた、この余に痛い思いさせて良いと思ってるのか!?」


「既に二人……いえ、長期で見ればもっと多くの方々を傷付けてきたのに、よくそんな台詞を当然のように吐けますね」


 テインさんのあからさまに馬鹿にした口調に、グリンさんが声を荒げる。


「生意気な口を聞くな! この秘書風情が!!」


「ええ、仰る通り、わたくしはブリス陛下の秘書でございます。国王陛下の秘書ですから、それなりの腕は見込まれているのでございますよ、少なくともあなたよりはね!」


 言うが早いか、テインさんは鞭を何度も振るい、グリンさんの肌に傷をつけていく。


「ぐっ! く、くそっ……!」


「今だ、天兵長! 一緒にとどめを刺そう!」


「言われなくてもそのつもりだ!」


 今まで地面に伏していたイアンさんとルーンさんが立ち上がり、それぞれ剣を構える。


「覚悟しろ、グリン。貴様の暴動もここで終わりだ!」


 ルーンさんの言葉を合図に、二人はグリンさんに向かって必殺技を繰り出す。


「【暗黒(ダークネス・)(スパーダ)】!」


「【陽神(ヘリオス・)(ラーマ)】!」


 漆黒の剣でガードしながらも若干押され気味になり、グリンさんは悔しそうに歯軋りする。


「き、奇襲なんて卑怯じゃないか! 余は……余は、そなた達のことを想って色々とやってやろうとしてるのに!」


 グリンさんの叫びも虚しく、王宮皇太子・ヴァンさんと王女・パイアさんも立ち上がった。


「パイア、助太刀だ」


「はい、お兄様」


「「【二重(ダブル・)暗黒剣(ダークネス)】!!」」


 完全に技を受けたわけではないけど、お二人の攻撃によってさらに後退するグリンさん。


「よし、スピリア、俺達も」


「うゆ!」


 王宮組の最後の二人____サレムさんとスピリアちゃんもグリンさんへ技を繰り出す。


「【(サンダー・)(アタック)】!」


「【神聖(セイクリッド・)(スピアー)】!」


 さらに畳み掛けるように技を放ったのは、キルちゃんとレオくんだった。


「【殺戮(スローター・)短刀(ダガー)】!」


「【(ファイヤー・)(トルネード)】!」


 次々に襲いくる技に、グリンさんの周りが土埃で覆われて見えなくなった。


 でも、グリンさんが技を受けて痛がるような声も聞こえない。


 不審に思ったのか、イアンさんが私達を庇うように前に立ってくれる。


 ほとんど止めを刺すくらいの勢いで技が放たれていたから、ボコボコと上がる土煙もなかなか引いてくれない。


 それでもやがて、土煙は糸を引くようにしてどんどん薄れていった____。

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