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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第236話 甘々な時間は食堂で

 昼休み。私、風馬(ふうま)くん、亜子(あこ)ちゃんの三人は弁当を食べるために食堂に来ていた。


 色々とプライベートな話をするには、食堂はもってこいの場所なのだ。


「イルミネーション?」


「そうなの! 今度、亜子ちゃんと行くことになってね」


 私は亜子ちゃんから貰ったチケットを風馬くんに見せて、興奮ぎみに言った。


「へぇ、良いじゃん。いつなんだ?」


「えっと……確か___」


「今週の日曜日よ」


 私の代わりに、食堂のジュースのストローをすすりながら亜子ちゃんが言う。


「そうなのか。楽しんでくるんだぞ」


「うん!」


 私が頷くと、亜子ちゃんがボソボソと呟き始めた。


「あたしは別に行くつもりじゃなかったのよ? でも雪がせっかく誘ってくれたから」


「ありがとう。優しいね、亜子ちゃんは」


「なっ!? べ、別に……」


 亜子ちゃんは顔を真っ赤にして、拗ねたように小さく言った。


「どうせなら、雪と柊木(ひいらぎ)くんが行けば良いのよ」


「「えっ!?」」


 またも同時に驚きの声をあげてしまった私と風馬くんを指差して、


「ほら、びっくりする時もハモるくらい息ぴったりじゃない。お似合いだと思うなぁ」


「そ、それとこれとは話が違うと思うんだけど……」


 私が言うと、風馬くんもうんうんと頷いて、


「だ、だって、村瀬と後藤が一緒に行くんだろ? せっかくの約束を俺が邪魔しちゃうみたいで、何か気が引けるよ」


「でもあたし、寒いの苦手だし」


「亜子ちゃん、昨日は良いって言ってくれたのに」


 私がぼやいても構わず、亜子ちゃんはマイペースに言った。


「気が変わったー」


「えぇ……。どうしよう」


 私が迷っていると、風馬くんが亜子ちゃんに向かって怒ったように言った。


「後藤、子供じゃあるまいし、そんなわがまま言うなよ。村瀬が困るだろ?」


「だからあんたが一緒に行けば良いのよ」


「いや、だから俺は___」


「雪はどうなの?」


 再び抗議しようとした風馬くんを遮り、亜子ちゃんは私に尋ねてくる。


「えっ?」


「柊木くんと行くの、嫌?」


 私は慌てて首をブンブンと振った。


「ううん、嫌じゃない! むしろ、すっごく嬉しい!」


「ほら、本人がこう言ってるわよ?」


 風馬くんに向かって言う亜子ちゃんに、私は慌てて付け足す。


「あ、でも、だからって、亜子ちゃんとの約束をないがしろにしたいわけじゃないんだよ!? あくまでも風馬くんと一緒に行きたいかって質問に答えただけで___」


「そんなこと分かってるわよ。雪、色々細かいこと気にしすぎ」


 ピシャリと言い放たれて、思わず口をつぐんでしまう私。


「えっと、じゃあ、俺達で行くか? イルミネーション」


「本当に良いの? 亜子ちゃん」


 私が尋ねると、亜子ちゃんはニヤニヤとしながら、


「行ってきなさいよ。もうすぐホワイトクリスマスじゃない。その前借りってことで」


「それってカップル限定の話だろ?」


「か、カップル!?」


 風馬くんの言葉に、私は思わず叫んでしまう。


「えっ、どうした? 村瀬___」


 私に尋ねてきた風馬くんも、私と同じことを想像したみたいで、ポッと顔を赤くする。


「ほらほらー、行ってきなさいよ。来週、感想聞かせてよねー」


「いや、別にその……あの……」


 ニヤニヤが止まらない亜子ちゃんに、弁解しようとした時。


「亜子様ー」


「亜子様、今日の二番、一緒に行きましょうー!」


 食堂の入り口で、亜子ちゃんの取り巻きの女子達が亜子ちゃんを待っていた。


「あ、そういえば! 分かったわ! ちょっと待ってて!」


 亜子ちゃんは取り巻きの二人に向かって叫ぶと、補助カバンを肩にかけて立ち上がりつつ、


「そういうわけだから。あとはお二人で楽しんでー」


「あ、亜子ちゃんってば……」


 地味に冷やかす亜子ちゃんは、そのまま取り巻きの子達のところに行ってしまった。


「ありがと、タイミングバッチリ」


「「はい!!」」


 ちょっとよく分からないことを言いながら、三人は食堂から出て行った。


「後藤のやつ、俺達を冷やかしすぎて日直に遅れるとか。あいつも何だかんだ言って天然だよな」


「そ、そうだね」


 すっかり二人きりになってしまったテーブルで、私は思い切って尋ねてみる。


「え、えっと、本当に私達で行く? イルミネーション」


「後藤があんな感じなんだったら、何回言っても無駄だろうけど。本当に俺で良いのか? 村瀬。せっかく後藤と約束してたのに」


「だ、大丈夫! 私は亜子ちゃんとでも風馬くんとでも、すっごく嬉しいから!」


 私は両手拳を握って、一生懸命言ってから、


「それに、元々は亜子ちゃんが貰ってきたチケットだったから、藤本くんとか誘って行けば良いのにって言ったんだけど……」


「嫌って言ったんだろ? 今ので何となく察した」


「うん。一緒に戦ったことがあるだけで、あまり仲良くないから藤本くんの方から断られちゃうって」


「藤本、何だかんだ言って結構優しいけどなぁ」


 そこまで言ってから、風馬くんはハッとしたように私を見た。


「あっ、ごめん。何故か村瀬には塩対応って感じだけど」


 藤本くんが私は当たりが強いことを気にかけてくれたみたい。


 私は首を横に振って、風馬くんに同意した。


「私もあの二人はお似合いだと思うんだけどなぁ」


「後藤は、俺達がお似合いだって言うしな……」


「私と風馬くんなんて全然釣り合わないよ。風馬くんにはもっと可愛い女の子が必要だよ。私なんかじゃなくて」


「何言ってるんだよ……村瀬だって可愛いじゃんか」


 ボソッと声を漏らす風馬くん。


「……えっ!?」


 私が驚いて彼を見上げると、風馬くんは口を片手で覆いつつ少し顔を背けて、


「俺は、嬉しかったけどな。村瀬とお似合いって言ってもらえて」


 風馬くんの言葉に嬉しくなって、私も慌てて本音を口にする。


「わ、私も! 私も……すごく嬉しかった。風馬くん、すごくカッコいいし、私にも優しくしてくれるし、いざとなったら頼りになるし、良いところしかないから!」


「褒めすぎだよ。俺だってそんな完璧な人間じゃないのにさ」


「少なくとも、私はそう思ってるよ!」


「そんなこと言うなら、村瀬だってそうじゃんか」


「えっ!?」


 風馬くんはより一層顔を赤らめながら、


「村瀬は可愛いし、相手に対してものすごい気配りが出来て優しいし、考えるよりも先に動けるし、自分がピンチになっても逃げないし……。良いところばっかりだろ」


「わ、私、そんな完璧な人間じゃ___」


「さっきのお返しだよ。俺だって同じだ。自分が完璧な奴だなんて思ってない」


「う、うん……」


 そうだよね。ちょっと悪いことしちゃったなぁ。


「ま、まぁ、でも、村瀬に褒め殺しにされたことは嬉しいけど」


「わ、私も……」


 二人で顔を真っ赤にしながら黙り込み、少し気まずい雰囲気に。


 それを破るように、風馬くんが勢いよく立ち上がって時計を指差した。


「とりあえず、もう教室戻ろうぜ。昼休みももうすぐ終わりだし」


「そ、そうだね」


 食堂の壁にかけられた時計を見ると、予鈴が鳴る時間まであと十分というところだった。


 互いに顔を真っ赤にしつつ、私達はいそいそと教室に戻ったのだった。

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