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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第229話 援軍の吸血鬼

 声のした方に何とか首を傾けて声の主を確認し、私は思わず息を呑んだ。


 水色のウェーブがかった長髪を風になびかせ、自身の身長の二倍はあるだろう長さの槍を片手に立つ小さな吸血鬼。


 その少女の横に立つのは、拳銃を持つ青い短髪の吸血鬼。


 さらに二人の両側に立っているのは、王宮の皇太子と王女だった。


 黒いショートボブの吸血鬼と、黒い長髪を頭の上の方でポニーテールに結んだ吸血鬼。


 その四人が、横一列に並んで立っていた。


「スピリアちゃん……」


 彼女だけじゃない。サレムさんやヴァンさん、パイアさんも居る。


 この非常事態を打破するために、王宮から駆けつけてくれたのだろう。


「ユキ! 今助けるリ!」


「天使グリン・エンジェラ。ユキを解放してほしい」


 叫ぶスピリアちゃんの横で、ヴァンさんがグリンさんに向かって言う。


 すると、グリンさんは訝しげに眉をひそめた。


「意味が分からない。そなた達に頼まれる筋合いはないよ。それに、もし余に突っかかってきたらこの人間の骨をへし折___」


「【神聖槍セイクリッド・スピアー】!」


「【雷撃(サンダー・アタック)】!」


 グリンさんが最後まで言い切るより早く、金色の槍の形をした魔法と雷が彼を襲った。


 グリンさんはすぐにハンマーで打ち消したけど。


 でも、何かが違う。


 いつもは音なんてしないのに、スピリアちゃんとサレムさんの技を打ち消した瞬間に、グリンさんのハンマーがメリッと音を立てたのだ。


 グリンさんもその異変に気付いたのか、振り切ったハンマーを見てからスピリアちゃんとサレムさんに視線を移す。


「もしかして、そなた達も使い手?」


「リ? 『ツカイテ』って何リ?」


 グリンさんに問われて首をかしげるスピリアちゃんに、サレムさんが説明をする。


「レオくんみたいに、皆よりもずば抜けた強い技を使うことができるヒトのことだよ。ひょっとすると、日頃の特訓の成果かな?」


「へぇー! すごいリ! お兄ちゃん、やったリ!」


「ああ、もっと頑張るぞ!」


「うゆ!」


 ホーリー・ヴァンパイアの兄妹は互いに微笑みを交わすと、私とグリンさんの方へと走ってくる。


「パイア、俺達も行くぞ」


「はい、お兄様」


 ヴァンさんとパイアさんはそれぞれ真っ黒の大太刀と太刀を構え、


「「【二重暗黒剣ダブル・ダークネス】!!」」


 それに追い討ちをかけるように、スピリアちゃんとサレムさんも再び必殺技を繰り出す。


「【神聖槍セイクリッド・スピアー】!」


「【雷撃(サンダー・アタック)】!」


 でも、グリンさんはそれらを全てハンマーで打ち消す。


「しつこいなぁ! 【破滅鎚(アーテ・ハンマー)】!」


 地面を力強く叩き、縦に揺れる地震を引き起こそうとするグリンさん。


 せっかく助けに来てくれた王宮の四人までも、その餌食になってしまう。


「【稲妻(ライトニング)】!」


 ___と思ったけど、そうはならなかった。


 サレムさんがグリンさんに被せるように詠唱すると、急に空に黒い雨雲が出現した。


 そこから真っ白の稲妻が地面に向かって降り注ぐ。


「なっ……!?」


 グリンさんが信じられないとばかりに息を呑んだ。


 私の目の前に広がっていたのは、亀裂が入って縦に揺れる地面ではなかった。


 稲妻によって押さえつけられて、縦の揺れにも少しも動じない地面だったのだ。


 よって、四人も地震の揺れの被害に遭っていない。


「今だ! 皆、もう一度仕掛けるぞ!」


 好機の到来を、亜人界の皇太子は逃さない。


「「はい!」」


「うゆ! 【神聖槍セイクリッド・スピアー】!」


 サレムさんとパイアさん、そしてスピリアちゃんがそれに応え、それぞれ技を繰り出していく。


 それも、一方からのみではない。


 グリンさんと私を囲むように、四方八方に立ってスタンバイしている。


 そして___必殺技の嵐が巻き起こった。


「【雷撃(サンダー・アタック)】!」


「「【二重暗黒剣ダブル・ダークネス】!!」」


 ヴァンさんとパイアさんは、ブリス陛下とテインさんと同じような合体技だ。


 四方八方から同時に技を受けたグリンさんには、人質状態の私を盾にする隙もハンマーを振り上げる隙も与えられなかった。


 グリンさんが怯んだことで私を縛っていた彼の羽が緩み、おまけに彼が体をのけ反らせたことで、私はそのまま投げ出される形になった。


「ユキ!」


「スピ……リア……ちゃん……!」


 強く締め付けられて息苦しい感覚から一気に解放され、しかも勢いよく投げ出されてしまったから、嫌でも空気が体内に入ってくる。


 そんな状況でますます呼吸しづらくなってしまい、地面へ落下しようとしていた私を、私よりも体の小さいスピリアちゃんが受け止めてくれた。


「き、貴様ら___っ!」


 グリンさんは人質を奪われ、なおかつ自分の最大の防御も効かなかったため、歯ぎしりしながら悔しさを露にしていた。


「天使グリン・エンジェラ」


 空中で私を受け止め、そのまま地面へ着地したスピリアちゃんと彼女に抱かれている(というよりも体に密着されている、に近い)私を守るように、サレムさん、パイアさん、ヴァンさんが立ってくれた。


 そして、ヴァンさんはグリンさんへ静かに厳しい言葉を投げ掛ける。


「あなたの行為は他界への侵略行為及び、他界の者への攻撃行為とみなされ、処罰される可能性がありますが」


「どうなさいますか? 天兵長ルーン・エンジェラ」


 続いて、パイアさんが天界における絶対的権限を持っている天兵長のルーンさんの方を向く。


「ま、待て! 待て! わ、分かった! もうこの人間には手出ししない! それで良いだろう!」


 グリンさんは慌てたように両手を突き出すと、それ以上は何も言わずに黒みがかった羽を広げて、瞬く間に空へと飛び去っていった。


「ユキ、大丈夫リ?」


 私が暫く空を仰いでいると、スピリアちゃんが黄色の瞳を潤ませた。


「うん、大丈夫だよ。助けてくれてありがとう、スピリアちゃん」


「うゆ!」


 ついに瞳から透き通った涙を長し、スピリアちゃんは力強く頷いた。


 グリンさんを相手に怖かったはずなのに、私のために頑張ってくれて……。


 感謝の気持ちで胸がいっぱいになりながら、私がスピリアちゃんと笑い合っていると、


「ユキ!」


 傷だらけのイアンさんや、キルちゃん、レオくん、ミリアさんが駆け寄ってくる。


「あっ、イアンさ___」


 大丈夫ですか? とか、戦ってくれてありがとうございました、とか、また怪我させちゃってごめんなさい、とか。


 色々な言葉を口にする前に、イアンさんは大きな腕で私をぎゅっと抱き締めてくれた。


「無事で良かった……! 本当に……良かった……!」

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