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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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第227話 割れる隠し球

 えっ、どういうこと?


 グリンさんがルーンさんの恋人!? 本気で言ってるの!? フォレス……。


 でも、ルーンさんは顔真っ赤にしてるし、嘘じゃないっぽい?


 すると、グリンさんが呆れたようなため息をついた。


「勝手なこと言わないでくれるかな。余達が付き合ってたのは昔の話だ。『元』恋人だよ」


 つ、付き合ってたこと認めた!


「フォレス……何てことを……」


 ルーンさんが両手で顔を覆い、横に居るフェルミナさんが苦笑する。


「恋人はな! お互い愛し合ってねーと駄目なんだよ! じゃなきゃ、とっとと別れろ!」


 グリンさんを何度も指差し、その手を横に振るうフォレスに、双子の弟・ウォルが言う。


「だからもう別れてるよ、フォレス……」


「ん? 何言ってんだオレ」


 急にフォレスはその場に硬直し、そして淡い緑色の髪を両手で掻きむしった。


「あー! こんなこと言うために来たんじゃねーんだよ! おい! ボスの『元』恋人!」


「せめて名前で呼んでほしいね」


 グリンさんの言葉に、訝しげに眉を寄せるフォレス。


「あん? じゃー名乗れよ!」


「フォレス、喧嘩売らないで。あとでボッコボッコにされるよ……」


 いつまでも喧嘩腰の兄といつまでも引き腰の弟を見据え、グリンさんは誇らしそうに名乗りをあげる。


「余はグリン・エンジェラ。やがて全知全能の神となる者だ」


 グリンさんの名乗りにも表情を変えることなく、むしろつまらなさそうにフォレスは口を開く。


「ふーん。よく分かんねーけど! ボスをぶっ倒しやがったことは許さねーぞ! なー! ウォル!」


「フォ、フォレス……!」


 一方、ウォルはいつグリンさんの機嫌が悪くなるのか、とても不安そうにしている。


「全く意味が分からない。そなた達は一体何がしたいんだ」


「おいこら! ヒトが宣戦布告してんの無視して羽伸ばしてんじゃねーよ!」


 呆れたように息を吐くグリンさんを指差し、フォレスは意気揚々と叫んだ。


 でも、グリンさんだって負けていない。青筋を立てながらフォレスに反抗する。


「邪魔はしないでもらいたいね!」


「オレの台詞だっつーの! ウォル! 行くぞ!」


 フォレスは双剣を構えると、一人でグリンさんの方へ走っていった。


「あっ、もう……! でも、やっと本来の目的のスタートラインに立てたから、ボクも頑張るか」


 双子の天使がここに来たのは、あくまでもルーンさんとフェルミナさんを助けるため。


 グリンさんに戦いを挑むことで、二人を助けられるなら。


 フォレスとウォルはそんな思いで居るのだろう。


「【蔓双剣(バイン・ソーズ)】!」


「【水矢(ウォーター・アロー)】!」


 二人は並んで走りながら、それぞれ必殺技を放った。


 しかし、グリンさんはそれを華麗に避けながら、


「使い手が二人も……。ふむ、これは厄介だね」


 すると、双剣を振り回していたフォレスの顔がパアッと輝く。


「よく分かったな! そーだぜ! オレが草の使い手だ! で、ウォルが水の使い手!」


「軽々しくバラすものじゃないってば……」


 弓矢を放ちながら、ウォルはまたも呆れ顔。


「【破滅鎚(アーテ・ハンマー)】」


 と、集中が逸れた二人を狙うようにグリンさんがハンマーを振り下ろした。


「うぉう! 何だ!?」


「き、急に地面が……」


 でも、フォレスとウォルは少し驚いてよろめいただけで、私達みたいに派手に打ちのめされることはなかった。


 その様子に、私だけではなくグリンさんも驚いたみたいだ。


「へぇー。吃驚仰天(きっきょうぎょうてん)。まだ生きてるんだ」


 目を丸くし、双子の天使を興味深げに見つめている。


「『揺らされたら即死』みたいにゆーんじゃねーよ」


「いや、でもあながち間違ってないよ。だって、あの人間も吸血鬼達も天兵長もフェルミナさんも、そのせいでこんなに傷だらけなんでしょ?」


「確かに、そーだな」


「ボク達も気を付けないと。いつか本気出してくるよ、天兵長の恋人さん___」


 ウォルが言いかけた直後、グリンさんが分かりやすく目を見開いてウォルを威圧する。


「ぐ、グリンさんが」


 すっかり萎縮してしまったウォルは、肩をすくめて慌てて言い直していた。


「んなもん関係ねーよ! 耐えればいーんだ、耐えれば!」


 フォレスは双剣を構え直すと、その蔓を伸ばしてグリンさんへと伸ばす。


「【蔓草(クライマー)】!」


 双剣を形作っていた茶色の蔓が、グリンさんの体に勢いよく巻きつく。


「ボスの仇だ!」


 フォレスは双剣を勢いよく振るうと、グリンさんを地面に振り下ろした。


「なるほど……やるじゃないか」


 少し痛そうな表情をしながら、グリンさんは笑みをこぼす。


 味を占めたフォレスは、地面に倒れたグリンさんへと近付くと、もう一度双剣を構える。


「【蔓双剣(バイン・ソーズ)】!」


「フォレス! 避けて!」


 フォレスが詠唱した直後、息を呑んだウォルの叫び声があがった。


「……【破滅鎚(アーテ・ハンマー)】」


 ウォルの声に振り返ったフォレスの体を、丸太のようなハンマーが打ちのめす。


 フォレスの体は勢いよく吹っ飛び、イアンさん達の家に激突した。


「うっ……ゲホッ! あーくそっ!」


 血を吐きながら、フォレスは悪態をつく。それでも、再び起き上がる気力は残っていないみたいだった。


「ふん、調子に乗るから痛い目を見る______」


 フォレスを嘲笑うグリンさんの頬に、ピッと一筋の線が入る。そして、そこから赤黒い血がほんのりと流れ出した。


「何の真似?」


 グリンさんは攻撃が来た方向___ウォルの方に鋭い視線を送った。


「こっちの台詞だ……! よくもフォレスを……!」


「すぐに頭に血が上るのは、隠し球達の悪いところだよね!」


 グリンさんはウォルに迫り、彼の腹部をめがけてハンマーを下から上へ振るう。


「ぐっ……!」


 咄嗟に反応したウォルは弓矢を身体の前へ。


 そのおかげで、グリンさんのハンマーはウォルのお腹を攻撃することなく、彼が防御に使った弓矢にぶつかった。


「無駄無駄」


 グリンさんはウォルを嘲笑うと、黒みがかった羽を生やして勢いよくはためかせた。


 疾風を浴びたウォルの体が、まるで埃を払うかのように簡単に飛ばされる。


「【破滅鎚(アーテ・ハンマー)】」


 地面に仰向けに倒れたウォルめがけて、グリンさんはハンマーを振り下ろす。


 地面に力強くぶつけられたそれは、やがて地面に亀裂を走らせる。その亀裂は、メキメキと音を立てながらウォルへと迫った。


「___!」


 声をあげることも体を動かすことも間に合わなかった。


 ウォルの体がハンマーによる揺れで打ち上げられ、勢いよく地面に墜落する。


 以前、天兵軍の隠し球であるかのように突然私達の前に姿を現した双子の天使。


 それぞれが使い手だという圧倒的な強さを持ち、イアンさん達鬼衛隊を粉砕した双子の天使。


 その彼らが、今、一人の天使によってこんなにも無残に倒されてしまった___。

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