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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第七章 堕天使編
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序章 始まりは報告から

第七章開幕です!

「……じゃあ、色々と教えてもらおうかな」


「は、はい、リーダー。分かりました……」


 中性的な声が言ってから、今度はすぐに男だと分かるほど低い声が、若干の怯えを含んだ声音で発せられる。


 後者の声は、少しだけしわがれていて前者の中性的な声の主よりも歳上であることが容易に推測できる。


 明確な場所は分からないが、とにかく光のない暗い所に二人は居た。


 お互いの正確な居場所や、立ち姿までも確認できない中での会話。


 そこへ、何かの開始を合図するかのように、窓から青白い月光が差し込んだ。


 その光のおかげで、ようやくお互いはお互いを認識することが出来た。


 椅子に腰かけているのは、ふわふわの銀髪を持つ、リーダーと呼ばれた人物。


 もう一方______平伏するかのように片膝を地面につけて尻を降ろしている人物の口元からは、立派に生えた髭が覗いていた。


 低い声で、髭が言った。


「イアン。現・鬼衛隊長で国王陛下の次男。使う技の属性は国王家代々と同じく『闇』です。技の名前は【暗黒剣(ダークネス・スパーダ)】。闇のオーラを存分に含んだ剣撃です」


 時折パラパラと紙をめくるような音がする。


 リーダーが手元の紙束をめくった音だ。


 彼の机の上には、資料とおぼしきものが置かれていた。


 そして何枚にも積み重なった紙束の一番上をめくると、その下には一枚の写真が添付されていた。


 写真の中の人物は、肩までつきそうな黒髪に優しげな赤い瞳をしている。


「なるほど、次は?」


 促され、髭はまた話し始めた。


 それに合わせるように、リーダーはまた紙をめくる。


 そこにあったのは、桃色の髪の少女の写真だった。


「キル。立ち位置としては鬼衛隊副隊長に当たります。目立った属性は判明しておりませんが、素早い剣撃を得意としております。技の名前は【剣光(ソード・フラッシュ)】と【殺戮短刀(スローター・ダガー)】。前者は素早く剣を振るう早技。後者は、一撃で相手の命を終わらせる必殺技となっております。……彼女の種族的にも、戦闘には特に向いているかと」


 報告を聞いているリーダーは、ふーんと少し唸ってから、


「このキルって子、種族は何だったっけ?」


「キラー・ヴァンパイアです」


 髭は、地面を向いて俯いたまま答える。


「へぇ、()()()()()()()か」


 途端に話の路線が大きくズレてしまう。


 リーダーにとっては何か取っ掛かりがあるような、結構大事そうなことだったのだが、髭の方は一刻も早くこの『報告』を終えたいのだろうか。


 低い声で、遠慮がちに尋ねた。


「リーダー、続けても?」


「ああ、どうぞ」


 リーダーから快い承認をもらってから、髭は少し咳払いをする。


「お次はレオ。使う技の属性は『炎』です。『炎の使い手』という異名も持ち合わせております。技の名前は【炎嵐ファイヤー・トルネード】。刃に炎を纏わせて一気に放出させるというものです」


 リーダーの手元にある資料には、四方八方へツンツンと跳ねた橙色の髪を持つ少年の写真がある。


 四方八方へツンツンと言っても、この人物に寝癖があるわけではない。言うなれば、天然パーマのようなものだ。


「……使い手か。へぇ」


 リーダーが興味深そうな声を出す。


「最後にミリア。ナース・ヴァンパイアに属しております。こちらもキルと同じで目立った属性は無し。技……というより回復魔法の名前は【回復華(リカバー・フローラル)】。金色の柔らかい光を使って仲間の体力を回復させ、傷なども完治させるというものです」


 髭はそこで言葉を切ってから、今まで一切上げていなかった顔を上げてリーダーを見た。


「先程も申し上げた通り、彼女は回復魔法を得意としておりますので、戦闘の際はお早めに。リーダー」


 言いにくそうに口ごもりかけながら、リーダーに注意喚起をする髭。


 リーダーはにっこりと笑ってから、


「そうだね、確かにこっちも厄介だ」


 厄介、と口に出していながらも、彼の顔にそれらしき感情は宿っていない。にこにこと気前の良い笑顔だけを浮かべている。


「以上かな?」


 リーダーに尋ねられて、髭は少しだけ顔を下げる。


「はっ!」


「よし、なら下がって良いよ」


「失礼致します」


 明らかに髭の方が年上に見えるのに、立場としてはリーダーの方が上のようだ。


 髭は大人しく従って頭を下げると、月光が差し込むだけの暗い場所から去っていった。


 バタンと閉まるドアの音を聞いてから、リーダーは静かに息を漏らした。


「なるほどなるほど」


 何枚にも重なった資料を持ち上げて、背もたれにもたれかかるようにのけ反る。


 月光に照らされて真っ白から青白に変わる資料を、特に何の感情も宿していない瞳で見つめた。


「想像以上に名優揃いみたいだ。一日千秋、待ち遠しいよ」


 リーダーは資料の中にある黒髪に赤い瞳の吸血鬼から視線を外し、椅子を引いて半回転させる。


 そして縦長の窓越しに眩しく光る満月を見上げると、


「______君達とは()()()()が出来そうだ」


 ここで初めて、唇を横に引いて笑みを作ったのだった。

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