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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第五章 氷結鬼編
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第102話 吸血鬼からの手紙

 藤本くんに投げつけられた一枚の手紙、そこには『吸血鬼より』と最後に書いてあった。


 吸血鬼ってどういうこと?


「お前、夏合宿の時にチビの吸血鬼のこと庇ってただろ。そいつからじゃないのか」


 藤本くんが教壇に立って私が持っている手紙を指差す。


「そういえばそんなことあったね」


「じゃ、村瀬に決まりだな」


「この学校で吸血鬼なんかと関わってるの、村瀬だけだもんね」


 周りの皆も勝手にこの手紙が私宛てだと決めてしまった。


「なぁ、勝手に決めるのは違うんじゃ……」


 風馬(ふうま)くんが席から立ち上がって皆に呼びかけたけど、


「柊木もそう思うよな」


 最後まで言い終わる前に藤本くんに遮られてしまった。


「……」


 同意を求められて、風馬くんは黙って藤本くんを睨むように見つめる。


「なあ?」


 藤本くんは目を見開き眉を上げて、風馬くんを脅すように見た。


 風馬くんは悪くないのに何で巻き込まれなきゃいけないの?


「止めてください……!」


 私は我慢できずに思わず叫んでしまった。


 藤本くんだけでなく、クラスの皆全員が私を怪訝そうに見つめてきた。


「風馬くんは悪くないです。も、文句があるなら……私に……言ってくださいっ!」


 拳を握りしめて力を入れて、何とかその場に佇んでいられるけど、本当は怖すぎて足がすくみそうだったのだ。


 それでも私のせいで風馬くんが巻き込まれるのは絶対に嫌だ。


「チッ、何だてめぇ。偉そうな口調聞いてんじゃねぇぞ」


 藤本くんが苛つきながら舌を鳴らし、他の子達も私を睨み付ける。


「何あいつ、急に口答えしてくんのかよ」


「今まで何にも言ってこなかったくせに」


「柊木くんが良くしてくれるからって調子乗ってんじゃないの?」


 他の子達はコソコソと私を見ながら話し始める。


 その時、朝礼を合図するチャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。


「はいはい、席座りなさい」


 出席簿をパンパンと叩く先生。


 藤本くんを始めとする生徒達は蜘蛛の子を散らすように自分達の席に戻っていった。


 私もすごすごと席に着いた。


「大丈夫か?」


 風馬くんが小声で聞いてくれた。


「ありがとう、大丈夫」


 頷いて風馬くんに笑顔を見せると、風馬くんは少し心配そうな表情で頷き返してくれた。


「じゃあ今日の連絡事項話すからメモ帳出して」


 先生の声が教室の中に響き渡った。


「____他に何かある?」


「はい」


 いつもは誰も居ないのに、今日は手を上げた人物がいた。


 学級委員長の後藤(ごとう)亜子(あこ)ちゃんだった。


 皆の視線が集中する中、後藤さんはすくっと立ち上がって、


「今朝、吸血鬼からの手紙が届いたんです」


 後藤さんの言葉に、先生が分かりやすく眉をひそめる。


「どういうこと?」


「私は、いえ、私達全員は、村瀬さん宛てだと思っていますけど」


「村瀬さん?」


 後藤さんが私を睨み付けるように横目で見て、先生も私を見つめる。


「そうなの? 村瀬さん」


 先生に尋ねられて、流石に黙り込むわけにはいかない。


 仕方なく立ち上がって、


「わ、分かりません。宛て先が書いてないので何とも……」


「差出人が吸血鬼なんですよ? 先生」


 私の言葉を遮って、後藤さんが先生に問いかける。


「実は夏合宿の時、村瀬さんが大浴場に迷いこんだ小さな吸血鬼を庇ったんです。皆怖がったりして全然近寄らなかったのに、彼女だけが迷うことなく近寄ってその子を守ったんです」


「え、ええ……」


「村瀬さんしか吸血鬼と関わってないんです。村瀬さんしか考えられないですよね?」


「ま、まぁ、確かにそう考えたらそうよね……」


 先生の返答も曖昧だ。


「亜子ちゃんの言う通りですよ!」


「俺も絶対村瀬宛てだと思います」


「それ以外考えられないですよ!」


「そうそう!」


 クラスの皆はここぞとばかりに騒ぎ立てる。


「静かに!」


 先生の大声で、騒ぎ声はすぐに収まった。


 先生は教卓にもたれ掛かるように両手を置いて私達を見回し、


「村瀬さんとは放課後に話をします。なので皆さんはこれ以上この話に関わらないこと。村瀬さんはそのつもりで職員室に来てください」


「は、はい、分かりました……」


 すごすごと席に座った私を見下すように目だけで見てから、後藤さんも勝ち誇ったように席に座った。


 その時ちょうど予鈴が鳴って朝礼が終わり、先生は教室を出ていった。


 ※※※※※※※※※※


 そして昼休みになった。


 風馬くんの提案で、私達は食堂に来ていた。


 人も割りとまばらで、食堂を利用している生徒は少なかった。


「ごめんね。いつもは教室なのに」


 こんな考えでは自意識過剰かもしれないけど、今朝のことを気遣ってくれたのだろうか。


「ううん。俺が話したかったから大丈夫」


 風馬くんは首を横に振って笑顔を見せてくれた。


「俺、ずっと考えてたんだけど、今朝の手紙って村瀬の友達の吸血鬼が書いてきたんじゃないのか?」


 風馬くんの問いに、私はフルフルと首を振る。


 私も一瞬だけその線を疑ったのだが、イアンさん達が私に対して『ずっと探してた。やっと見つけた』という内容の手紙を送りつけるわけがない。


 第一、放課後毎日吸血鬼界に行っているのだから、私を探す必要なんてない。


 以上のことから考えて、手紙の差出人の吸血鬼はイアンさん達ではないのは確かだった。


「じゃあ俺にも見せて。手紙」


 風馬くんが真面目な顔になって手を差し出した。


「う、うん」


 私は頷いて制服のスカートのポケットに入れていた手紙を渡す。


 風馬くんは私から手紙を受け取って眼球を動かし、黙読していく。


「確かにそうだな。村瀬の友達ならこんなこと書かない」


「そうだよね。でも、だとしたら誰なんだろう。私、特定の吸血鬼達としか関わってないのに」


 毎日会っているイアンさん達鬼衛隊は自然と選択肢から外される。


 彼ら以外で今まで出会った吸血鬼と言えば、ブリス陛下と秘書のテインさん、私を誘拐した三人組、スピリアちゃんを襲ったハイト、スレイ、マーダだ。


 名前を挙げた中で、私をずっと探していた人物を考えてみるけど、どうにもしっくり来ない。


 それとも全く接点のない第三者なんだろうか。


「う~ん、分かんない……」


「そうだな……」


 風馬くんは顎に手を当てて考え込み、私は他に思い当たる吸血鬼が居なくて頭を抱えてしまった。


「ごめんな、二人で考えたら何か分かるかもって思ったんだけど」


 風馬くんが頭を掻きながら謝ってくれた。


 私は慌てて首を横に振って、


「ううん! 謝らないで! むしろ、ちゃんと考えてくれてありがとう。風馬くんは関係ないのに、また巻き込んじゃってごめんね」


 風馬くんに向かって頭を下げた。


「村瀬は悪くないだろ。村瀬こそ謝るなよ」


 そう言って歯を見せて笑ってくれる風馬くん。


 風馬くんが居てくれて良かったと心の底から思った。


 ※※※※※※※※※※※


 そしていよいよ放課後がやって来た。


 職員室に行って先生と今朝の手紙について話さないといけないのだ。


 憂鬱な気分になりながらも、私は職員室に向かった。

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