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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第五章 氷結鬼編
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第101話 吹雪の予知夢

第五章開幕です!

 ____今が昼なのか夜なのか、はたまた朝なのかが分からない。


 吹雪が吹き荒れ、雪の粒が足の脛まで積もる中に私は立っていた。


 周りには人影一つ無く、ゴーゴーと吹雪が吹き荒れる音以外は何の音もしていなかった。


「ここ、どこ……?」


 誰にともなく私は呟く。


 吹雪が身体を叩きつけるように吹いていて、腕を顔の前に持ってきて雪が目に入らないように防御しながら、辺りを見回した。


「何で私、こんな所に居るの……?」


 何故自分がここに居るのか、どうやって来たのか、何も思い出せない。


 もしかしたら、自分からはやって来ていないのかもしれない。


 でも、だったらどうして私はここに居るのだろう。


 こんな吹き荒れる雪嵐の中に。


 身体中が凍りそうなほど寒かった。


 風が吹き荒れるその地一体がまるで凍りついてしまったみたいに、冷気は止まらない。


「……?」


 ふと、何かを感じて私は前を向いた。


 雪の粒が目に入らないよう、なるべく目を細めて前を見る。


 遠くで、何かがゆっくりと動いたのだ。


「誰か居るの……?」


 細くてすらっとしたシルエットが、遠くには見えていた。


「____見つけた」


 不意に耳元で声がした。


 驚いて体がビクッと跳ね上がるが、誰かの手が肩に乗っているので、そこまで飛び上がることもなく。


 声と共に、それが吐く息には全てが凍ってしまいそうなほどの冷気が感じられた。


 遠くにあったはずの人影は跡形もなく消え去っていた____。


 ※※※※※※※※※※


「ハッ!」


 目の前に見えるのはいつもと変わらない天井。


 続いて視線を移して周囲を確認する。


 何一つ変わらないいつもの寝室だった。


「……夢?」


 気付けば降り積もっていた雪も、吹き荒れる吹雪も消えていた。


 そしてあの細いシルエットも。


「何だったんだろ……」


 息を切らしながら、頭から垂れてきた汗を拭って私は呟いた。


 一体、あの夢は私に何を伝えたかったんだろう。


「おーい、雪ー、朝ごはん出来たぞー」


 一階から私を呼ぶ声がした。おじいちゃんだ。


「はーい」


 声を張り上げて返事をして、私はよっこらしょっとベッドから降りた。


「目覚まし時計つけとらんかったのか?」


 ダイニングに入るや否や、おじいちゃんが尋ねてきた。


「え?」


 何でだろう。


 今日は特別早く登校しないといけないわけでもないのに。


 何ら変わらない普通の日だ。


「いや、今日は珍しくわしが呼ぶまで寝とったから」


 私の向かいの席に腰を下ろすおじいちゃん。


 何だ、そんなことか。


「ううん、ちょっとね、夢見てたの」


 大好きな卵焼きを食べながら答える。


 本当にあの夢は何だったんだろう……。


「____雪?」


「えっ? な、何?」


 おじいちゃんに呼ばれて思わず変な反応をしてしまう。


「ボーッとしとるが大丈夫か? まだ寝ぼけとるのか?」


 前半は本当に心配そうに、後半はにやつきながらおじいちゃんは聞いてきた。


「ち、違うよ! 本当に大丈夫だから!」


 食べるのが遅いから心配されちゃったのかな。


 よしっ、もっと食べちゃおう!


「……うぐっ!?」


 ヤバい! 一気に口に入れ過ぎて喉に詰まった……!


「ほれ、牛乳飲め牛乳」


 おじいちゃんが私用の牛乳が入ったコップを渡してくれる。


 胸をコンコン叩きながらウプウプしていた私は、おじいちゃんの手からコップを奪い取るようにして、急いで牛乳を飲んだ。


「っはぁ……!」


 良かった……本当に死ぬかと思った……。


 死因が牛乳を喉に詰まらせたことによる窒息死とか恥ずかし過ぎるよ、黒歴史じゃん。


 死んだ時点で歴史にも何にもならないけど……。


「雪、本当に大丈夫か?」


 真面目に心配そうなおじいちゃん。


 確かにある日いきなり孫がおかずを喉に詰まらせたらびっくりするよね。


「何かあったんなら話してみなさい」


 おじいちゃんがお箸を置いて私を見つめた。


「え、えっと……」


 話してみようかな、あの夢のこと。


「実は変な夢見ちゃったの」


「変な夢……?」


 キョトンとするおじいちゃん。


「吹雪の中に立ってて、遠くに人影が見えて、気付いたら耳元で『見つけた』って言われて、そしたら遠くにあったはずの人影も消えてたの。そこで目が覚めたんだけど」


「ほぉ、また不思議な夢を見たもんじゃのう」


 おじいちゃん感心してるけど、結構怖かったんだからね。


 特に耳元で『見つけた』なんて囁かれた時はこの世の終わりかと……。


「そりゃあ予知夢かもしれんな」


「予知夢?」


「未来で起こることを夢で体験することじゃよ」


 じゃあ、そのうちあんな事が起こるってこと? 怖いな……。


「気を付けとけば大丈夫じゃよ。さっさと食べんと学校に遅れるぞ」


「う、うん」


 おじいちゃんの言う通りだ。


 あんな事にならないように気を付ければ大丈夫なはずだよね。


 ※※※※※※※※※※


 良かった。今のところはいつもと何も変わらない。


 登校中、信号待ちや信号を渡る時、普通に道を歩く時も、普段よりも周りに気を配って慎重になっていた私。


 でも学校に着いても特に変わりはなかった。


 私は心から安堵して後ろのドアから教室に入った。


 いつも通り席に座ろうと思っていたら、


「あ、来たぞ!」


 クラスの男子が私を指差して叫んだ。


 他の人達も一斉に私の方を振り向く。


 えっ? なになに? 私何かした?


 もしかしてこれが予知夢の出来事だったりするのかな……。


「おい、村瀬! お前宛てのラブレターだぞ」


 藤本くんが教壇に立って私に何かを投げつけてきた。


 地面に落ちたそれは、ピラピラの一枚の紙だった。


「何これ……」


 拾い上げて内容を見た私は、思わずそんな声を漏らしてしまった。


 手紙にはこう書かれてあったのだ。


『久しぶりだね。やっと見つけたよ。ずっと探してたんだから』


 ____まるで夢の中の出来事のようだった。

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