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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第四章 宿命の吸血鬼編
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第97話 新たに分かったこと

 太陽が燦々と輝く昼下がり。


 鬼衛隊の各々は傷付いた(まこと)とスピリアを連れて王宮に向かった。


 既にミリアによって回復魔法が施されたキルは、雪と共に家で待機している。


「済まないが、陛下に用がある。通してくれ」


 イアンが誠を支えたまま、入口の門番に声をかける。


 門番の吸血鬼はイアンを見てハッと目を見張ると、急いで王宮の門を開けた。


「どうぞどうぞ、イアン王子、それに鬼衛隊の皆様、どうぞお入りください」


 門が開き、イアン、レオ、スピリアをおぶったミリアの順で王宮に足を踏み入れた。


「あ、あの……」


 門が閉まる寸前、門番がミリアに声をかけた。


「はい、どうされましたか?」


 ミリアが尋ねると、門番は彼女の背中で眠っているスピリアを指差した。


「その子……あ、いえ、やっぱり何でもないです」


 だが、すぐに腕を下ろして笑顔を見せた。


「そうですか……。分かりました。失礼します」


 ミリアはお辞儀をしてから王宮の中に入っていった。


 大きな音を立てて閉まった門の外で、門番はポツリと呟いた。


「そうだよ、そんなわけないだろ。だって皆あの時……」


 ※※※※※※※※※※※※


 やがてイアン達が王宮を進んでいくと、行き止まりの場所に大きな扉があった。


 誠を支えているイアンの代わりに、レオが扉をノックする。


「はい」


 聞き覚えのある声とともに扉が音を立てて開いた。


 中からひょっこりと顔を覗かせたのは、陛下の秘書のテインだった。


 テインはレオを、その次にイアンを見て目を丸くすると、


「どうぞこちらへお入りください」


 と言って彼らを通した。


「陛下、イアン様方がお見えでございます」


 赤色の長い絨毯が続く先に豪華な椅子があり、そこにブリス陛下が座っていた。


「どうしたんだ? イアン」


 椅子に座ったブリス陛下がイアンに尋ねた。


「実は、先程天使達が奇襲をしかけてきて、マコトくんとスピリアが怪我をしてしまったんです。ミリアでも治療出来ないようで」


「申し訳ございません!」


 イアンが事情を説明した後、ミリアが謝罪。


「では、わたくしが治療致します。よろしいでしょうか、陛下」


 イアンの説明を聞いて、テインがブリス陛下に確認を取る。


 ブリス陛下は頷いて言った。


「分かった。じゃあ速やかに頼む」


「承知致しました。……では、こちらへ」


 テインの案内で、誠を支えたイアンと、スピリアをおぶったミリアが別室に入っていった。


「レオ。少し良いか」


 五人が別室に入った後、ブリス陛下がレオに言った。


「はい、何でしょうか」


 レオは胸に手をやって頭を下げる。


「この前、初めてせがれの家にお邪魔した時の件だ。ユキから出た氷を解析したのだが」


 ブリス陛下の言葉に、レオが顔をこわばらせる。


「とんでもないことが分かったんだ」


「とんでもないこと……」


 レオがブリス陛下の言葉を繰り返す。


 ブリス陛下は顎を引いて、


「ユキから出た氷が、氷結鬼の物だと分かったんだ」


「氷結鬼ってまさか……!」


 レオが目を見張る。


「過去にこの世界を凍らせた奴等だよ。わたしが罰して氷術を使えなくしたはずなんだが……」


「本で読んだことがあります。昔、氷結鬼という鬼達が集落の外れでひっそりと生きていた、と」


「その通りだ」


 ブリス陛下の肯定を受けて、レオの中に一つの疑問が浮かんだ。


 顎に手を当てて、レオはその疑問を口にする。


「でも彼らは氷術を使えなくなったんですよね。なのにどうしてその氷がユキの体から……?」


「それが分からないのだよ。ただそなたが拾ってくれた氷が氷結鬼の物だと判明しただけで」


 ブリス陛下も口の中で唸り、息をつく。


 レオは一歩前に進み出て尋ねた。


「あの、その事って隊長はご存知なんですか? きっと隊長が一番ユキのこと心配すると思うのですが」


「いや、まだ言っておらん。言うべきか悩んでいてな」


 ブリス陛下は首を横に振った。


「……そうですか。分かりました。ありがとうございました」


 レオは胸に手を当てて頭を下げた。


 何故、あの氷が雪の体の中から出てきたのかは、分析をしてくれたブリス陛下でさえ分からなかった。


 だが、あれが氷結鬼の物だと分かっただけでもレオにとっては良い収穫である。


 また氷結鬼について調べよう、とレオが心に決めていると。


 別室のドアがガチャリと開いて、中からテインが出てきた。


「どうだった、テイン」


 ブリス陛下の質問を、レオもその表情に表してテインを見つめる。


 テインはお辞儀をすると、結果を報告した。


「無事に治療は終了致しました。ご安心くださいませ」


 だが、そう口にするテインの表情は言葉のわりに明るいものではない。


「……どうした?」


 その表情を見て取って、ブリス陛下が尋ねた。


 しかしテインは口を閉ざしたまま答えようとしない。


 そんな彼女に、レオも不安を覚える。


「何かあったんですか?」


 その不安から、つい尋ねてしまうレオ。


 テインは彼の問いを受けて、レオとブリス陛下を交互に見つめた後、その口をゆっくりと開いた。


「治療は無事に終了致しました。しかし、スピリア様に関して新たに判明したことがあるのでございます」


「何だ、話してみなさい」


 ブリス陛下に言われて、テインは顎を引いて話し始めた。


「本来ならスピリア様はキル様と同じ年齢なのでございます。しかしそれにしてはあまりにも言葉遣いが幼過ぎると思って調べてみたのでございます」


「……何か分かったんですか?」


 レオが尋ねると、テインは『はい』と頷いて、


「スピリア様は精神的なショックによってあのような幼い鬼格になっているのですが、レオ様、何か心当たりはございませんか?」


 テインに尋ねられて、レオは顎に手を当てて考え込んだ。


「あ、それならきっと数年前に一族を壊滅させられた事が原因じゃないでしょうか」


「なるほど。それなら納得がいきます」


「どういうことですか?」


 レオの問いに、テインは真剣な表情でこう告げた。


「スピリア様は、過去に一族を滅ぼされた精神的ショックが原因で幼児化しているのでございます」

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