表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/103

73話 六章エピローグ

読んで頂きありがとうございます


 俺と花村のバスケ勝負は、俺達の圧勝という形で幕を閉じた。


 散々見下してきた男に、最も得意なバスケで負けたのは辛かったのだろう。試合が終わると同時に、花村は泣きながら走り去ってしまった。



 …………………………うん。



 まさかね、逃げるなんて思ってなかったんですよ。あれだけ強い言葉を使う男の子だったから、もっと打たれ強い子だと思ってたんですよ。


 だから試合が終わると同時に、逃げ出すなんて思ってもみなかったんですよ。おかげさまで、体育館がすっげぇ微妙な空気に包まれちゃったんですよ。



 …………………………うん。



 ってかさ、なんで俺が花村をイジメたみたいな空気になってんだよ。ちょっかいかけて来たのは花村の方なのに、おかしいやんけ。


 陰キャの次はイジメっ子って、マジで笑えないから……まぁ、学校での友達作りは諦めたから、もうどうでもいいんだけど……。


 ただ、こうなってくると、蛮と交わした約束が難しくなってくる。学校での友達作りが不可能となった以上、別の手を考えなければならない。


 いっその事、バイトでも始めて他校の生徒と仲良くなろっかな。水蓮寺高校という箱庭に(こだわ)らなくても、別にいいのだから。


 そう考えると、無限の可能性に満ち溢れていることに気付く。俺の普通の高校生活は、まだまだ始まったばかりなのだ。


 何一つ、根拠のない自身が湧いてきた。




─────────────




「か、改造……? う、嘘だろ!?」


「訓練もしていない中学生の俺を戦地に送るって、普通に考えたらおかしい話だからね。改造人間にする為に、適性のある人間を選出してたってワケ」


「マ、マジかよ……タカシ、機械になってるのか?」


「機械化のヤツもいるけど、俺のはちょっと違って────って、前にもやったな。このやり取り」


 炎天下の昼下がり、友人達と歩く帰り道。


 俺は錬児に、ドズ化の説明していた。


 どうやらさっき見せた俺達の動きは、人間の動きじゃなかったっぽい。試合が終わると同時に、錬児に詰め寄られてしまった。


 バスケ漫画じゃ、アレくらいの動きは普通だったんだけどなぁ……戦争ボケが治ってないのか、その辺の感覚がぶっ壊れてしまっている。


 結局、錬児にもドズ化の説明をする羽目になっちゃったし……一生隠し通していく作戦が、ガバガバになっとるやんけ。


 ほんと……どうしようもねぇなぁ俺は……あははははは……(現実逃避)


 死んだ魚のような目になっていると、隣を歩く錬児が、心配そうに覗き込んできた。


「か、体は大丈夫なのか? 後遺症とかはないのか?」


「生活に支障をきたすような後遺症は無いよ。腹は減りやすくなってるけど」


「腹は減りやすくって……だから尋常じゃない量の飯を食ってたのか……食費は? そんなに食べて、金の方は大丈夫なのか?」


「戦争の恩給で、毎月結構な額が支払われてるから大丈夫だよ。不労所得で食う飯は、美味い美味い!」


「お前は……本当に呑気なことばっか言いやがって……ったく……」


 呆れながら、優しい笑み浮かべる錬児。


 その表情を見る限り、ドズ化に嫌悪感を示していないっぽい。凛子や文香もそうだったけど、みんなサバサバしてて助かる。


 コイツらと友達になれて、本当に良かった。


 化け物になってしまった俺と、変わらずに付き合ってくれるんだもん。これからもずっと腐れ縁をやってきたい。


 釣られるように笑い返すと、凛子と文香が会話に混ざってきた。


「あのさタカシ……お願いがあるんだけど……今後、スポーツで本気を出すのは止めてもらえる? ちょっと面倒臭いことになってきたっていうか……」


「特に今日みたいな、たくさんの女子が見ている前では絶対止めてほしいの……タカちゃんのあの動きで、何人もヤラれちゃったから……」


「え? どゆこと?」


 唐突な発言に、眉をひそめる。


 俺の顔を見た文香が、より一層、渋い表情へと変わっていった。


「えっとね……一部の女子生徒が、タカちゃんの動きを見て騒ぎ始めたんだよ……」


「騒ぎ始めた?」


「うん……手のひらを返し始めたっていうか……ポ〜っとする子が出始めたっていうか……」


「ったく……ふざけるのも大概にしてほしいわ……あれだけタカシをバカにしてたのに……許せないっ!」


 凛子も同じように、忌々しい表情になっていく。


 なに言ってんだろう……俺の行動が原因で、またみんなを嫌な気持ちにさせてしまったのだろうか……?


 さっきの動きは、人間の動きじゃなかったっぽいし……俺の動きが気持ち悪くて、悲鳴があがったとか……。


 考え込んでいると、文香が本題に戻った。


「だからタカちゃん……変な女に絡まれない為にも、スポーツで本気を出すのは止めてくれる……? ダメ……?」

 

「ダメもなにも……元々そのつもりだったから、文香と凛子の言う通りにするよ。これ以上、悪目立ちしたくないし」


「ホント!? さすがタカちゃん! それでこそ私のタカちゃんだよぉ!」


「ありがとねタカシ! やっぱりタカシはタカシだわ!」


 喜びを表すように、文香と凛子が抱きついてきた。


 そして、やたらネットリとした口調で囁き始める。


「絶対に近寄らせないんだから……上っ面しか見てない女には……絶対にっ!!」


「同じ空気を吸うのもダメ……この二酸化炭素は私のモノ……」


「安心して……この貞操は私が守ってあげるから……ふふ……ふふふ……」


「えへへ……タカちゃん……タカちゅぁぁぁぁぁん……」


 ハァハァと荒い呼吸をあげながら、耳元でネチョネチョする凛子と文香。


 最近、二人の(まと)う空気が変わってきている気がする。なんていうか、俺をエサとして見てるっていうか。


 なんだろ……草食動物ってこんな気持ちになるのかな? 生殺与奪を握られてる感が半端ない。


 そんなことを思いながら、このクッソ暑い中、幼馴染に揉みくちゃにされ続けた。





 ネチョネチョもそこそこに、ナタリーが午後の予定について尋ねてくる。


「あのさぁ〜、勉強会ってどこでやるのぉ〜? やっぱ図書か〜ん?」


「図書館でいいんじゃありませんの? 七人座れる場所なんて限られますし」


「図書館へ行くくらいなら、ボクの家に来ないかい!? ちょっと離れているけど、図書館より快適に勉強出来ると思うんだ!」


 ビデオカメラを片手に、ご満悦な様子の巴ちゃんが手を挙げる。


 そんな彼女の提案に、ナタリーがコクンッと首を傾げた。


「ん〜? ちょっと離れてるって、どのくらい離れてるのぉ〜?」


「車で十五分くらいかな。あ、送迎は涅槃(ねはん)の審判が行うから安心してくれ。多少遅くなっても、ボクが責任持って送るから大丈夫さ」


「だから巴さん……その涅槃のなんちゃらってなんなんですの……? 当たり前のように会話に出さないで下さいまし……」


「いや……あ、あの……あ……あぅ……」


 ジト目になるシェリーに、巴ちゃんがモジモジと恥ずかしがる。


 いつもと変わらない陰キャーズ。


 笑う彼女達の見て、なんとなく安心した。


 ナタリーとシェリーが楽しそうに笑っている。彼女達の顔から、深い闇が消え去っている。


 やっぱりコイツらは、笑う顔がよく似合う。二人にいつもの調子が戻って本当に良かった。


 この前は聞きそびれちゃったけど、今度、過去ついて聞いてみようかな。


 シェリーは家族に捨てられたとか言ってたし……ナタリーもナタリーで、帰還直前にお姫様がうんたらとか言ってたし……。


 出来ることなら支えてやりたい。余計なお節介かもしれないけど。


 そんなことを考えていると、背中をトントン叩かれた。


「ふぃ〜、タカシィ〜。やっと見つけたわ〜。ごっつ探したんやでぇ〜」


 振り返ると、ニコニコと笑う、赤髪ツインテールの少女が立っていた。


 瞳の色も赤色で、小柄なシェリーよりさらに小さい。


 初めて見るツラ。完全に初対面。


 初対面なんだけど………………。


「タ……タカシ……こ、この女の子……誰? し、知り合い……?」


「ま、また美少女……」


 凛子と文香が、わなわなと口を震わせる。


 いや……可愛いっちゃあ、可愛いんだけど……。


 余計、コレ(・・)を選択したことに、頭が痛くなってくる。


 ナタリーとシェリーも気付いたのか、俺と同じように酷い表情を浮かべていた。


「音沙汰ないと思ってたら、何やってんだよボケェ……平和になったからって、はっちゃけすぎだろぉ……」


「別にええやん。せっかく拾った人生なんやし、TSってのも経験したいやん」


「ワタクシ、貴方だけは常識人だと思っておりましたわ……裏切られた気分ですわ……慰謝料よこせですわ……」


「じゃかぁしいわ。ここまでやっても、シェリーよりは常識人やわ」


 悪態を吐きつつ、シニカルな笑みを浮かべる女の子。


 そんな大人びた雰囲気の少女に、凛子と文香がおずおずと近付いていく。


「あ、あの……貴方は……一体……」


「タ、タカちゃんとは、ど、どういったご関係で……?」


 二人の質問に、女の子はキョトンと首を傾げた。


「関係……? なんや? 自己紹介すればええんか?」


 そう言って少女は、両手を腰にあてて、ドヤ顔で『型式』を名乗った。







「対陸戦・(つい)式特殊機械兵『武装・要塞(フォートレス)』、(リー)飛龍(フェイロン)ちゃんや! よろしゅうな!!」



ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。また、たくさんの評価、ブックマーク、ご感想もありがとうございます。

皆様の暖かい応援のおかげで、ランキングにも載せて頂くことが出来ました。あわせてお礼申し上げます。めちゃんこ嬉しかったっす。


今回の章で一通り区切りがつきましたので、次の章からは、(ラブ?)コメディを増やしていければなぁ……って思ってます。過去編とか混ぜながら、この空気を維持しつつ。



ある程度お話がまとまりましたら、投稿を再開しますので、その際にはよろしくお願い致します。




それとは別に、六章再開時にちょろっと言いました、書籍の特典や、加筆内容についても報告したいと思います。


まず特典ですが、こちらはSSとサイン本の二種類を用意しました。


SSでは、ナタリー視点、お姉ちゃん視点、徴兵直後の過去編を書いております。詳細は目次下部のリンクに記載しましたので、確認して頂ければ幸いです。


どれも本編で取りあげたいくらいの内容なので、楽しんで頂ければと。


サイン本につきましては、各話広告下にリンクを貼っております。

私がビビりなので、冊数はとにかく少なくしてもらいました。余ると泣けてくるし……。


希少っちゃあ希少なので、青田買いするなら今の内ですっ……!(切実)


次に、加筆内容についてご説明を致します。


加筆は二万文字ほど行いました。


内容につきましては、帰還直前のタカシの様子や、今後登場予定の新キャラを、前倒しで登場させています。


書き下ろしも書いてますので、なろう版にはないタカシ君が見れるかと思います。気合を入れて書きましたので、楽しんで頂ければと。


最後に、ここまで応援して頂き、ありがとうございました。既に予約されている方もいらっしゃるようで、感無量の極みであります。

書籍化もコミカライズも、そしてここまで執筆出来たのも、応援して下さった皆様のおかげでございます。


今後も楽しめる作品になるよう、私なりに頑張って執筆しますので、宜しくお願い致します。

それでは(^o^)ノシ



追記:ネット販売のサイン本が上限に達していたようです。感謝を申し上げつつも、私の確認不足が原因でご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。

アマゾンのリンクに差し替えさせて頂きます。

今後ともよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ありきたりの作とは一味違う! 大変面白かったです。 続きを楽しみにお待ちしておりますね。
[気になる点] 「ただ、こうなってくると、蛮と交わした約束が難しくなってくる。学校での友達作りが不可能となった以上、別の手を考えなければならない。」の部分の 「蛮」ってだれのことですか?急に出てきてわ…
[一言] 最っ高だぜ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ