73話 六章エピローグ
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俺と花村のバスケ勝負は、俺達の圧勝という形で幕を閉じた。
散々見下してきた男に、最も得意なバスケで負けたのは辛かったのだろう。試合が終わると同時に、花村は泣きながら走り去ってしまった。
…………………………うん。
まさかね、逃げるなんて思ってなかったんですよ。あれだけ強い言葉を使う男の子だったから、もっと打たれ強い子だと思ってたんですよ。
だから試合が終わると同時に、逃げ出すなんて思ってもみなかったんですよ。おかげさまで、体育館がすっげぇ微妙な空気に包まれちゃったんですよ。
…………………………うん。
ってかさ、なんで俺が花村をイジメたみたいな空気になってんだよ。ちょっかいかけて来たのは花村の方なのに、おかしいやんけ。
陰キャの次はイジメっ子って、マジで笑えないから……まぁ、学校での友達作りは諦めたから、もうどうでもいいんだけど……。
ただ、こうなってくると、蛮と交わした約束が難しくなってくる。学校での友達作りが不可能となった以上、別の手を考えなければならない。
いっその事、バイトでも始めて他校の生徒と仲良くなろっかな。水蓮寺高校という箱庭に拘らなくても、別にいいのだから。
そう考えると、無限の可能性に満ち溢れていることに気付く。俺の普通の高校生活は、まだまだ始まったばかりなのだ。
何一つ、根拠のない自身が湧いてきた。
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「か、改造……? う、嘘だろ!?」
「訓練もしていない中学生の俺を戦地に送るって、普通に考えたらおかしい話だからね。改造人間にする為に、適性のある人間を選出してたってワケ」
「マ、マジかよ……タカシ、機械になってるのか?」
「機械化のヤツもいるけど、俺のはちょっと違って────って、前にもやったな。このやり取り」
炎天下の昼下がり、友人達と歩く帰り道。
俺は錬児に、ドズ化の説明していた。
どうやらさっき見せた俺達の動きは、人間の動きじゃなかったっぽい。試合が終わると同時に、錬児に詰め寄られてしまった。
バスケ漫画じゃ、アレくらいの動きは普通だったんだけどなぁ……戦争ボケが治ってないのか、その辺の感覚がぶっ壊れてしまっている。
結局、錬児にもドズ化の説明をする羽目になっちゃったし……一生隠し通していく作戦が、ガバガバになっとるやんけ。
ほんと……どうしようもねぇなぁ俺は……あははははは……(現実逃避)
死んだ魚のような目になっていると、隣を歩く錬児が、心配そうに覗き込んできた。
「か、体は大丈夫なのか? 後遺症とかはないのか?」
「生活に支障をきたすような後遺症は無いよ。腹は減りやすくなってるけど」
「腹は減りやすくって……だから尋常じゃない量の飯を食ってたのか……食費は? そんなに食べて、金の方は大丈夫なのか?」
「戦争の恩給で、毎月結構な額が支払われてるから大丈夫だよ。不労所得で食う飯は、美味い美味い!」
「お前は……本当に呑気なことばっか言いやがって……ったく……」
呆れながら、優しい笑み浮かべる錬児。
その表情を見る限り、ドズ化に嫌悪感を示していないっぽい。凛子や文香もそうだったけど、みんなサバサバしてて助かる。
コイツらと友達になれて、本当に良かった。
化け物になってしまった俺と、変わらずに付き合ってくれるんだもん。これからもずっと腐れ縁をやってきたい。
釣られるように笑い返すと、凛子と文香が会話に混ざってきた。
「あのさタカシ……お願いがあるんだけど……今後、スポーツで本気を出すのは止めてもらえる? ちょっと面倒臭いことになってきたっていうか……」
「特に今日みたいな、たくさんの女子が見ている前では絶対止めてほしいの……タカちゃんのあの動きで、何人もヤラれちゃったから……」
「え? どゆこと?」
唐突な発言に、眉をひそめる。
俺の顔を見た文香が、より一層、渋い表情へと変わっていった。
「えっとね……一部の女子生徒が、タカちゃんの動きを見て騒ぎ始めたんだよ……」
「騒ぎ始めた?」
「うん……手のひらを返し始めたっていうか……ポ〜っとする子が出始めたっていうか……」
「ったく……ふざけるのも大概にしてほしいわ……あれだけタカシをバカにしてたのに……許せないっ!」
凛子も同じように、忌々しい表情になっていく。
なに言ってんだろう……俺の行動が原因で、またみんなを嫌な気持ちにさせてしまったのだろうか……?
さっきの動きは、人間の動きじゃなかったっぽいし……俺の動きが気持ち悪くて、悲鳴があがったとか……。
考え込んでいると、文香が本題に戻った。
「だからタカちゃん……変な女に絡まれない為にも、スポーツで本気を出すのは止めてくれる……? ダメ……?」
「ダメもなにも……元々そのつもりだったから、文香と凛子の言う通りにするよ。これ以上、悪目立ちしたくないし」
「ホント!? さすがタカちゃん! それでこそ私のタカちゃんだよぉ!」
「ありがとねタカシ! やっぱりタカシはタカシだわ!」
喜びを表すように、文香と凛子が抱きついてきた。
そして、やたらネットリとした口調で囁き始める。
「絶対に近寄らせないんだから……上っ面しか見てない女には……絶対にっ!!」
「同じ空気を吸うのもダメ……この二酸化炭素は私のモノ……」
「安心して……この貞操は私が守ってあげるから……ふふ……ふふふ……」
「えへへ……タカちゃん……タカちゅぁぁぁぁぁん……」
ハァハァと荒い呼吸をあげながら、耳元でネチョネチョする凛子と文香。
最近、二人の纏う空気が変わってきている気がする。なんていうか、俺をエサとして見てるっていうか。
なんだろ……草食動物ってこんな気持ちになるのかな? 生殺与奪を握られてる感が半端ない。
そんなことを思いながら、このクッソ暑い中、幼馴染に揉みくちゃにされ続けた。
ネチョネチョもそこそこに、ナタリーが午後の予定について尋ねてくる。
「あのさぁ〜、勉強会ってどこでやるのぉ〜? やっぱ図書か〜ん?」
「図書館でいいんじゃありませんの? 七人座れる場所なんて限られますし」
「図書館へ行くくらいなら、ボクの家に来ないかい!? ちょっと離れているけど、図書館より快適に勉強出来ると思うんだ!」
ビデオカメラを片手に、ご満悦な様子の巴ちゃんが手を挙げる。
そんな彼女の提案に、ナタリーがコクンッと首を傾げた。
「ん〜? ちょっと離れてるって、どのくらい離れてるのぉ〜?」
「車で十五分くらいかな。あ、送迎は涅槃の審判が行うから安心してくれ。多少遅くなっても、ボクが責任持って送るから大丈夫さ」
「だから巴さん……その涅槃のなんちゃらってなんなんですの……? 当たり前のように会話に出さないで下さいまし……」
「いや……あ、あの……あ……あぅ……」
ジト目になるシェリーに、巴ちゃんがモジモジと恥ずかしがる。
いつもと変わらない陰キャーズ。
笑う彼女達の見て、なんとなく安心した。
ナタリーとシェリーが楽しそうに笑っている。彼女達の顔から、深い闇が消え去っている。
やっぱりコイツらは、笑う顔がよく似合う。二人にいつもの調子が戻って本当に良かった。
この前は聞きそびれちゃったけど、今度、過去ついて聞いてみようかな。
シェリーは家族に捨てられたとか言ってたし……ナタリーもナタリーで、帰還直前にお姫様がうんたらとか言ってたし……。
出来ることなら支えてやりたい。余計なお節介かもしれないけど。
そんなことを考えていると、背中をトントン叩かれた。
「ふぃ〜、タカシィ〜。やっと見つけたわ〜。ごっつ探したんやでぇ〜」
振り返ると、ニコニコと笑う、赤髪ツインテールの少女が立っていた。
瞳の色も赤色で、小柄なシェリーよりさらに小さい。
初めて見るツラ。完全に初対面。
初対面なんだけど………………。
「タ……タカシ……こ、この女の子……誰? し、知り合い……?」
「ま、また美少女……」
凛子と文香が、わなわなと口を震わせる。
いや……可愛いっちゃあ、可愛いんだけど……。
余計、コレを選択したことに、頭が痛くなってくる。
ナタリーとシェリーも気付いたのか、俺と同じように酷い表情を浮かべていた。
「音沙汰ないと思ってたら、何やってんだよボケェ……平和になったからって、はっちゃけすぎだろぉ……」
「別にええやん。せっかく拾った人生なんやし、TSってのも経験したいやん」
「ワタクシ、貴方だけは常識人だと思っておりましたわ……裏切られた気分ですわ……慰謝料よこせですわ……」
「じゃかぁしいわ。ここまでやっても、シェリーよりは常識人やわ」
悪態を吐きつつ、シニカルな笑みを浮かべる女の子。
そんな大人びた雰囲気の少女に、凛子と文香がおずおずと近付いていく。
「あ、あの……貴方は……一体……」
「タ、タカちゃんとは、ど、どういったご関係で……?」
二人の質問に、女の子はキョトンと首を傾げた。
「関係……? なんや? 自己紹介すればええんか?」
そう言って少女は、両手を腰にあてて、ドヤ顔で『型式』を名乗った。
「対陸戦・終式特殊機械兵『武装・要塞』、李飛龍ちゃんや! よろしゅうな!!」
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。また、たくさんの評価、ブックマーク、ご感想もありがとうございます。
皆様の暖かい応援のおかげで、ランキングにも載せて頂くことが出来ました。あわせてお礼申し上げます。めちゃんこ嬉しかったっす。
今回の章で一通り区切りがつきましたので、次の章からは、(ラブ?)コメディを増やしていければなぁ……って思ってます。過去編とか混ぜながら、この空気を維持しつつ。
ある程度お話がまとまりましたら、投稿を再開しますので、その際にはよろしくお願い致します。
それとは別に、六章再開時にちょろっと言いました、書籍の特典や、加筆内容についても報告したいと思います。
まず特典ですが、こちらはSSとサイン本の二種類を用意しました。
SSでは、ナタリー視点、お姉ちゃん視点、徴兵直後の過去編を書いております。詳細は目次下部のリンクに記載しましたので、確認して頂ければ幸いです。
どれも本編で取りあげたいくらいの内容なので、楽しんで頂ければと。
サイン本につきましては、各話広告下にリンクを貼っております。
私がビビりなので、冊数はとにかく少なくしてもらいました。余ると泣けてくるし……。
希少っちゃあ希少なので、青田買いするなら今の内ですっ……!(切実)
次に、加筆内容についてご説明を致します。
加筆は二万文字ほど行いました。
内容につきましては、帰還直前のタカシの様子や、今後登場予定の新キャラを、前倒しで登場させています。
書き下ろしも書いてますので、なろう版にはないタカシ君が見れるかと思います。気合を入れて書きましたので、楽しんで頂ければと。
最後に、ここまで応援して頂き、ありがとうございました。既に予約されている方もいらっしゃるようで、感無量の極みであります。
書籍化もコミカライズも、そしてここまで執筆出来たのも、応援して下さった皆様のおかげでございます。
今後も楽しめる作品になるよう、私なりに頑張って執筆しますので、宜しくお願い致します。
それでは(^o^)ノシ
追記:ネット販売のサイン本が上限に達していたようです。感謝を申し上げつつも、私の確認不足が原因でご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。
アマゾンのリンクに差し替えさせて頂きます。
今後ともよろしくお願い致します。








