104話 番外編 乙女の温泉旅行 後編
ここまでお読み下さりありがとうございます
準備を終え、家族風呂へと移動した私達。
よくある大浴場に比べ、だいぶ狭くなった脱衣室へ入ると、ナタリーちゃんが情けない声を漏らした。
「ふぇぇ……マ、マジじゃん……マジの混浴じゃん……鍵がかけられるようになってるぅぅぅ……」
しっかりと施錠された入口を見て、恐れ慄くナタリーちゃん。
結っていた髪を解いた彼女は、おてんばな雰囲気が消え、お姫様のような気品が漂っている。混浴に動揺している為か、いつもの軽快な印象がまるで無い。
その様子を見て気の毒に思ったのか、タカちゃんが声をかける。
「お前、止めた方がいいんじゃないのか? そんなに恥ずかしいなら無理すんなよ」
「べべべ別に無理なんかしてねぇし! ただちょっとビックリしちゃっただけだし! ここここ混浴は、ねねねねね願ったり叶ったりだしぃ〜!!」
「呂律回ってねぇんすよ。大きく深呼吸しろ」
「おっきいタオル巻くから平気だもぉ〜ん! し、しっかり巻けば恥ずかしくないんだもぉ〜ん!!」
「ちなみに、湯船にタオルを入れるのはマナー違反だからな? 日本のマナーに則って、湯船に浸かる時はすっぽんぽんになれよ」
「……………………………」
「『ハシゴ外された……』みたいな顔すんなや……くっそ……面白い顔するなぁ……」
ナタリーちゃんが、顔を真っかっかにして固まっている。
凛子ちゃんに匹敵するほどの、抜群のプロポーションを誇っているのに、彼女のウブさ加減は変わってないみたい。
この様子なら、ナタリーちゃんは裸体を武器に出来ないだろう。せっかくのわがままボディが、宝の持ち腐れになるのだ。
脅威が一つ消えたことを確信してから、シェリーちゃんへと視線を移す。
彼女も少しだけ赤くなっていた。
「タカシ君、タカシ君。先に入っててもらえませんか? さ、流石に……服を脱ぐところを見られるのは恥ずかしいので……」
「えぇっ!? それじゃあ俺、みんなの前でストリップするハメになるじゃん!! やだよ恥ずかしい!! 俺だって、脱いでるところを見られるのは恥ずかしいんだからねっ!!」
「後ろ向いてますから、さっさとすっぽんぽんになって下さいまし! これから死ぬほどラッキースケベが出来るのですよ!? 複数の女子高生と混浴が出来るのですから、少しくらいワガママ聞けですわ!!」
「冗談やん……冗談で言っただけやん……脱ぐから後ろ向いててよ……」
シェリーちゃんがフンスフンスと鼻息を荒げながら、タカちゃんに背を向ける。
彼女のスレンダーな体型には、一切の贅肉がついていなかった。
ヨシッ。
シェリーちゃんには悪いが、このプロポーションなら私が負けることは無いだろう。
特にバストサイズなんて、勝負にすらなっていない。あの慎ましいボディでいくら色仕掛けをかましても、私の魅力には敵わないのだ。
勝利を確信しつつ、私もタカちゃんに背を向ける。
同時に、『ブジャッ』という何かが吹き出る音が響いた。
「はぁはぁ……すっごぉい……はぁはぁ……なにあのふっき〜ん……はぁはぁ……やだぁ〜……やだもぉ〜……はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」
隣に立つ花梨お姉ちゃんが、背を向けることもなく、ガン見しながら鼻血を噴き出していた。
このどうしようもない生き物に関しては、放置で大丈夫だろう。いくらブラコンだからって、二人は血の繋がった姉弟。流石に近◯◯◯が不味いことくらい分かる筈。
以上のことから、この場に私の敵はいないってワケ。
生粋のウブで攻め手に欠けるナタリーちゃん。
可愛いけど武装が貧弱なシェリーちゃん。
法律が許してくれない花梨お姉ちゃん。
こんなんもう勝ち確なんだよ。私のわがままボディが無双すると思うんだ。
私の女の部分をしっかり晒せば、タカちゃんだって興奮するに違いない。据え膳食わぬは男の恥って囁けば、なんやかんやその気になってくれるだろう。
あとは夜、抜け出せばいいだけ。愛を語り合う場所は、どこにだってあるのだから。
完璧すぎる作戦に、思わず生唾がこぼれ落ちる。
大正義幼馴染ルートが、幕を開けようとしていた。
と、思っていた。
甘かった。
完全に甘かった。
まさか花梨お姉ちゃんが、倫理と道徳を冒涜するなんて思ってもみなかった。
興奮しすぎて頭がおかしくなったのか、『ご、ごめんね……ゴ、ゴール……ゴールしてもいいよねっ!』って言いながら、言葉に出来ないことを始めるんだもん。
ってか、やめてよ! 血の繋がった姉弟だよ!? 平気で一線を越えようとしないでよ!
こっちは、ちょっとエッチなラブコメをやりたかっただけなのに……なんで十八禁を始めだすの!? 絵面がエグすぎるんだって!
流石に洒落にならないと思ったのか、ナタリーちゃんとシェリーちゃんが本気で止めに入ってたし……タカちゃんも珍しく「ど、どしたん姉さん……? 熱中症? 大丈夫?」って心配してたし……。
花梨お姉ちゃんが、ここまでヤバい人だとは思わなかった。タカちゃんが徴兵される前は、下着を盗む程度の可愛らしい小物だったのに。
結局、混浴は中止にするしかなかった。
全てを諦めて、チェックアウトするまで、花梨お姉ちゃんを監視するしかなかった。
私とお母さんが計画した温泉旅館は、極めて健全で何事もない、平和なモノで幕を閉じてしまった。
どうすりゃよかったんだよ……これ……。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
とりあえず次章は、過去編と海編を投稿できればと思っております。
ずっと書こう書こうって思っていた過去編なんですが、実は二の足を踏んでおりました。コメディメインのタカシ君が、シリアスになりそうだったので。
今回投稿したのも、シリアスが避けられないなら、番外編でコメディに振り切ればいいじゃん! と思い書いた次第であります。私は頭の悪いラブコメと、中二病作品が大好きなのです。
ある程度お話がまとまりましたら投稿を始めますので、その際は宜しくお願い致します。
あ、番外編の冒頭でもお話しました、コミカライズのニ巻が本日発売となります。
発売にあたり、なんとPVを作成して頂きました。
↓こちらのURLリンクがPVとなっておりますので是非御覧になって下さい。
https://youtube.com/shorts/UTs--HJ5ums
かなり、すっごいことをやってもらってます。流石、声をお仕事にされるだけあって、とにかく凄かったです。スキルの高さが半端ないです。
最後にここまでお付き合い頂き、大変ありがとうございました。
沢山の応援を頂き、感無量です。皆様のお力があってこそ、ここまで執筆できております。
引き続き頑張らせてもらいますので、投稿を再開した際は宜しくお願い致します。
それではまた(^o^)ノシ









