『追放者達』、神鉄鋼傀儡と決着を付ける・後
取り敢えず後編です
オチは予想通りになるかな?
「悪い!手間取った!」
「合流するよぉ~」
そう一声掛けてから戦線へと合流する二人。
「漸くか!!」「来るのが遅いのよ!!」「でも、これで攻勢に出れるのです!」「皆さん、もう一踏ん張りです!頑張りましょう!!」
そんなアレスとヒギンズの二人へと、口々に文句の様でありながら、確実に安堵の色が混じっている言葉を口にする四人。
投げ掛けられた言葉に苦笑しながらも、チラリを視線を向けて皆の状態を確認するが、大小様々な負傷と疲労が蓄積している程度で、行動不能に陥る程に大きな負傷も、致命的な装備の損傷も起きていない事にアレスは安堵の溜め息を溢す。
ならば、と相対している『神鉄鋼傀儡』に対して視線を向けるが、こちらはあまりよろしくは無い状態な様子。
相変わらず右腕は肘の部分から破壊されて欠損状態に在るし、彼らが倒したのとは別の個体が参戦していない事から最低限の妨害は出来ていた様子だが、既に破壊していたハズの膝関節と背中の武装は修復されてしまったらしく、装備の類いを十全に扱う事が出来る様になっていた。
その為、最初の戦闘で巨体をノロマに振り回していた時とは比べ物にならない程の速度で移動しながら、時に魔法を放って彼らを寄せ付けず、時に自ら近付いてその神鉄鋼で出来た拳で殴り付けて来る、と言った、ある意味二人が相手にしていた個体よりも厄介そうな挙動を繰り返している様だった。
遠近両方をこなす相手であった、と言う事と、近距離にて攻撃を加えるハズの二人が居なかった、と言う事が重なってしまったが為にここまで一方的な展開になったのだろうが、本体の方を相手にしていて他の固体を自由にしておくのは、やはり危険度が高過ぎただろう。
故に、あの時の選択は比較的正しいモノだった……ハズ!と確認したアレスは、タチアナから再度支援術を受けてからヒギンズと共に前へと駆け出して行く。
それに少し遅れて追随する形で、早速傷み始めている盾を構えたガリアンと、ナタリアの従魔達がやる気で瞳を爛々と輝かせながら続いて行く。
当然、そうやって少ない頭数で密集していれば、纏めて蹴散らしてやろう、との考えからか、『神鉄鋼傀儡』の背中に魔法陣が展開され、そこから高火力の魔法が放たれる。
とは言え、ソレを『追放者達』のメンバー達が読んでいないハズも無く、放たれて来るタイミングさえ分かってしまえば、追尾してくる訳でもないソレを回避するのは特に難しくも無い為に、各自でバラけて飛来した魔法を回避する。
図らずとも散開する形となった彼らは、各員がアイコンタクトを取ると、そのまま『神鉄鋼傀儡』を取り囲む形で陣形を作りあげた。
ソレに合わせる形で、タチアナによる追加の妨害術が『神鉄鋼傀儡』へと殺到し、陣形を破ろうと動きだそうとしていた出鼻を挫く事に成功する。
当然、そんな不自然な迄に大きな隙を見逃す彼らではなく、好機と見たが為に一斉に攻勢を仕掛けて行く。
先陣を切るのはヒギンズ。
背後に近い位置取りであったが為に、『神鉄鋼傀儡』の反応も遅れ、背中の武装の一部を斬り飛ばされてしまう。
しかし、そうしてゼロ距離に近い位置に来てしまえば、幾ら片腕しか無くとも、何処かしらに当たりさえすればソレで良い『神鉄鋼傀儡』は、敵対している相手の中でも最も脅威度が高いと認定していたヒギンズを排除するべく、人間には不可能な挙動で腰を回転させて大きく腕を振り回す。
そこへ、すかさず盾を構えたガリアンが飛び込んで割って入り、振り回された腕を受け止める。
既に手にした盾の表面はボロボロであり、今にも砕けてしまいそうだが、取り敢えずは目の前の敵を倒すまで保てば良い、との考えから、なるべく盾に負担を掛けない様にしながらも、しくじる事無く確実に攻撃を受け止め、背後に庇ったヒギンズへとダメージが行かない様にする。
モノのついでに、とばかりに受け止めた腕の手首の関節に、手にしていた斧を渾身の力で叩き付け、丁度関節の切れ込みの部分に刃先を食い込ませる事に成功する。
無理矢理動かしたり、故意的に出力を上げればソレだけで壊れる程度の強度しか無いモノではあるが、同時にそうしないと外れないモノでも在る為に、必然的に意識が一定量そこへと裂かれ、自然と行動が抑制される。
高々手首、されど手首。
現に、そうして異物を挟み込まれてしまった『神鉄鋼傀儡』は、周囲へと魔法をばら蒔く事はし始めていても、以前の様に追撃の為に自ら接近して攻撃する、と言った行動を取ろうとしていないのだから、確かに効果は在ったのだろう。
懐にさえ潜り込めば、十二分に勝算は在る。
そう判断したナタリアの従魔である森林狼と月紋熊達が、ヒギンズとガリアンへと注意が向けられている隙に果敢に飛び掛かって行く。
「「「「「「「「グルルルルルルルゥアアア!!!」」」」」」」」
「ヴゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウガァ!!!」
雄叫びと共に吶喊する従魔達に気付き、迎撃する為に腕を振り回そうとする『神鉄鋼傀儡』。
しかし、目の前でソレを許すガリアンやヒギンズではなく、動作の始まりの時点で盾を押し付けて動きを封じ、容赦無く胸のコアを狙って攻撃を仕掛けて行く。
ソレに対処しなくてはならない、と判断したらしく、攻撃が二人へと集中した為に、そのまま無防備な背中へと九頭の猛獣達が襲い掛かる!
本来であれば、例のダンジョンマスターに存在自体を強化されたとは言え、彼らの爪や牙では神鉄鋼を傷付ける事は出来ない。
それは、圧倒的に威力が足りていないと言う事もあるが、そもそもの話として傷付けるに足るだけの強度を備えていないからだ。
しかし、現在彼らはタチアナが掛けた支援術によって大幅に強化され、『神鉄鋼傀儡』もタチアナが掛けた妨害術によって大幅に弱体化されている。
その為に、彼らの爪や牙であっても、身体の全てが神鉄鋼で出来ている相手にも十二分に傷を付ける事が出来る様になっている、と言う訳なのだ。
……自分達が非力であったが為に、愛する主人は虐げられていた。
自分達も、高々雑魚だ、と見くびられていた。
今の主人の仲間達は、とても良くしてくれている。
主人はもちろんとして、自分達も可愛がられている。
それは、とても嬉しい事だ。待ち望んでいた未来だ。夢にまで見て願っていた光景だ。嬉しくないハズが無い。
……だが、それよりも嬉しいのは、自分達が『只居るだけ』の存在では無く、キチンと『戦力の一角』として扱われている事。
ちゃんと敵を倒せるだけの力を得られ、こうして愛する主人の為に戦える事。それが、何よりも嬉しいのだ!!
そんな事情も在ってか、彼らの攻撃は苛烈を極めて行く。
森林狼達は持ち前の素早さと群れとしての連携力を生かし、疾風の如く襲い掛かっては一撃で傷を残して離脱し、反撃しようとする動きを察知すれば他のモノがその隙を突いて攻撃を加える、と言った途絶える事の無い連撃にて多大なダメージを刻んで行く。
月紋熊はその巨大と頑健さ、そして豪腕を生かし、ガリアンやヒギンズの補助の元とは言え、互いの攻撃にて体勢が崩れる程の勢いと威力による『神鉄鋼傀儡』と後ろ足で立ち上がって真っ向からの殴り合いを繰り広げ、終には何ヵ所も殴打による凹みを作り上げて行った。
そうして、各所に多数の損傷を負い、殴打によって形を歪めながらとうとう膝を突いた『神鉄鋼傀儡』は、またしても掠れる様になった音声にて不穏な単語を吐き出して行く。
「ソンショウ、ジン……。……キノウテイカ……ケイセン……トハンダンシ……。
キミツ……ノ……ジバク……ヲキドウ……。カウントダウンヲカイシ……」
「はい、そこまで」
が、しかし、それまで遊撃に徹して故意的に『神鉄鋼傀儡』の意識に昇らない様に立ち回っていたアレスが、姿を隠す『ハインド』や、意識の外からの攻撃の威力を上昇させる『バックスタブ』等のスキルを限界まで発動させる、残された魔力を全て注ぎ込んだ刃を『神鉄鋼傀儡』の胸に嵌め込まれていたコアへと突き込み、威力に任せて割り砕きながら抉り出す。
すると、それまで目と思われる切り込みに灯っていた光が消え、膝から力が抜けて地面へと崩れ落ちると、最後の力を振り絞ったかの様な弱々しい声量にて言葉を溢し、それを境として二度と動く事は無くなるのであった。
「……ハソ、ン。ジバクシークエ……ケイゾク、コン、ナン……。
トウキノ、ドウサ、ヲ、テイシ……シマ……ス…………。
シメイ、ヲ、ハタセズ、モウシ……ワケ……ゴザ、イマ、セン、マ……オウ……サ……マ…………」
『損傷、甚大。戦闘機能低下により、継戦不能と判断します。
機密保持の為に、自爆機能を起動します。カウントダウンを開始します』
『動力破損。自爆シークエンス継続困難と判断。
当機の動作を停止します。
使命を果たせず、申し訳ございません、□□様……』
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