『追放者達』、神鉄鋼傀儡の奥の手と戦闘する
「サイシュウキノウキドウ。『セイバー』『バスター』ノキドウヲカクニン。
『アーチャー』『シールダー』ハコアノソンショウニヨリキドウフカ。ホンタイユニット『ウィザード』ノキノウソンショウヲカクニン。
セントウリョク、サイダイチノヨンワリゲンショウ。カイゼンテンヲキロクシ、モクヒョウノセンメツヲカイシシマス」
本体から分離した部分によって新しく作られた駆体の内、落下したコアを受け取って立ち上がった個体が、周辺に残されていた他の部分から作られた武装を手にして『追放者達』のメンバーへと向けて構えてみせる。
長剣と盾を構えた個体も、全長が身の丈程も在る大剣を構えた個体も、その佇まいにはアレス達をしてもパッと見て分かる様な隙は無く、その道に熟達した達人を思わせる雰囲気を漂わせていた。
「……これは、参ったねぇ……。
何かは在るんだろうなぁ、とは思ってたけど、まさか増えるなんて思って無かったんだけどなぁ……」
「そんなん、俺も完全に予想外だったよ。
……でも、さっきのあいつの口振りとまだ残ってる残骸から察すると、本来なら後二体いて、それらがそれぞれ盾役と遠距離攻撃担当だった、って事みたいだから、むしろ俺達で壊しておけて良かった、と思っておく方が良いんじゃないのか?
思えるなら、の話だけどな!」
「……えぇい!最終機能とやらの発動をむざむざと見過ごした当方が言うのもアレだが、そなたらもそうして話している暇はもう無さそうだ!来るぞ!!」
アレスとヒギンズによる現実逃避も兼ねた情報交換を行っていると、いつの間にか現実に戻って来ていたらしいガリアンから飛ばされた警告により半ば反射的に得物を構え直す二人。
ソレを待っていた、と言う訳ではなく恐らくは只の偶然なのだろうが、タイミングを同じくして長剣と盾を構えた『セイバー』と思われる個体と、大剣を担いだ『バスター』と思われる個体が本体の動作からは考えられず、平均的な『神鉄鋼傀儡』のソレとして見ても異常な程の速度にて彼らへと迫って行く。
突撃して行く『セイバー』と『バスター』を追い掛ける事無く、先程破壊された膝と背中の魔法陣を展開していた部分に修復能力を発動させている本体を苦々しい思いで視界に納めながらも、取り敢えずは目の前へと迫り来る二体に対処するべくガリアンが前へと歩み出て、二体の突撃を受け止める。
「……ぬん!!
……む?存外に軽い……ぬぉおう!?」
「ガリアン!?……ッぐ!?」
「ほいっと。取り敢えず、君の相手はオジサンだよぉ!」
まず前に出ていた『セイバー』と呼ばれた個体の攻撃を受け止めたガリアンは、本体が放った一撃よりも大分手応えが軽かった為に戸惑いの声を挙げたが、その次に構えていた盾へと撃ち込まれた『バスター』と呼ばれた個体の予想以上の重さを持った一撃によって、その場に留まる事が出来ずに吹き飛ばされてしまう。
思わず声を挙げたアレスに、先に一撃当ててガリアンの注意を引きつつ、そのまま脇をすり抜けて迫って来ていた『セイバー』が刃を振るい、ソレを間一髪の処で気が付いたアレスが得物を盾にしてギリギリの処で受け止め、反撃の刃を即座に返すも相手が手にしていた盾で防がれてしまい、そのまま互いに激しく刃で応酬を繰り広げ始めてしまう。
拮抗状態となっているアレスと『セイバー』へと介入しようとしてか、ガリアンを吹き飛ばした『バスター』が向かおうとしていたが、その横合いから突き出されたヒギンズの穂先にて、胸の部分で露出しているコアの近くに傷を付けられた為に、担いでいた大剣を構え直してヒギンズへと相対する。
「大変です!すぐに、援護を!!」
「……くっ!?止めろ!こっちは良い!
クソッ!?こっちは良いから、ガリアン起こして本体を攻撃しろ!!」
「……で、ですか……!?」
そんな二人を目にした女性陣は、どうにかして援護に回ろうと試みるが、ソレを当のアレスが遮る形で指示を飛ばす。
「良いか!?今は俺とオッサンとで抑えておけるけど、本来ならここに盾役と物理・魔法両方面からの援護が来ていたハズなんだ!!俺達じゃあ、そんな地獄みたいな状況にされたら勝てなくなる!!
うわっと!?だけど、あの本体をこのまま放置しておくと、その内破壊した部分を修復して来る事になりかねないんだよ!?だから、こっちは良いから、先に向こうをどうにかしてくれ!!
最悪、修復能力を止めさせるだけども良いから!!……って、危ねぇ!?」
盾で堅実に防ぎ、その後反撃してくる正当な剣術を使ってくる『セイバー』に対し、持ち前の身軽さ・素早さにて回避を優先させるアレス。
そんな彼の立ち回り故に、出された指示の所々で危なげな声が上がっているが、一応は問題なく回避しつつ女性陣へと檄を飛ばす。
指示を受け、本当にソレで良いのか、戦っているアレス達の援護に回る方が良いのでは?との疑問を抱く女性陣であったが、直接的に指示を受け取っていたセレンがその表情を引き締めると、タチアナとナタリアに対して指示を出す。
「……タチアナ様。お二人が戦われている方に妨害術を掛けられた後、本体の方にも追加で妨害術をお願い致します。
ナタリア様は、私がガリアン様を復帰させたら従魔達に指示を出して、本体の方へと総攻撃を仕掛けさせて下さい。よろしいですね?」
「……わ、分かったけど、でも、ソレで良いの!?」
「なのです!二人に加勢しなくて、本当に良いのです?」
「……私は、今はそうするのが最善だと判断致しました。
そうする事が、回り回ってアレス様を、お二人をお助けする事に繋がる、と。そう判断致しました。
急な話で申し訳ございませんが、従って頂いてもよろしいでしょうか?」
「……り、了解!」
「なのです!」
普段見せていた『清楚』や『おっとりとした』と言う表現がぴったりなセレンの様子とは一変し、鬼気迫る雰囲気にて放たれた指示を慌てて実行して行くタチアナとナタリア。
そうしている間にもセレンは魔法を発動させ、手数を重視してはいる為に威力はそこまでではないながらも、確実に本体へと着弾させて今も発動している修復能力の進行を阻害しながら、ガリアンが吹き飛ばされた方向へと回復魔法を放って行く。
一応、吹き飛ばされながらも指示は耳に入っていたらしく、回復魔法を受けて快調して立ち上がるや否や、アレスとヒギンズが切り結んでいる『セイバー』と『バスター』に脇目も振らず、本体へと目掛けて盾を構え、突撃を仕掛けて行く。
それに伴い、現状を確認する為に戦っている二人の方へとチラリとセレンが視線を向けると、軽快な動きにて相手にしている『セイバー』と渡り合うアレスの姿と、普段と変わらず飄々とした雰囲気のまま、ガリアンを防御の上から吹き飛ばす程の威力を秘めた攻撃を受け流して空振りさせ、確実に隙を作ってから反撃して傷を増やす勇姿が目の当たりになる。
それ故に、と言う訳では無いのだろうが、安堵と心配が混じり在った様な表情を一瞬だけ浮かべてから再度雰囲気を引き締めると、自らに与えられた指示を十全にこなすために、先に戦闘に入っている仲間達の元へと駆け出して行くのであった。
ちなみに、わりとまともに戦えている様にセレンには見えていましたが、二人とも結構ギリギリの処で戦っていたりします
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