『追放者達』、神鉄鋼傀儡の奥の手を目にする
「今だ!回り込んで膝を責めろ!!」
「注意は当方が引き付ける!行け!!」
「ライ、レフ、テル、ズルはガリアンさんの援護に回るのです!
ポット、トレー、ルーニー、イブローはヒギンズさんと一緒に攻撃を!
ヴォイテクはリーダーが仕掛ける時に一緒に畳み掛けるのです!!」
「「「「「「「「グウォン!!!」」」」」」」」
「ヴッ!!!」
「皆さん!怪我は気にしないで下さい!
どんな怪我でも、私が治して見せますから!!」
「今ならソイツの防御力も、アタシの妨害術で紙ッペラ並みに落ちてるんだから、次でキッチリ決めなさいよ!!」
怒号と轟音が、最奥の広場へと響き渡る。
未だに崩れたりする事は無いものの、『神鉄鋼傀儡』が両腕を再生(修理?)してから激しさを増し、果てには魔法まで使って来た事で周囲への衝撃は否応なしに増して行き、内部で直接戦っている『追放者達』のメンバー達は気にしていない様子だが、彼らの反撃も相まって確実に広場その物へもダメージが蓄積し始めていた。
それも在ってか、彼らは確実に足を潰してから背面にも見当たらなかったコアを破壊する、と言う手段を選択してから既に幾度かの交差が行われていた。
その結果として、先の宣言の際に背中から展開されていた魔法陣を発生させていると思わしき部分は既にアレスの手によって破壊され、右腕も肘の部分にてヒギンズと従魔達の協力の元に断ち斬られてナタリアのアイテムボックスへと収納されてしまっている。
異様に大きな上半身も、ガリアンが幾度も攻撃を弾いて転倒させていた事により、地面や壁との激突にて蓄積したダメージによって所々破損しており、そこから本体と思わしき骨格と何やら複雑そうな機構が見え隠れしている状態となっていた。
最初に見せられた修復能力も、どうやら破損の類いであれば回復が可能である様子だが、それが欠損まで行ってしまえば欠けた先が無ければ修復する事が出来ない上に、機構として組み込まれている部分を修復するのには時間が掛かるのか、もしくは修復が出来ないのかは不明だが、再度魔法陣を展開して来る気配が無い以上恐らくは心配しなくても大丈夫なのだろう。
幾ら相手が高位の魔物であり、その全身を強固な物質で形作っているとは言え、実際に倒した経験が在る上に、更に高位の存在を倒した経験も在る彼らにとっては、ある程度の不安要素が在ったとしても、流石に負ける事は無い、とも言える程度の強さでしか無かったのである。
とは言え、あくまでも『無理しなくても倒せはする』と言う程度のモノであり、別段『楽勝に過ぎる』だとか『ロハの雑魚にしか思えない』だとかと言う程に余裕綽々と言う訳でも無いので、片手間に相手にしていると、あっと言う間に逆転される事になるのであろうが。
もっとも、そんな懸念は無用、と言わんばかりに攻撃を続けた『追放者達』のメンバーは、リーダーであるアレスの指示の元に行っていた膝責めにより片方の足を破壊する事に成功し、元々そこまででも無かったとは言え、完全に相手の機動力を削ぎ落とす事に成功する。
そして、それ幸いと、未だにコアを発見する事は出来ていなかったが、物理的に破壊してしまえば大丈夫だろう、との思惑から一斉に距離を詰め、総攻撃を仕掛けようとしたその時であった。
「キンキュ……ハッ……イ。タイ……キケ……ソウ……イガイ。
キンキュ……ニツキ、サイシュウキノウ……シマス」
唐突に追い込まれたハズの『神鉄鋼傀儡』がそんな呟きとも折れない言葉を溢すと同時に、それまで幾度と無く攻撃しても破損させることすら出来なかった、人間で言う処の胸に相当する部分が、まるで戸棚か何かの様に左右へと大きく開き、内部に隠していた『神鉄鋼傀儡』本来の骨格とその胸に埋まる五つのコアを彼らの目前へとその姿を晒して行く。
本来であれば、ただ端に自らの弱点を晒すだけの行動であるハズのソレを目の当たりにしたアレスとヒギンズは、極大の悪寒が自らの背骨を貫くのを感じ取るや否や、突然の事態にどう対応して良いのか迷っていた他のメンバーに対しての指示や警告すら出すのが惜しい、と言わんばかりに脇目も振らずに飛び出して行く。
「『龍闘法・翔貫』!
……ダメだ、一つしか壊せない!?」
「『業火よ!太古より燃え盛る、灼熱の焔よ!その内に秘めし暴威を今こそ解き放ちたまえ!『爆裂する業火』』!!
……クソッ!?コレでも、まだ全部壊れないって言うのかよ!?」
ヒギンズが放った『龍闘法』の中でも、数少ない龍気を飛ばして攻撃する『龍闘法・翔貫』が開かれた胸部へと着弾するが、元々貫通力に特化した攻撃であった為に五つ在った内の一つを砕く事しか出来ずに終わってしまう。
それと入れ替わる様にして放たれたのは、大魔導級火属性魔法である『爆裂する業火』。
幾つものスキルを持ち、それによって魔法に不可欠な詠唱を短縮する事が出来たり、前衛や遊撃としては破格な迄の魔力量を持っているアレスをしても、完全に呪文を詠唱した上で保持している魔力の大半を注ぎ込む必要が在る代わりに絶大な破壊力を持つ、彼に取って気軽に切る事の出来ない『切り札』の一つだ。
大魔導級の魔法の中でも屈指の破壊力を誇るその一撃により、追加で三つのコアを砕く事に成功し、残る一つのコアにも皹を入れる事が出来た。
……しかし、言い換えればその一撃で全てに決着を付けるつもりであったのに、結果として仕留め損なってしまっている、と言う事になる。
その為に、絶好の機会で在ったにも関わらず、追撃して止めを刺す事も出来ずに、またしても例の身体を修復させる能力を発動され、壊したコアの内幾つかを修復しながら自らの身体を幾つもの部品へと分解して行く『神鉄鋼傀儡』の様子をただただ見せ付けられて行く。
そして、『神鉄鋼傀儡』から分離した部品が寄り集まり、人に似た形でありながらその顔には目の部分に入れられた顔を一周する切れ込み以外には何も無い、一部の絵描きが絵画を描く際に使用される人形に酷似している、アレスとヒギンズにとってはかつて見た覚えの在る二人から駆体が四体完成する。
他に、それらを形作っていないにも関わらず、その近くに留まり続けている幾つかの部品が残るのみとなった段階で、大分その大きさを小さくした『神鉄鋼傀儡』の胸の部分から壊れた状態のままのモノも含めて四つのコアが剥離し、新しく作り出されている駆体の元へと落ちて行く。
あのコアを落とすのは不味い!?
そう直感的に悟ったセレンとどうにか最低限の魔力が回復したアレスが、少し前と同じ様に弾幕を張ってソレをどうにかしようと試みるが、コア自体は『比較的柔らかい』とは言え本体と同じく神鉄で出来ている為に撃破する事も、押し留める事も出来ず、新しく作り出された駆体の元へもコアが落下する事を許してしまう。
呆然と『追放者達』のメンバー達が見詰める中、落下したコアの内で修復が完了していた二つが新たに作られた駆体の胸へと潜り込み、強烈な閃光を周囲へと放つ。
咄嗟に目を庇ったアレス達が視界を取り戻した時には、未だに三メルト近くに届く巨体を本体だけでなく、二メルト近い身長を持つ個体が二体立ち上がり、身体を構築していなかった部品を手元に引き寄せると、それらを武具として構えながら顔に入れられた切れ込みに光を灯すのであった。
「サイシュウキノウ、『レギオン』ノハツドウヲカクニン。モクヒョウノセンメツヲカイシシマス」
……ふ、増えた~!?
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