『追放者達』、神鉄鋼傀儡と戦闘する
「やるぞ!ガリアンとヒギンズで最前衛!
セレンはガリアンの回復以外は、攻撃の方に比重を大きく行動を!
タチアナは主に攻撃力系での支援術の後は、あんまり効果無いかも知れないけど妨害術をメインに!
ナタリアは、従魔達に指示して、適当に狙いを拡散させてくれ!攻撃は、通りそうならやる、程度に考えておけよ!」
「「「「「応!!!」」」」」
アレスの下した号令により、それまで通路の影から『神鉄鋼傀儡』の事を窺っていた『追放者達』のメンバー達が、得物を手にして鉱道の最奥へと躍り出る。
何故かそこは広場の様に拓かれており、奥に採掘用と思われる道具が幾つか転がされているが、遠目に見てもそれらには酷使された痕跡は見受けられず、アレスは広場の中央にて佇む『神鉄鋼傀儡』へと駆け寄りながら、より一層嫌な予感を胸中にて膨れ上がらせて行く。
しかし、そんな事はお構い無し、と言わんばかりに、広場へと足を踏み入れた彼らへと反応してか、頭部と思わしき場所を回して目の様な機関を輝かせながらそれまで直立不動であった体勢を動かし始める『神鉄鋼傀儡』。
「……ニュウシャ、カク……。コレ……、ハ……カイシ……マス。
スベ……ハ、マオ……ノタメニ……!」
「……喋った、だと……!?」
「ソコはオジサンも多大に気になる点では在るけど、今はそんな事気にしてられる程余裕は無いよ!
リーダー!来るよ!!」
大分掠れて不明瞭では在ったものの、言葉と思わしきモノを目の前の『神鉄鋼傀儡』が吐き出した事に驚愕するアレス。
しかし、状況は既に戦端を切ってしまっていたが為に、その事だけを気に掛けていられる状況ではなく、その上ヒギンズが飛ばした言葉の通りに攻撃も迫っていたので、仕方無く思考を一旦打ち切って意識を戦闘へと引き戻すアレス。
「……さて、では当方で防ぎきれるモノか、試させて貰うぞ!!
ぬぅりゃあ!!!」
ギャイィィィイイイイン!!!
同じ前衛であるアレスとヒギンズが回避を選択する中、唯一向けられていた攻撃を防御する選択をしたガリアンが、その場に腰を落として盾を構え、真っ正面から『神鉄鋼傀儡』の拳を受け止める。
ほんの少し前に物理特化型の『不死之王』の攻撃を見事に防いで見せていた事もあり、それよりも適正討伐ランクの低い『神鉄鋼傀儡』の一撃ですら受け止めて見せたガリアンだったが、流石に互いの質量差とそこから来る出力の差を瞬時に理解したからか、途中から受け止める事は下策として諦め受け流す事にシフトさせる。
それにより、甲高く耳を突く金属音を周囲へと撒き散らしつつ、新調したばかりの盾の表面に小さくは無い傷を刻まれながらではあったものの、圧倒的な巨体から放たれた攻撃を見事に誰もいない方向へと受け流し、誘導して見せた。
当然、そうなれば片方とは言え空振った拳が地面へとめり込む事により、必然的に身動きが取り辛くなる。
で、あれば、そんな晒された隙を経験者二人が見逃すハズも無く、一切の慈悲や躊躇いを感じさせない動作にて目の前に晒された関節部分へと得物を振り上げ振り下ろす!
ガィィィィイイイン!ギャギャギャッ、ギリギリギリ、ガリッッッッッッ!!!
当然、彼らとしても、相手の身体を構成しているのが何なのか、と言う事は否応なしに理解しており、一息に断ったりする事は出来ないだろう、とは考えて刃を振るったのだが、やはり普通の個体とは何かしらが異なっているらしく、彼らの刃が上手いこと相手の身体に食い込んでくれずに弾かれてしまう。
しかし、そんな事は以前も同じ魔物を倒した経験の在る二人からしてみれば『当たり前』の事であったらしく、特に動揺する様子も見せずにアレスは後退して距離を取りつつ左手を向け、逆にヒギンズは更に接近して関節部へと自らの拳を押し当てる。
「取り敢えず、これでも食らっとけ!『凍れて落ちよ!『凍結の戦輪』』!」
「……ふぅーーーーっ、ほいっと。『龍闘法・鎧貫』!」
……ギ、ギャギャギャギャギャッ、ビシビシッ、パキィン!!
…………トン…………ドパン……!!!!
アレスの放った大魔導級の魔法によって作られた、巨大な氷の戦輪が肘の関節部分へと殺到し、目に見えない程に細やかな無数の刃を回転させて『神鉄鋼傀儡』の身体を削り取りながら、自らを構成している凍気によって相手の身体を凍結によって侵食して行く。
そしてヒギンズの放った一撃は、一見拳を軽く押し当てただけにしか見えていないが、その実は龍人族の身体能力を支えている要素の一つである『龍気』と呼ばれる特殊な力を運用する『龍闘法』と呼ばれる武術の技の一つであり、主に物理的な硬さを誇る相手に対して使われる『内側を直接壊す』技術を使用しての攻撃で、生身の相手に放てば熟れすぎたスイカが内側から弾け飛んだ様な状態となるのだが、如何せん相手は鉱物の塊であったが為か目に見えての大きな損傷は無い様に見えた。
しかし、アレスが魔法で削り取っているのとは逆側から同じく肘の関節に打ち込まれたその攻撃は、どうやら内部で決定的な破損を産み出してくれたらしく、アレスの魔法による侵食のみではまだ動こうとしていた肘の関節が、鈍い金属音を響かせながらその動きを止めて固まってしまう。
そうなってしまえば後は簡単!……と行ければ良かったのだろうが、生憎と肘の関節部分の三分の一程迄を削って食い込んだアレスの刃はそこで効果時間が終了してしまったが為に消滅し、ヒギンズもそう容易に何度も放てる技ではなかったらしく、肘が動かないままに肩の動きで振り回された右腕を回避する為に、その場から飛び退いて距離を取る事を選択する。
ソレを追撃するかの様に伸ばされた左腕に対し、先に退避していたアレスと後方で待機していたセレンの魔法による援護射撃が降り注ぐが、流石は『神鉄鋼傀儡』と言うべきか、まともに食らえば格上の『不死之王』ですら只では済まないであろうその弾幕を、二人が手数を重視して低位の魔法を選択していた事も無関係では無いのだろうが、持ち前の驚く程に屈強な身体のみによってそれらの全てを防ぎきって見せたのだ。
が、流石にダメージは防げても、着弾の衝撃までは防ぎきる事が出来なかったらしく、暴風や驟雨の如く降り注ぐ二人掛かりの魔法の弾幕により伸ばされていた腕はそれ以上進むことは出来ず、無事にヒギンズは安全圏へと退避する事に成功する。
そんな彼と入れ替わる様にして飛び出した森林狼と月紋熊が、二人が展開した弾幕によって勢いを失い、最早ただ伸ばされているだけとなっていた左腕の手首へと狙いを着けて、次々に飛び掛かり、突撃を仕掛けて行く。
「ガッ!?」「ギィ!?」「ググッ!!」「ゲェッ!!」「ゴンッ!?」「ギャンッ!?」「グルルルッ!!」「グォォオオオンッ!!!」「ヴゥゥゥウウウウウオォオ!!!」
流石に牙では文字通りに歯が立たず、爪もお世辞にも通じているとは言い難い状態ではあったが、例の干渉を受けてから手にした巨体による体当たりは、先の弾幕と同じ様に相手へと衝撃と言う形にて影響を与えていたらしく、何度も繰り返される内に伸ばされていた左腕の手首から金属同士が擦れ合う様な嫌な音が響き始める。
ソレを受けてか、今度は左腕を引き戻した『神鉄鋼傀儡』は、再度頭部と思われる部分の目の様に見える箇所を光らせると
「キケ……サイ……オオハバ……ショウ。ハソン……ヲシュウ……。ゼン……ヲカイ……シン……ヲハイジョ……マス!」
と、またしても言葉の様なモノを聞き取り辛い掠れた様な声にて呟くと、両腕に魔法陣の様なモノを右肘と左手首へと展開させると、それまでぎこちなくなっていた動作を再び滑らかなモノとして、再度眼前の『追放者達』のメンバーへとその拳を振り上げるのであった。
『侵入者を確認。これより、排除を開始します。全ては、□□様の為に』
『危険性再確認、大幅上昇。破損箇所を修復開始。全機能を持って、侵入者を排除します!』
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