『追放者達』、鉱道の最奥で目標と遭遇する
それなりに広く作られ、その上で木材によって補強の為されていたであろう事が窺える入り口を潜り抜け、鉱山の内部へと脚を向ける『追放者達』達。
入り口付近は、外部から注ぎ込まれる陽光によって多少薄暗い程度で済んでいるが、少し進めば内部は完全に暗闇に閉ざされてしまうのだろう事が窺えたので、予めセレンに依頼して光源となりうる光球を幾つか先行して用意しておき、鉱道を辿って中へと入って行く。
内部は、外側の入り口付近を連想させる様に木々での支えが施されており、その為か外周部よりも一回り程通路が細くなって来てしまっているが、その分強固に地盤を固めている様にも見える為、何故か安心感が在るような、何時崩れて来るか分からない分そうでない様な、不思議な彼らへと心象を与えて来た。
しかし、その程度で怯んでいてはお話にはならないので、意外な程に広く取られている鉱道内部にて隊列を展開し、万が一ここもダンジョンと化していました!とか言うオチが来ても大丈夫な様に警戒しながら奥を目指して進んで行く。
「…………そう言えば、何故ここは閉鎖されておるのだ?
当方の見立てであれば、入り口付近の浅層であれ掘ればまだまだ出てきそうなモノである様子だが?」
「あ!それは、アタシも思ってた!
こう言う鉱山の持ち主なんて、金にがめつい守銭奴だって相場は決まっているし、そう言うヤツって大概は私兵の類いを囲ってるのに、わざわざ金の成る木のココを閉鎖して、その上身銭を切ってまでアタシ達冒険者に依頼するなんて、一体何を考えてる訳?」
「……純粋に、ご自分で雇われている方々の実力が、目標の魔物を打倒しうるレベルに達していなかった、と言うことでは無いでしょうか?」
「なのです!鉱山を閉鎖したのだって、目当てにしていた換金率の高い鉱物が、目標の『神鉄鋼傀儡』が居着いている付近で産出されていたから、とかじゃないのです?」
「……うーん、でも、そう言う場合って、大概はタチアナちゃんが言ったみたいに閉鎖するって処まではしないんだよねぇ……。
幾ら利率が悪くても、鉱山なんて動かしていればソレだけでお金を産んでくれる金のガチョウなんだから、それこそ奥に奥にと掘り進めないで横方向に掘れば幾らでも出てきただろうし、何なら奴隷だとかの安くて使い潰しても構わない様な人員を送り込んで採掘させる、だとかをしても良い訳だしね。
でも、ソレをしていない、となると、何か訳在りなんじゃないのかなぁ?と思わざるを得ないよねぇ」
「まぁ、そうだったとしても、そうでなかったとしても、取り敢えず俺達は素材が必要なんだから、倒す他に無いだろうよ?
それで、話は変わるけど、その辺の壁真銀が比較的多く含まれてるみたいだけど、一応掘ってくか?
依頼書にバッチリ『採掘可』って書かれてたし、鶴嘴も持ち込んで在るけど、どうする?」
「……ふむ?では、考えても分からぬ裏事情はここまでとしておくとして、資金と素材の足しとして掘っておくか?」
「そうだねぇ。
オジサン達にとってはもうそこまででも無いけど、真銀装備って言ったら冒険者にとっては憧れの装備の一つだからねぇ。結構なお値段で売れると思うよ?」
「よっしゃ!掘って掘って掘りまくるわよ!!」
「なのです!回収と運搬はボクに任せるのです!!
君達に周囲の警戒は任せるので、キッチリ見張っておくのです!」
「「「「「「「「ウォン!!」」」」」」」」
そんな感じで、途中から周囲の警戒はナタリアの従魔に丸投げし、時折アレスが習得していた鑑定系のスキルによって判別した価値の高い鉱脈を根刮ぎにする勢いで採掘しながら、奥へと潜って行く。
幸いな事に、この鉱山は目的の鉱脈のみを目指して深化させたものであったらしく、時折分かれ道が現れる事は在ったが基本的に一本道であり、土地勘の無い彼らの探索を容易なモノにしてくれていたのだが、その為に比較的スムーズに進めた事も相まって短時間にて鉱道の最奥へと到着する事にも成功してしまった。
「……アレが、今回の依頼の目標でもある『神鉄鋼傀儡』、か……初めて見るな……」
「あの輝き……アレが、噂に聞きし神鉄鋼、ですか……」
「……こう、分かっちゃいたけど、コレが、Aランクに分類される魔物の圧力、なのね……」
「……あの時の『不死之王』よりは幾らかマシなのですが、それでもやっぱり凄い圧力なのです……!?」
最奥にて佇む、黄金とも白銀ともつかない色合いの金属にて出来た無数のパーツによって人型に似た形の全身を構築された、身の丈四メルトに迫る程の巨体でありながら、下半身に比べて非常に大きな構成になっている上半身から繋がるその両腕は巨木の様に長大であり、真っ直ぐ立っているにも関わらず拳が地面に着きそうになっていた。
そんな威圧感すら放つ異形を前にして、初見のメンバー達は口々に驚嘆の声を漏らしていた。
……しかし、過去に既に相対し、かつ打破した経験を持つ二人は、目の前に現れ、浮かべられた灯りから放たれた光を反射してキラキラと輝きを放つソレを前にしながら、何故か眉を顰めて首を傾げていた。
「……ねぇ、リーダー。オジサン、君に一つ聞きたい事が在るんだけど、良いかな?」
「……奇遇だな。俺もオッサンに聞きたい事が在ったんだ。
どうせ、オッサンが聞きたいこともアレだろう?過去に倒した事の在る『神鉄鋼傀儡』について、だろう?」
「いや~、リーダー相手だと話が早くてたすかるよぉ。
それで、実際の処はどうだったんだい?リーダーが戦った事の在る『神鉄鋼傀儡』って、アレみたいな感じだったかい?」
「……そうやって聞いてくる、って事は、オッサンの時は違ったらしいな。
因みに、俺からの答えは分かってるだろうが『否』だよ。
俺が見た時は、身の丈は精々二メルト弱程度だったし、彼処まで人型からかけ離れた様な姿もしてなかった。少なくとも、もっと『人』に似せられた姿をしていたよ」
「オジサンが倒した事の在るヤツも、そんなかんじだねぇ。
それに、オジサンが見た事の在るヤツは、彼処まで複雑で数多くの部品で形作られている、って感じじゃなくて、どっちかって言うともっとシンプルで使われてる部品も少ないな造りになってたと思うんだよねぇ……」
「そこは同意だな。
おまけに、本来なら体表に出てるハズのコアも見当たらない。ただ端に背中側に在るのなら良いが、そうでなかったらいよいよもってヤバい事になりかねん。
……でも、こうして依頼に在った通りの存在が、指定されていた場所に居るって事はつまり、こいつを倒すしかない、って事でも在るわけだ。例え目の前のこいつが、何やらキナ臭い存在だったとしてもだ。
俺達が素材を欲する以上は、なおのこと、な……」
「…………まぁ、そうなっちゃうよねぇ……」
若干疲れた様な雰囲気にて、ヒギンズがアレスに対してそう返す。
返されたアレスとて、依頼先にてこんなよく分からないモノが出てくるのであれば最初から受けていなかったが、既にこうして現地に来てしまっている以上、素材も必要としている為に戦いもせずに撤退する、と言う選択肢は最早無い。
なので、二人は敢えて目の前に見えていたリスクに目を瞑ると、未だに圧倒されていた他の四人へとアレスが声を掛けて渇を入れ、新たに購入したばかりの得物を抜き払うと、ヒギンズと共に内心で心配を抱えながらリーダーとして号令を下すのであった。
次回、戦闘回
そして、ゴーレムの正体は如何に!?
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