『追放者達』、鉱山へと向かう
今回若干短めです
取り敢えず依頼を受諾する事をシーラへと伝えたアレスは、皆の元へと戻りどんな依頼を受けたのかを説明する。
「――――って事だ。詳しく知りたいなら、取り敢えずは依頼書を見てくれ。
で、依頼主に対しての顔合わせ等は必要ないみたいだし、案外と近間に在るみたいだからコレから向かおうかと思ってるんだけど、誰か何か不都合が在ったりするか?」
「いや、当方は構わぬぞ?必要なモノは一通り持ち歩いておる故に、何時でも出られるのでな」
「オジサンも、大丈夫だよぉ。
でも、女の子達は何かと準備がいるだろうから、一旦戻ってからの方が良いんじゃないのかなぁ?」
「ア、アタシは、別に大丈夫だけど……」
「じゃあ、ボクは一旦戻るのです!あの子達も連れて行かないと、ボクでは貢献出来ないのです!」
「あ、そう言えば、あいつら連れて来て無かったっけ?
じゃあ、一旦戻るとするか?」
「……あ、でしたら、途中で寄り道しても大丈夫でしょうか?
私も、万が一の場合に備えて、魔力回復用のマナポーションを仕入れておこうかと」
「……ふぅん?じゃあ、三手に別れるかい?
オジサンとタチアナちゃんとで先に通用門の手続きを進めておくから、ガリアン君はナタリアちゃんを送って行って、その後で従魔の子達に装具を着けたりするのを手伝ってあげなよ。
それで、セレンさんにリーダーが着いて行って、買い終わり次第合流する、って感じでどうかな?」
「……まぁ、別に構わないけど……?」
「私は、そちらの方が有難いですので、先に行きますね?
さぁ、アレス様。行きましょうか♪」
「……え?別に腕組む必要なんて……って力強っ!?
ちょっ!?待って!?歩くから、自分で歩くから引っ張らないで!?」
半ばセレンに引き摺られる形で、腕を組まれたまま連行されるアレス。
何故か嬉しそうで楽しそうなセレンと、何故こうなっているのかさっぱり理解出来ずに困惑し、それでも幼馴染二人と似た様な事は一通り経験した事が在る(させられた事の在る)為に、慌てる素振りは見せないアレスの組み合わせは通行人からも奇特に見えたらしく、周囲の視線を集めながらもソレを気にする事もなく普通に進んで行く。
そんな二人を生暖かな視線にて見送った他のメンバー達も、それぞれで別れて行動を開始して行き、最終的には一時間もしない内に仮の目的地であった南の通用門を使い、首都アルカンターラを後にするのであった。
******
ある程度アルカンターラから離れた時点でそれまで乗っていた橇から一旦降り、森林狼達に取り付けていた装具の類いのベルトを緩める。
そして、彼らにとっては最早『本来の姿』となりつつある巨体へと戻ってもらい、再度装具を取り付けてナタリアのアイテムボックスにしまっていた新しい橇を牽いて貰う。
「……ひ、ひょぉ~~~~~~!?
は、早っえ~~~~~!?」
「ぬははははははははははっ!!!
自らの足で駆けている訳でもないと言うのにこれとは、中々に爽快ではないか!!」
「……ちょっ、ちょっと、速すぎはしませんか!?
明らかに、安全な速度では無いと思うのですが!?」
「え?良いじゃない、別にこのくらい!!
あの子達も思い切り走れて喜んでるみたいだし、見える限りだと他には誰もいないんだから、少し位速くても大丈夫でしょう!?むしろ、もっと速くても良い位じゃない!?」
「…………あ、あんまり速くするのは、止めてくれるとオジサン助かっちゃうんだけどなぁ……。
あんまり速くし過ぎると、少しの揺れでも増幅されて…………うっぷ!?」
「ちょっ!?流石に、新品の橇の上で吐くのは止めて欲しいのです!?
依頼書によればもうすぐ到着するハズなのです!だから、それまで我慢するのです!?」
焦ったナタリアの声に呼応するかの様に、次第に周囲の景色から木々の緑が消え始め、更に数分も進むと視界が開けて目的地である鉱山と思われる禿げ山が見え始める。
ソレが見えるや否や、それまではギリギリで青い顔をしながら口元を押さえていたヒギンズが未だに走行中の橇から飛び降り、急いで近くに在った繁みの影へと駆けて行く。
半ば呆れの視線を向けるメンバーの中で、唯一その表情に心配の色を浮かべて水筒を手にし、声を掛けながら繁みへと向かって行くタチアナ。
そんな彼女へと、若干の弱々しさは残りつつも言葉を返し、口元を拭いながらヒギンズが自らの足で進み出てくる。
「……ちょっと、大丈夫な訳?護衛役のアンタが確りしてくれないと、後衛のアタシが困るんだからね?体調が悪いなら、ちゃんと言いなさいよ?はい、水筒」
「……あぁ、ごめんねぇ。心配掛けたみたいだね。
大丈夫さぁ。ちょっとばっかり、自分の足でないのにあんな速度で動いている、なんて体験をしちゃったものだから、内臓がビックリしちゃってね?
でも、最期の方は何となく慣れてきた気がするし、今も出すだけ出したら気分も落ち着いたから、もうこんな醜態を晒しはしないさぁ。
あと、水筒ありがとね?有り難く使わせて貰うよぉ……」
そう言って水筒を受け取り二三回口を着けると、丁寧にその部分を取り出したハンカチで拭き取ってからタチアナへと返すヒギンズ。
……しかし、そんな彼の気遣いからの行動は、どうやら彼女にはお気に召さなかったらしく、何故かジットリとした視線と不満を隠そうともしない表情を向けられたヒギンズは、何か不味い事でもしただろうか?と必死に記憶を辿ってみるが、特にそんな行動を取った覚えも無い為にただただ狼狽するのみであった。
そんな二人へと、先程とは別の意味合いで呆れた様な視線を向けながら、いつぞやと同じく手を叩いて全員の注目を集めるアレス。
「はいはい、そう言うじゃれ合いは街に戻ってからやってくれ。
取り敢えず、依頼書には目を通したよな?今回の目標は『神鉄鋼傀儡』。
知っての通りに、目標の身体の殆んどを構築している『神鉄鋼』の性質上、物理は殆んどその防御力によって防がれるし、魔法は比較的通る、って程度にしか効かない。おまけに、その防御力に任せて突撃して来て、異様に硬い拳でぶん殴って来る相手だ。
でも、その分鈍いし、弱点のコアも体表に在る事が多いから倒すのは不可能じゃないし、俺もヒギンズも戦った経験の在る相手だから大体の戦い方は分かってる。
正直、俺達なら余程大きなヘマをしなければ十分に倒せる相手だから、油断するんじゃ無いぞ!良いな!?」
「「「「「応!!」」」」」
大雑把ながらも、伝えるべき事は確実に伝えた訓示で一体感を煽ったアレスの号令により、普段の通りに隊列を組んだ彼らは、簡単な封鎖の施されていた入り口から鉱山の内部へと踏み行って行くのであった。
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