『追放者達』、装備を求める
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ギルドの調査隊を案内し、正式に物件を『追放者達』の共有財産として受け取った数日後。
彼らの姿は、とある武具専門店に在った。
「…………ふむ。まぁ、こんな処であろうな……」
「……申し訳ございません。現在店舗に在庫として在る中では、ソレが精一杯でございまして……」
そう呟きながら、店頭にて飾られていた大盾を装備して具合を確かめるガリアン。
彼は先の『不死之王』との戦闘にて得物たる大盾を破壊されてしまっており、その代わりを求めてこうして武具屋へと訪れていたのだ。
鎧の方も大分ダメージが嵩む羽目になってしまってはいるが、そちらは予備も在るので後回しにし、先に盾役として必要不可欠な相棒である盾の方を探しに来たのだ。
パーティーハウス用に、と溜め込まれていた資金を、既に建物自体はほぼ無料で手に入ったし、そうして得物が砕かれたのも自分達の事を守ってくれたのだから、と言う事で快く解放する事に決定したアレス達によって送り出され、以前のパーティーとの扱いのギャップ(前のパーティーはこう言う時は全て自費負担だった)に涙しながら、こうしてアルカンターラでも知る人ぞ知る名品を扱う武具屋へと足を運び、店舗に在るモノの中では『コレだ!』と思う一品を選び出して取り回しや重量を試用して確かめていたのだが、その表情はあまり晴れやかなモノとはなっていなかった。
「…………一応、真銀で表面を加工し、芯材として黒鉄を使用した逸品だと当店は自負していた品なのですが、やはり、ご不満でしょうか……?」
「…………うむ。忌憚の無い事を言ってしまえば、やはり不満な点は多々在るな。
コレでは軽過ぎるし小さ過ぎる。幸い、材質は良いモノを使っている様子であるし、鍛えた鍛冶師の腕も確かなモノであったのだろうから使うのには不足せぬであろうが、当方の好みに合致するモノでは……」
「……そう、でしたか……。
……しかし、先程も申し上げました通り、現在店舗にて取り扱っております在庫の中ではソレが最上級の大盾でございまして……。
おまけに、当店は主に人族の方々を対象とした商品を取り扱わせて頂いております。なので、獣人族の方々、しかもお客様の様に一際体格のご立派な方々に向けたモノとなりますと、当店と契約している鍛冶師の方々もあまり造りませんので、極端に数が少なくなってしまうのです。
ソレ以上や細かい要望の反映等を望まれますと、やはり造りおきのセミオーダーよりも、一から造られるオーダーメイドでご注文される方がよろしいかと……」
「……しかし、そうすると少なくない金子が掛かる故なぁ……。
当方としては、是非とも誰かに願いたい処では在るし、手元にもその程度ならば出来なくは無い程度に財布も膨れてもおるのだが、とある理由から心情的に使いきるのは憚られてな……。
それに、オーダーを出すにしても手元に使えそうな素材が碌に無い故に、まずは素材集めからする羽目になってしまうであろうのがなぁ……」
「メインの装備も無しに挑んで返り討ち、と言う事態に陥る冒険者の方々は、毎回一定数必ず居られますからねぇ。
お客様がそうなりはしないと信じておりますが、何事も可能性は否定できませんので……」
「……うぅむ、困ったな。見た限りでは、値段的にも材質的にも取り回し的にもコレなのだろうが……せめてもう少し大きければなぁ……まぁ、間に合わせ、と言う事でコレにしておくか……」
「えぇ、ソレがよろしいかと。最近噂の『追放者達』の方に使って頂けるのでしたら、当店としても良い宣伝になりますので勉強させて頂きます。
とは言え、コレレベルで『間に合わせ』となりますと、生半可なモノでは本採用にすらならなさそうですねぇ。
それこそ、ドラゴンの素材を使った装備でもないと、お客様のご要望に答えるのは難しいのではないでしょうか?」
「……ドラゴン、か……。
まぁ、機会が在れば、と言った処か。もっとも、早々あるとも思えぬが、な……」
店側もガリアンも、双方ともに妥協して手にした盾を背負い、ギルドへと向かうガリアン。
何時もの様に併設された酒場のテーブルを占拠している仲間を見付けると、それぞれ何処かしらが新調されているメンバー達へと自らも席に着きながら成果を問い掛ける。
「……その表情を見れば大体察せられるが、成果はどうであった?
当方は、言わずもがなかも知れぬが、ほぼ『ハズレ』と言っても良いだろうよ」
「まぁ、そこは俺も同じく、だな。
これまで使ってた長剣が例の一戦でイカれたから新調したかったんだが、こっちもハズレ引いたみたいだわ。
一応、こっちに来てた時に出来た顔馴染みの鍛冶屋の方にも顔を出してみたんだが、そっちも新しく打つなら時間が掛かるし、何よりそれ相応の素材を持って来やがれ!と追い払われたよ」
「私も、最後の一撃で杖の宝珠が砕けてしまっていたので新調したかったのですが、中々良いモノが無くて……。
流石に、私の魔力量に耐えられる様なモノは早々無い、と言われてしまいました……」
「オジサンも、あんまりだったねぇ。
オジサンも例の一戦で、得物はともかくとして鎧の方をちょっとばっかり派手に壊されちゃったから、新しいヤツ探しに行ってみたんだけど、やっぱり早々簡単には見付からなかったよ。
まぁ、前使ってたのと同じレベルのヤツを求めるって方が頭おかしい、って言うのは分かってるんだけど、どうしてもねぇ……やっぱり、また狩らなきゃだめかなぁ?Sランク指定されてる魔物」
「……まぁ、そう言う意味では、アタシ達もハズレ引いたかな?
例のコア壊そうとして、二人して矢鱈滅多に短剣振り下ろしてたんだけど、コアが堅すぎて切っ先が潰れた上に刃零れまでしちゃってさ?
流石にアタシじゃ直せなかったからノミ市覗いて買い換えに行ったんだけど、中々良い掘り出し物が無くってさぁ……」
「なのです!ボクは初めて行ったのですが、タチアナちゃんはとても慣れている様子だったのです!
見るモノで場所を絞ったり、目利きを効かせて品物を見極めたり、時折忍び寄って来たスリを撃退したり、見ていてとても格好良かったのです!」
「……いや、格好良かった、とか言われても、アタシ的にはちょっと微妙なんだけど……」
「……ふぅん?ここにも、そう言うの在るんだ?
じゃあ、今度暇な時にでもオジサンも連れてってくれないかい?オジサン、そう言う処が大好きだから、近くに在るのなら覗いておきたいんだよねぇ」
「……え?そ、それって、二人きりで、って事?」
「……?……あ、そっか。まぁ、そうだよね。
オジサンとしては二人で、ってつもりだったけど、流石にこんな草臥れたオジサンと二人だと要らぬ勘違いとかされかねないし、この話は今度に「行く!絶対に、二人で、行くから!!」しようか……って言うつもりだったんだけど……?」
「…………処で、アレス様は行き付けの鍛冶屋が在るのだとか。
そこは、どの様な処なのでしょうか?私、少々興味がございますので、今度案内しては頂けませんでしょうか?」
「……へ?興味が在る?鍛冶屋に??
……随分と変わった趣味してるんだな。まぁ、案内するだけなら別段構わないけど、あんまり面白いモノでも無いと思うけど?」
「……いいえ?アレス様とであれば、何処でもそれなりに楽しめますよ?少なくとも、私は、ですが」
「……さいですか……」
「……じゃあ、ボク達も今度何処かに出掛けるのです?」
「…………何が『じゃあ』なのか分からぬのだが……?
まぁ、構いわせぬが、女子が好む様な場所になんぞあまり心得は無いぞ?それでも構わぬのか?」
「ふふっ、本当は分かってる癖に、なのです♪
ボクも、ガリアンさんと一緒なら、何処でも構わないのです♪」
そんな、愚痴とも惚気ともおふざけとも取れない会話を繰り広げた『追放者達』だったが、取り敢えず当面は資金を溜め、有用そうな素材となる魔物の討伐依頼は積極的に受けて行く、との方針を決めた後、何か良い依頼でも残っていないかな?と依頼書の張り出された掲示板を覗きに行くのであった。
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