『追放者達』、報告する・3
取り敢えず、キャラ紹介は次の機会に
予定通りに今回から新しい章に入ります
お楽しみ下さいませm(_ _)m
「――――と言った感じで強化されたボスをギリギリで討伐して、こうやってどうにか戻ってきた、って訳ですね。
一応、証拠になりそうなモノは……このコアの欠片位しか無いので、信じるも信じないもそちら次第となりますけど」
「……では、今現在マルクス様が吹聴されている『自分がダンジョンの全てを踏破し、ボスもこの『追放者達』の美しく俺と愛し合っている女性達と力を合わせる事で倒すことに成功した』との事実は無い、と言う事でよろしいのですね?」
「当然。むしろ、なんであのゴミまだ自由の身の上なんで?
アイツのお陰で、俺達死ぬ所だったんだけど?
それとも、この程度じゃ俺達がコアを破壊した、って証拠には足らないとでも?」
そう一方的に言い切って、一応回収しておいたコアの欠片をアイテムボックスから取り出し、目の前の応接机へと強めに叩き付ける様に置いて見せるアレス。
その動作は何処か投げ遣りであり、言葉遣いも普段のそれよりも幾分か荒いモノとなっていた。
……まぁ、ソレも無理は無い事だろう。
何せ、散々命の危機に晒された後に驚異的な事実を知らされて、肉体的・精神的に多大な疲労を蓄積させていただけでなく、余計なおまけまで運搬して外を目指す羽目になり、そのおまけが運搬の途中で運悪く目を覚ましてしまったが為に不快な言動に晒され、その上で今もソレが不愉快極まるでっち上げの話を事実として周囲へと吹き込んでいるのを、ギルドへの報告が必要不可欠だから、と呼び止められて拘束されてしまったが故に潰す事が出来ずにいるのだから、致し方無いと言うモノだろう。
一応、例のおまけが垂れ流してくれている法螺話の火消しは他のメンバー達にお願いしてあるが、元々人の良い部分が少なくない女性陣や、根本の部分が武人気質な処があるガリアンには苦手な分野であるハズ故に、海千山千のヒギンズをメインに添えてはいるが、はたしてどの程度効果が現れるのかは未知数な部分が多いために、やはり心配なモノは心配なのだろ。
そんな心配と態度が伝わったのか、申し訳無さそうな表情にて縮こまってしまうシーラ。
半ば無理矢理引き留めて様々な事に対して質問をしてきた上に、彼の機嫌が悪くなっている原因であるとの自覚が在るらしく、どうしたものか、と頭を悩ませている。
一応、彼女も仕事であるが為に、一通りの話を聞き終えたからはい解散!と言う訳には行かず、然りとて今回の件に半ば無理矢理巻き込み、報酬にて釣って参加させたと言う負い目も在るが為に、どうしたら良いのか対応に苦慮している、と言う事なのだろう。
もっとも、こうして無愛想かつ態度が幾分か荒れていたとしても、疲れている中こうして当日に律儀に報告に来ている以上、アレスの方としても彼女に対しての悪感情の類いがそこまで大きく存在している訳でもないので、言ってしまえばそれらの心配は只の杞憂であったりするのだけど。
「……それで、例の報酬って支払われるのはいつ頃になる予定で?
と言うか、そもそもキチンと支払うつもりが在るんですかね?」
「そこは、問題ありません。まだ書類上ではありますが、『追放者達』の皆さんのパーティーランクは既にCランクまで挙がっていますし、追加報酬も確認が取れ次第お支払が出来るようになるハズです」
「……確認?と言う事は、またあそこに入って調査してくる、って事で?」
「……?えぇ、そうなりますが?
お話によれば、既にコアの破壊は成されていますので、魔物も消滅してトラップの類いも発動しなくなっているハズですよね?
でしたら、既に安全にはなっているハズなのでその確認と、アレス様の供述の通りにボスの残骸が残されていればソレの回収をして、それから物件のリフォームに入る事になる予定ですが、ソレが何か?」
「……ソレなんですけどね?多分リフォームはいらないかと。後、調査の方も出来れば後日にして貰えると助かりますね。主に俺達が」
「………………はい?」
突然出されたアレスからの『待った』に、戸惑いが隠せないシーラ。
しかし、アレスの方としてもそうなるのは当然だ、と言う感覚は在ったらしく、手で『取り敢えず落ち着いて』と示してから再度口を開く。
「……いや、ね?普通はダンジョンって、コアを破壊されたら内部の構造とかは元々の状態に戻るって事は知ってますよね?」
「……えぇ、度々見られる外観からはかけ離れた内部の空間拡張や、自然が再現された異空間状態になっている状態でも、ソレが元になった建物なり洞窟なり地下空間なりに戻るハズですが、それが……?」
「…………いや、普通はそのハズなんですが、何故かあの物件内部の空間拡張は解除されていなくてね?
おまけに、俺達が近くに居れば大丈夫みたいなんだけど、そうでないと魔物はともかくとして、トラップの類いは変わらず発動するみたいでさ……だから、確認の為の調査だ、って言うのであれば、最低限俺達が補給と休憩とを済ますまで待って貰えません?」
「……そう言えば、そんな報告も来ていた様な気がしますが、もしかしてソレって本当だったんですか!?」
「多分それかと。
まぁ、無理にでも行く、と言うなら止めはしませんが、俺達の誰かは連れて行かないと大変な事になりますよ?
そうでないと、ボスとして『不死之王』が湧いて来る様なダンジョンを、トラップのみで魔物は出てこないとは言え常に警戒しながらさ迷う羽目になりますけど、どうしますか?」
「…………それって、どのくらい掛かりますか?」
「最低限で、と言うなら、一時間位は欲しいですね。
しかも、その場合は機嫌最低で特にフォローするつもりも湧かない様な状態の誰かが一人だけ、と言った感じになりますんで、道中や調査中の空気は保証出来ませんし、もし調査に派遣された連中が女性陣にちょっかい出そうモノならそいつらの命の保証も出来なくなりますけど、それでも構いませんよね?」
「すみません調査は明日にしますのでどうか全員でお願いしますこの通り!!」
アレスからの、本気かそれとも冗談なのかイマイチ判断に困るその言葉に、思わず一息で懇願の言葉を吐き出しながら頭を下げるシーラ。
多少大袈裟に言いはしたが、それでも嘘の類いは言っていないアレスからすれば、死闘を終えてへとへとに疲れきり、その上で余計なおまけを運搬する羽目にまでなり、更に言えばそのおまけが好き勝手な事を吹聴してくれているらしい、と言う状況まで揃ってしまっているのだから、その程度待つ位はしやがれ!と言いたくなったとしても、それは当然の事として受け入れられるだろう。
……まぁ、アレスはアレスで、あそこでボスを倒し終えた後に聞いた諸々の事実や、突然湧いて出たダンジョンマスターの事だとかは黙りを決め込んでいるので、その辺がバレたら多少面倒な事になるだろうが、そこは知られなければ良い話なので恐らくは彼が口にする事は無いだろうけど。
とは言え、そんな裏事情を知らないシーラだが、今回彼ら『追放者達』に対しての交渉窓口として機能しているのは彼女であるのに間違いは無いし、既に彼女は条件を出してしまっている為に後から覆される事は基本的には有り得ない。
なので、軽く明日の集合時間と場所を確認したアレスは、彼女から『調査は明日』(今日はやらない)と言う言質を取ったが為に、特に断りも無くそのまま小部屋から出て他の皆が待つギルド併設の酒場へと足を向ける。
流石に、あのクソ程にうざったく、周囲の空気や他人の意思と言ったモノを慮る事を尽くしない例のマルクズ某への説得(と言う名の必要であれば暴力すら飛び出す予定の『説得(物理)』)を行う事を思うと足取りが重くなるアレスだったが、それでもやらなければ女性陣へのちょっかいは止まる事は無いだろうし、やっぱりきつめに『お説教(物理)』をせねばならないよなぁ、と覚悟を決めた彼がエントランスへと到着し、視線を巡らせる。
するとその先には、何故か酒場で人だかりが出来ており、周辺に探し人たるメンバー達が見えなかった事もあり、何事か?と興味を抱いた彼は、人混みを掻き分けてその中心へと物珍しさにかまけて進んで行く。
そうして進んで行ったその先にて、何度か見た覚えの在る金髪の男性が全裸でボコボコにされた状態で土下座しており、その目の前で腕を組んで絶対零度の視線にてソレを見下ろす女性陣と、その後方で無表情にて控える男性陣二人の姿が在るのであった。
「…………え、なにこれ……?」
……わっつはっぷんどぅ……?
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