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追放せし愚か者達・3

今回で今章は終わる予定です


もしかしたら、イメージや予想とは大きく異なる展開になる、かも?

 



追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達が旧グリント邸に発生したダンジョンを踏破し、ダンジョンマスターと遭遇していたのとほぼ同じ頃合い。



 首都アルカンターラから遠く……と言うには近く、近しい……と言うには遠すぎる微妙な場所に位置する衛星都市の中の一つ。



 取り分けて裕福と言う訳でもなく、かと言って貧窮している訳でもないその都市の冒険者ギルドに、とあるパーティーが所属していた。



 そのパーティーの名は『森林の踏破者』。


 その都市の近隣に在る森林に於ける探査や採取、魔物の討伐等を専門に引き受ける、珍しい冒険者パーティーであった。



 ごく最近、とある事情によってメンバーの一人を入れ換える事になった彼らだったが、最初はソレによって何が起きるのかを特に気にしてはいなかった。



 しかし、そんな彼らがメンバーを入れ換えてから初めて受けた依頼をこなす為に何時もの通りに(・・・・・・・・)一路森へと向かっているその最中、最初の異変が発生した。




「……はぁ、はぁ、はぁ…………な、なぁ、流石に、そろそろ乗せてくれるんだろう?いい加減、疲れて来たんだけど……?」




 そう、息も絶え絶えに新しく入ったメンバーへと訴え掛けるのは、この『森林の踏破者』の前衛を務める重戦士であるギリギスであった。



 重戦士の職にあり、このパーティーに於いても前衛を務める彼の装備は全身鎧に大剣と、とても重量の嵩むモノで揃えられていた。


 以前であれば、それらを追放したメンバーへと託して自らは軽装なままで移動していた為に、こうして装備したままで移動する場合の体力の消耗を考えていなかったのだろう。




「……なぁ、おい、聞こえてるんだろう!?いい加減乗せてくれよ!俺の装備がどれだけの重さがあって、それがどれだけ体力を食うのか知ってるだろう!?」



「……だから、何だというのか?」



「なっ……!?」




 その為に、近隣の、と形容される様な森へと向かうだけで、最初からその全てを装備して歩き通していた彼の体力に、大きなダメージを負わせていたのだ。



 しかし、新しく『森林の踏破者』へと入ったメンバーは、そうやって息の上がっているギリギスよりも高い位置から彼を見下ろしながら、助けを求める声を一刀両断に切り捨てた。



 その事で愕然となるギリギスと、一向に取り合おうとしない新入りの態度に思うものがあったのか、このパーティーのリーダーたるトッドが割り込んで来る。




「おい!そんな言い方は無いだろう!?

 ギリギスはこの依頼をこなすのに必要な人材だ!

 そんな彼が疲労を訴えているのだから、仲間として聞き届けるのは当然だろう!?幸い君の『輸送力』にはまだ余裕が在るのだから、乗せて上げるべきだろう!

 君だって、前に出て盾になってくれる仲間がいないと困るハズだ!!違うか!?」



「…………お前、さっきから何を見当違いな事を喚いているんだ?移動中くらい、静かに出来ないのか?」



「な……何を!?」



「何も、そんな言い方しなくても……でも、ギリギスがダメなのって、多分重いからよね?なら、私は軽いし嵩張らないから乗せてくれるわよね?さっきから歩き通しで足が痛くなって来ちゃったの。

 ね?お願い!」



「「なっ……!?」」




 そう言いながら可愛らしく首を傾げて、異形の怪物に跨がり移動する新入りに対して同性から見ればあからさまに媚を売って見せるのは、このパーティーに於いて紅一点となったメラニア。



 彼女のこの行動は、本人としては楽がしたかったが為のモノであったが、似たような事を散々やられていた他の二人は内心穏やかでは居られずに、先のやり取りとは別の意味合いにて新入りへと向ける視線に敵意を混ぜて行く。



 そんな二人からの敵意に気が付いたからか、新入りが騎乗する魔物が鼻息を荒くしながら唸り声を挙げるが、主人が優しく首筋を撫でる事によってソレを収めると、酷く冷たく平坦な声にて三人が勘違いしている点を指摘するのであった。




「…………お前達が何を勘違いしているのかは知らないが、俺はあくまでも『戦闘要員』として雇われただけで、別にお前らを運搬してやらなきゃならない義理も理由も無いんだが?」



「……そ、それは……!?」



「それに、そこまで離れていないハズの森に行くって程度でそこまでへばるなんて、何を考えてこの職に就いているんだ?お前達は」



「……ぐっ……!?」



「おまけに、俺の従魔に乗せろだと?従魔士が『テイム』スキルを使って従魔にした魔物が、テイムした以外の人間をその背に乗せるハズが無いだろうが。そんな常識も知らないのか?」



「……そ、そんな事、私聞いてない……!?」



「……はっ、呆れたな。この調子じゃ、俺の前任だった、って従魔士はさぞや苦労した事だろうよ。

 あぁ、それと、今回依頼先で手に入る魔物素材や、依頼の納品用のアイテムだけど、それらの運搬は自分達でやれよ?少なくとも、俺の業務契約には入ってないからな?

 ……俺の前任がどんなヤツで何をしていたかなんてしった事ではないが、コレだけは言っておいてやろう。お前達は、その前任がどれだけの仕事を押し付けられていたのかを、身を以て知ることになるだろうよ」




 そう言って、完璧に彼らを見放す新入りの従魔士。



 その背中を呆然と見送る彼らは、目論見であった『以前のメンバーの様に、自分達の命令には絶対服従を誓わせて、アイツと同じ事をさせれば良いんじゃないのか?』と言う事を愚かにも考えていたのだが、新入りの態度からそれは不可能だ、と言う事を悟ると同時に、彼らの足元から何かが脆くも崩れて行く音を聞いた気がしたのであった。






 ******






「……クソッ!なんで上手く行かない!?」




 ダンッ!!!




 アルカンターラから遠く離れたダンジョン都市の一角に在るとある宿。



 その一室にて、目の前の机へと一人の青年が拳を叩き付けていた。




「落ち着きなよ、サイラス」



「そうそう、焦ったって良いことなんて何もないんだから、今は落ち着きなって」



「グラニア!モルガナ!お前らだって、今が焦らずにいられない状況だって理解しているだろうが!?

 俺達は、もうヤバイんだよ!ソレを自覚しろと言ってるんだ!!」




 サイラスと呼ばれた青年は、自らを諌める様に声を掛けて来た魔法使い風の服装をしているグラニアと、若干サバサバした様な口調をしている軽装のモルガナを相手に『焦り』と『怒り』と『恐れ』を多大に含んだ感情のままに言葉を叩き付ける。




「アイツを嵌めて(・・・)追放してから、全てが狂いだしたんだ!

 アイツがいた時は達成出来て当たり前だった依頼で、苦戦する事が多くなってきた!ソレを、ギルドにも把握されつつある!

 戦力を増強する為に新しく入れたが、ソイツも大した働きをしやがらない!このままだと、やっと手に入れた『Sランクパーティー』の称号すら剥奪される羽目になるかも知れないんだぞ!?

 少しは、お前らだって現実を把握して、どうにか打つ手を考えたらどうなんだ!?」



「……そう言われても、私は元々反対だったし……」



「ウチも、あそこまでやるとは思ってなかったから賛成したし協力もしたけど、ここまでの状況になるとどうにもしようか無いんじゃないの?

 もう、いっそのことあの人探し出して戻ってきて貰ったら?強さはともかくとして、あの人の経験は役に立つでしょ?」



「……そうだね。その方が良さそうじゃないか?

 そうすれば、今の苦境だって……!」



「……ハッ!今更いい子ちゃんぶってんじゃねぇよ!!

 あの『オッサン』に幾らアピールしても振り向かせられなかったからって、少し誘ったらアッサリと俺に股開いて来やがったアバズレ共が、今更何抜かしてやがる?

 俺からの提案に乗って、わざとあの宝箱開ける様に誘導して呪いを発動させたり、その後も酔い潰れたりしたアイツを拾って寝起きで記憶がアヤフヤな状態で在ること無いこと吹き込んで記憶操作したり、アイツの名前を騙って色々やりながら俺達で頭下げるフリだけして名声自体は保ち続けたり、なんて事やらかしたのは何処の誰だったよ!?

 むしろ、最後の方はノリノリで実行してやがったメスイヌ共は、何処のどちらさんでしたっけか!?」



「「………………」」




 過去の事実を持ち出され、思わず黙り込む事になってしまう二人。



 過去に追放した『彼』へと想いを寄せながらも、ソレに気付かれる事が無かったが為にサイラスの口車に乗って身体を開き、その後も『Sランクパーティー』としての名声を独占する事を願っていた彼の言葉に従い、恋心を抱いていたハズの『彼』の名誉を貶める事に仄暗い悦びを見出だしてしまっていたのだ。



 その為に、『彼』がランクを剥奪される事になっても庇い立てはしなかったし、むしろ積極的に偽装した証拠の類いをギルドへと送り付けてそうなる様にと誘導していた。



 そして、『彼』がサイラスによって追放されると言うその時にも、同じ様に愉悦の暗い焔が心の奥底で燃えていたが為に、かつての想い人を無情にも追放するのに賛同した、と言う訳なのだ。



 ……しかし、そうして名声を欲しいままにし、ソレによって得られた財貨による栄華も今は既に色褪せ初め、サイラスの言葉の通りに『かつての強さはもう無い』と判断をギルドから下されかけている事を察知した彼には以前の魅力は最早無く、既に彼女らの心はまたしても離れ始め、『彼』の元へと戻り始めていた。




 その事を自覚しているか、もしくはそうではないのかは不明だが、三人は奇しくも同じ言葉を同じタイミングで、しかして込める感情は異なりながら呟くのであった。





「「「…………ヒギンズ、一体何処に……(!?)」」」






次回から、『追放者達』の環境が大きく動き出す、かも……?


あ、希望があれば現段階で出ているキャラ紹介を挟むかも?

感想から要望を送って下されm(_ _)m


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] わかっていたけど、追放した側の人間が揃いも揃ってクズばかりだった。サイコーですねこのまま何処までも落ちていってほしい。
[良い点] ここまで読みました。今のところ、当方狼と僕っ娘テイマーとランサーのオッサンがお気に入りです! [気になる点] ヒギンズは自らを追放されてもしょうがないオッサンだと言っていましたが!ここまで…
[気になる点] 従魔師同士は横のつながり(同期)が強いのだろうか?この章の従魔師は前任のナタリアに同情的に思うのだが。まあ従魔師にも得意分野があって、戦闘に得意な者と偵察に特化した者や物資の運搬の段取…
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