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『追放者達』、苦境に追い込まれる

フラグ、回収


祝!1000ポイント達成!

感謝の予定外投稿です!

 



 ブワァッ…………!!




 寸前まで纏っていた黒い光を振り払う様にして、内部から『不死之王(ノーライフキング)』がその姿を顕にする。



 が、しかし、そうして顕にされたその姿は、寸前までのソレとはかけ離れたモノであった。




 所々欠損し、平均的な人族(ヒューマン)のソレよりも華奢であったハズの体格は、五体満足の上で一回り程大きくなり、見るからに力強くなっている。


 ボロボロのローブを纏っていただけの服装も、現在は何処ぞの軍の制服かと思わしき意匠が施されたモノに変わり、その上で一目で様々な効果を付与されているのだろう事が予測できるローブを纏っていた。


 そして、アレスとヒギンズによって割り裂かれたハズだった、はだけられた服の隙間から覗く胸部の球体は元の完全な形へと修復されているだけでなく、以前のソレよりも一回り大きく色も濃くなっている様に見てとれ、嫌な予感しかしない。


 極めつけとして、以前からオーラの様に身体から立ち上らせ纏っていた闇属性の魔力は、立ち上る勢いも濃度も以前のソレ最早別物だと言っても良いだろう。



 見ているだけで膝が折れ、心を絶望が支配して行く。



 そんな、絶対強者の風格と佇まいを得た『不死之王(ノーライフキング)』の姿に、知らず知らずの内に彼らの内心へと『絶望』の感情が広がって行く。




「…………は、ははっ……おいおい、こんなの、どうやって倒せって言うんだよ……」



「……いや、これは流石に無理であろうよ。存在としての格が違う。これは、無理だ……」



「流石に、私の神聖魔法でも、通用する未来が見えませんね……」



「……さっきから、精神強化の支援術使ってるんだけど、全然意味無いんだけど……。

 マジで怖すぎる。ガチで漏らしそうなんだけど……!?」



「…………あ、あうあう……あ、あ、あ、……な、なのです……!」



「……なははっ、流石にここまでの相手はオジサンでも数える程しか相手にした事は無い、ね。

 ……これは、とうとう死んだかな……?」




「…………まぁ、でも追放される前は何時もの事だったし、取り敢えずやるだけやってやるか!!」



「応!腰を抜かして喚き散らすだけのお荷物を背後に庇いながら、半日以上ジャイアント相手に粘る羽目になったあの時よりは、信頼出来る仲間がいるだけで何段もマシと言うモノよ!!」



「なははははっ!!この逆境で尚それだけ吼えるとは、いやはや良い意味で見誤っていたかな?こんなバカみたいな連中がまだ残ってたなんて、オジサン想定外だよ!

 ……なら、同じバカとして、オジサンも本気出して付き合っちゃおうかな!!」





 女性陣が圧によって言葉を失い、膝を折りそうになってなお戦意を失わずに自ら駆け出すアレス達男性陣。



 その顔色は蒼白で、流れる脂汗や震える手足等から恐怖を感じていない訳ではないハズなのだが、それでも前へと進み出るのはやはり女性陣の存在が大きいのだろう。



 開く事は確認できている為に、僅かな可能性に掛けて扉を目指して逃亡する、と言う事も出来なくは無いのだろうが、確実に誰かは死ぬだろうし死体の回収も出来ないだろうから蘇生も不可能となる見通しの方が高いと言わざるを得ない。


 なら、皆で生還出来る、もしくは最悪でも蘇生出来る可能性に賭けてみる、と言う理由が無いとは言わせないし、彼らも口が裂けても言える様な事ではないだろう。



 そんな訳で、格上のハズの存在へと果敢に挑み掛かって行くアレス達男性陣。



 その内心には、確かに目の前の突然変異を遂げた存在に対しての恐怖が在るが、同時にそれ以上にこれまで以上の戦いを見せてくれるハズ、と言う何処か歪な戦闘欲とでも呼ぶべきモノが芽を出しつつ在った。



 そんな彼らの一番手は、普段からして最前衛をその身一つで切り開いて行くガリアン…………ではなく、その脇をすり抜けて『不死之王(ノーライフキング)』へと迫って行くヒギンズが繰り出した突撃によって威力を増させた中段突き『不死之王(ノーライフキング)』へと迫って行く!



 若干ながらも、ガリアンの巨体で目隠し状態になりつつあったが為に強襲に近い形になったヒギンズは、その全身の力を初撃に込めており、この一撃で片を付けるか、もしくはソレなりに手傷を負わせて今後の戦闘状態を優位に進めよう、との思惑からの行動であったのだが、それは思わぬ結末を見せる事になる。




 ……そう、全力で先に突き出したハズの槍の穂先を、文字の通りに彼らの目を持ってしても動作の始まりと終わりが辛うじて見える程の超速度にて突き出した拳が迎え撃ち、それまでは真っ向から防御する事を避けていたハズの彼の攻撃を正面から受け止めただけでなく、全くの無傷にて防ぎきって見せたのだ。




 その事実に、思わず固まるアレス達。



 しかし、その隙を突く様な事はせず、悠然と構えながら手のひらを上に向けて『チョイチョイ』と指の動きのみで彼らへとさも『掛かって来たまえ』とでも言っているかの様なジェスチャーをして挑発してくる『不死之王(ノーライフキング)』。



 普段であれば、そんな事をされれば即座に相手をぶちのめして後悔させる位は軽く行う彼らだが、あから様なまでに格上の相手にされてしまえば怒りの感情すらも浮かんで来ないのだな、と何処か別人の出来事の様に考えてしまっていた。



 しかし、そうして何時までもぼさっと見ているだけでは、向こうが気を変えただけで殺される羽目になるのは目に見えていたが為に、無謀だとは理解した上で再度踏み込みを仕掛けるアレス達。




 最初と同じ様に、ある種の覚悟を秘めた瞳をしながら、後の事は考えない、文字の通りの『全力』にて大盾を構えて突撃を仕掛けるガリアン。



 ……しかし、彼の突撃は突き出された片手にて完璧に受け止められ、彼の巨体から産み出される剛力を持っても押しても引いても寸毫たりとも動かす事が出来なくされてしまい、反撃として放たれた前蹴りによって盾にひび割れを入れられながら吹き飛ばされてしまう。




「がぁぁぁぁぁあああああっ!?!?!?」



「ガリアン!?」「ガリアンさん!!」





 壁際へと吹き飛んで行くガリアンとすれ違う様に前へと進み出たヒギンズは、その持ち前の身体能力を生かして一撃一撃が致命の威力を秘めた連撃を、途切れる事無く仕掛けて行く。



 甲高く、それでいて鈍い金属音が途切れる事無く鳴り響き、少なくない火花が空中に咲き誇る中、特に打ち合わせた訳でもないのに的確に飛来するアレスやセレンの魔法による援護も加わったが為に、隙とも呼べない様な刹那の隙間を発見したヒギンズは、半ば反射でその隙へと必殺の威力を込めた突きを繰り出して見せる。



 …………しかし……





「…………おいおい、まさかアレを受け止めるとか冗談だろう……ガハッ……!!」





 …………しかし、彼がその隙とも呼べないであろう刹那の隙間を突いてくるだろう、と言う事は予想されていたらしく、突き出された穂先を二本の指で掴み取られ、思わず、と言った体で溢された呟きと共に突き出された拳が彼の腹部へとめり込み、絶大なダメージを与えられた彼が苦悶の表情にて片膝を地面へと突いてしまう。



 そんな中、突然『不死之王(ノーライフキング)』が自らの首の近くへと腕を掲げる。





「………………おいおい、まさか、不可視のこれも防ぐのかよ……」





 それに一瞬遅れる形で甲高い金属音が周囲へと響き渡り、それに続いて『不死之王(ノーライフキング)』の腕に防がれている刃と、ソレを振るったアレスの姿が現れて行く。



 スキルで姿を隠してた上で気配や足音も消しての奇襲であったのだが、どうやら相手には気付かれてしまっていたらしく、アッサリと腕を掲げられて防がれてしまった。



 複数のスキルを発動させた上での奇襲攻撃であった為に、狙い通りに決まれば確実にダメージが期待出来ていた分だけショックも大きかったらしく、自らの刃を防いでいた腕が翻り、その指先が目前まで迫っていた事に気付くのが遅れ、寸前で身を捩る事でどうにか回避に成功する。




「…………くそっ、痛すぎる代償じゃねぇか……!」




 しかし、気付くのに遅れてしまった為か、完璧に回避する事は出来なかったらしく、片方の眼から涙の様に出血する羽目になってしまう。




 そうして、たった一度の交差にて、盾役のガリアンは全身打撲に加えて得物の損壊。


 ヒギンズは内臓へと著しいダメージを負い、アレスは片目を喪う結果となり、格段に戦闘力を落とす事になってしまうのであった。







…………しかし、そんな状況に在るにも関わらず、未だに彼らの瞳は闇に濁らず、希望の光を湛えたままとなっているのであった。






「…………頼むから、頼むから早めに『見付けて』くれよ、お前ら……!」







『追放者達』、初めてのフルボッコ


……書き留め?

……ヤツは、良いヤツだったよ……(書き留めZERO)


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