『追放者達』、ボスと相対する
中々に激戦の予感……?
試験的にタイトル変えてみました
こんなんでどうでせう?(´・ω・`)
何事も無かった様にボス部屋の扉を解錠し、誰一人欠ける事もなく内部へと突入して行く『追放者達』のメンバー達。
彼らが突入して行った先に在ったのは、これまでの通りに外観からは想像も出来ない程に空間が拡張された部屋であり、その広さは下手な広場や訓練所にも匹敵するであろうだけのスペースを誇っていた。
そんな、不必要なまでの広さを誇る室内の中央に、彼らを待ち受けていたかの様に佇む影が一つ。
遠目には人の姿をしている様にも見えるその影は、良く良く目を凝らして見ればその身に纏っているのはボロボロに風化したローブ一つきりであり、その下に在るハズの肉体には『肉』の要素が見当たらず、ただただ白骨のみが存在していた。
更に言えば、その不思議な力にて分解される事もなく直立している白骨は、全身からオーラの様に闇属性の魔力を立ち上らせ、本来であれば虚ろなハズの眼窩の奥から赤く輝く眼光を覗かせつつ、目元から涙の様にも見える黒っぽい謎の液体を絶えず分泌させていた。
その為か、まるで涙の跡の様に、目元から頬を通り抜けて顎に至るまでその液体にて線が描かれており、何処ぞの部族が戦闘や狩猟の時に施すフェイスペイントの様にも見てとれた。
外見だけで言うのであれば、以前討伐した『単眼巨人』の方がまだまだ威圧感も強者としての威厳も大きかったハズなのにも関わらず、未だに遠くに在るソレが放つ存在感と内包する魔力の大きさを見せ付けられた彼らの頬は知らず知らずの内にひきつり、思わず一歩後退しそうになってしまう。
「…………マジ、かよ……!?
なんで、こんなぽっと出のダンジョンで、ボスとは言え『不死之王』なんて出て来やがるんだよ……!?」
「……よもや、この目で上級アンデッドに分類される『不死魔導師』の中でも最上級、下手をしなくても国が滅ぼされかねない『Sランク』に分類されるであろう存在と直接見える事になるとは、な……!
……情けない話ではあるが、ヤツを目にしてから足の震えが止まらぬわ……!」
「……アレが、『不死之王』、ですか……!?」
「…………正真正銘の、化け物じゃないの……!?」
「……こんなの、勝てっこないのです!?」
「……まぁ、勝ち目が薄いのは否定しないかな?でも、多分オジサン達を逃がしてくれもしないだろうし、やっぱり戦うしか無いんじゃないの?
それに、まだ勝負は分からないよ?何せ、幾ら『不死之王』が最上位のアンデッドとは言え、こっちには向こうが苦手としてる神聖魔法使い放題の聖女であるセレンちゃんが居るし、何よりアイツの元々の素体になったヤツが『魔法型』か『近接型』かでもやり方が変わってくるんだから、絶望するのははやいんじゃないのかなぁ?」
「……そう言えば、あいつらって高度な思考と身体能力を後天的に与えられた結果、『成った』のか『成らされた』のかに関わらず、そのせいで得意な方向性と実力の高低が出来ている、だったっけか?」
「とは言え、どちらにしても当方らで言う処の一流クラスが最低限となるとなれば、得意な方の実力がどうなるのかは考えなくも無いがな!
それよりも、来るぞ!皆、構えよ!!」
ガリアンが警告の声を上げる直前かほぼ同時位に、彼らの視界の先にて佇んでいた『不死之王』がユラリとその上体を揺らすと、まるで身体が突然液体になったかの様な動作にて沈み込んで鈍い破壊音を立てながら加速し、彼らへと一心に目掛けて突き進んで来る。
その速度は半端なモノではなく、非戦闘要員たるナタリアは当然として、それなりに実践経験を積んでいるタチアナや、後衛とは言え経験豊富な分類に入るであろうセレンですら碌にその姿を捉える事が出来ず、反応を返す事すらも出来ずに、突如として掻き消えた姿に呆然としてしまう中、スタートダッシュの時とは打ってかわって無音にての高速機動に移った『不死之王』が突き出した拳が彼女らへと迫り来る!
…………が
「……ぬぅえぃ!!!」
ガィィィイイイイイインッ!!!
ソレが女性陣へと届く寸前にて間に飛び込む事に成功したガリアンの盾が、高々人骨と金属製の大盾がぶつかり合った、とは思えない様な音を周囲へと響かせる。
ただ単に殴り飛ばされただけであるにも関わらず、盾を支えていた両手は痺れ、足元は靴底が削れる程の勢いにて後方へと滑らされ、更に言えば完璧には防御出来ずに骨が何本か叩き折られてしまっている。
……が、それも裏を返せば、咄嗟に飛び込んで防いだ一撃とは言え、他のメンバーへと被害を出す事もなく、最上級アンデッドである『不死之王』の攻撃を生きて耐えきる事に成功した、とも言えるのだ。
これは、彼がスキルを『盾王術』にまで成長させている事を鑑みても、中々に余人では達成出来無い偉業である、と言えるだろう。
その点を切り取って見せただけでも、彼が非凡なる盾役である事が窺えるが、これまでの戦歴を鑑みれば『彼ら』が高々攻撃を一度受け止めただけで済ます訳が当然無く、未だに全身の力にて『不死之王』と拮抗せしめているガリアンがスキルを発動させるのと同時に、他の二人も一切の躊躇も油断も無く飛び掛かって行く。
「……お返し、だ!食らって行け!『フルカウンター』!!」
「…………ふっ……!」
「取り敢えず、そのローブの下を見せて貰うとしようかねぇ!!」
ガリアンが、受け止めた攻撃のダメージを倍にして相手に跳ね返す『フルカウンター』を発動させ、アレスは呼気も鋭く気配を薄くする『ハインド』を使用した上で後方から『不死之王』の首を狙って得物を振るう。
ヒギンズは、どちらかと言うと一撃決殺ではなく何か他の狙いが在ったらしく、当りの大きな胴体目掛けて中段突きを放って行く。
が、しかし、ガリアンのスキルは炸裂したものの、僅かに『不死之王』を後退させただけで特に効いている様子は無く、アレスの斬撃も見るまでもなく首を傾けただけで回避されてしまう。
唯一、ヒギンズの槍による一撃には何かを感じ取っていたのか、大きく後退る事で完全に回避する事を試みて来る。
だが、そうやって回避される寸前に、突き出されたヒギンズの槍が突如として伸び、纏っていたローブの胸元を引っ掛ける形にて上方へと振り抜かれる事で、大きく上半身が露出する形となって行く。
理由は不明だが、自ら詰めてきた距離を一旦大きく離そうとして後退する『不死之王』。
それに対して、アンデッドに対して殊更に効果が高い神聖魔法を気を取り直したセレンが放つが、『不死之王』がその身に纏っていた闇属性の魔力によって相殺されてしまい、結局本体へは届く事無く距離を取られてしまう。
だが、彼らとしても、呆然としていた女性陣に活を入れたり、盾役であるガリアンを治療したりとやりたいことは沢山在った為に、最初のセレンの追撃以外にはわざと手を出さず、それでいて動きや特徴を見逃さない様に視線は外さずに行動を始めて行く。
「……取り敢えず、セレンはガリアンの回復と高出力な神聖魔法の準備よろしく。多分そいつが今回の切り札になるからそのつもりで!」
「承知致しました。先程のミスは、それにて取り返させて頂きます」
「タチアナは俺達に適宜支援術を掛けて強化したら、ナタリアと一緒に後ろに下がっててくれ!流石に、アレ相手にしながら守ってやるのも、お前さん達を前に出すのも無理だって事は理解してくれるよな!?」
「流石に、あんな化け物相手に戦えるって勘違いしちゃいないわよ!
……必ず、勝ちなさいよ!必ずね!!」
「取り敢えず、預かってるポーションの類いはこっちで用意しておくのです!いざとなったら、投げつけてでも回復させるのでそのつもりでいるのですよ!」
「それは、出来る限りガリアン優先で!」
「あぁ、一つ良いかい?リーダー」
「何ぞ?下らない話ならぶん殴るからな?」
「いやいや、大真面目なお話さ。
アイツのあの肋骨の隙間から球体が覗いてるんだけど、見えてるかな?」
そう言って『不死之王』のはだけている上半身を指差すヒギンズ。
その先には、確かに胸骨の中、人間の心臓と同じ位置に何やら深紅の球体が浮かんでいるのが見てとれた。
ソレを確認したアレスが視線にてヒギンズへと問い掛けると、彼は改めて指差しながら告げるのであった。
「アレ、アイツの弱点のハズだから積極的に狙いに行っても大丈夫だと思うよ?オジサンの経験則から、って話だけどね?」
「……だ、そうだ!取り敢えず、攻撃は胸部の球体優先で!
皆、死ぬなよ!!」
「「「「「応!!!」」」」」
そうして、彼からもたらされた情報により、僅かながら希望が見え始めた『追放者達』のメンバー達は、自らを鼓舞する為にも声を張り上げると、今度は彼らから距離を詰めて行くのであった。
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