『追放者達』、泣き付かれる
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「『追放者達』の皆さん!助けて下さい!!」
「……え?嫌だけど?」
結局、例の物件は半ば諦め、賃量を稼ぐべく依頼へと精を出していた『追放者達』は、依頼を終えてギルドへと帰還した丁度その時に出会い頭に助力を乞われ、リーダーであるアレスは半ば反射的に相手も見ないで断りの言葉を口にする。
バッサリ切り捨ててから相手を確認するべく視線を向けると、そこには半泣き顔で固まっている顔馴染みの受付嬢であるシーラの姿が在った。
……何となく、厄介事の匂いがする……。
そう判断したアレスが視線を戻し、彼女をスルーする事を決め込もうとしたのだが、それに同じ仲間である女性陣が待ったを掛ける。
「……あの、お困りの様子ですし、お話だけでも聞いて差し上げるのは構わないのでは無いでしょうか……?」
「女の子が泣いて頼んでるんだから、聞いてあげるのが男ってもんでしょ?
何?アンタそのなりで玉着いてない訳?」
「リーダー、女の子には優しくしないとダメなのですよ?
何やら事情が在りそうな雰囲気なのですから、話を聞く位はして上げても良いのです?ダメなのですか?」
「…………ぐっ……!?」
セレンからは純粋な厚意を、タチアナからはジットリとした圧力を、ナタリアからは年上女性としての諭しをそれぞれ向けられてしまい、思わず気圧されるアレス。
しかし、ここで唯々諾々と話を聞く流れにしてしまっては確実に何かしらの面倒事に巻き込まれる事になる、と彼の勘が伝えて来ていた為に、助けを求めて他の男性陣であるガリアンとヒギンズへと視線を向ける。
アレスとしては、無用な厄介事を背負い込まされるのを回避したいが為の拒絶であり、ソレを彼らならば理解してくれているだろう、との望みから来る救援を求める視線であったのだが、二人揃って『我関せず』とばかりに視線を合わせる事を拒まれてしまう。
恐らく、二人ともに最近仲の良くなってきた女性陣との関係性を悪化させる事を厭ったのだろうが、頼りにしていたアレスとしては裏切られた様な気分になったとしても仕方の無い事だろう。
「…………はぁ。
仕方無い。取り敢えず、話だけは聞きますよ」
「…………え?良いんですか!?」
「聞くだけならば、ですけどね。
それに、半ば狙っていたでしょう?こっちの女性陣がそっちの味方に着くだろう、って事は。
まぁ、でも、こんな入り口で話しても邪魔になるんで、取り敢えずいつぞやと同じ奥の部屋なりに案内して貰えますよね?でないと、話すつもりは無い、と判断してすることして引き返させて貰いますけど、良いですよね?」
「えぇ、えぇ!それで結構です!
むしろ、聞いて頂けないとばかり思っておりましたので、聞いて頂けるだけでも大丈夫です!!
では、皆様。こちらにどうぞ!」
それまでの呆然とした表情から一変させ、明るく生き生きとしながら希望を見付けた様な表情を浮かべながら、軽い足取りにて受付の奥へと『追放者達』のメンバー達を案内して行くシーラ。
その後ろ姿に、それまでよりも強く『嫌な予感』を感じ始めていたアレスは、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべているが、他のメンバー達が既に着いて行ってしまっていた為に、仕方無くそのまま後に着いて行く事にする。
ここ最近は良く通される事になっている小部屋へと通され、全員にお茶と何故か茶菓子の類いまで出され(砂糖は高価なので普通は一介の冒険者になんて出されない)、嫌な予感を全員が感じながらお茶に手を着けた時、徐にシーラが口を開いて話を切り出した。
「…………実は、『追放者達』の皆様にお願いがございまして……」
「聞き届けるかの確証は出来ないけど、取り敢えず聞くだけならば別に良いですよ。そう決まったので」
「……何故でしょう。何処と無く、リーダーの言葉にトゲが在る様に聞こえるのですが……?」
「……まぁ、ここまであからさまに厄介事を持ち込まれる雰囲気を出してる相手を、アタシ達で庇っちゃったからね……」
「リーダーとしては、やっぱりパーティーの為に回避しておきたかった、と言う事なのです?」
「……で、ソレを回避しようと試みたが、セレン嬢らが聞くように促し、当方らがリーダーを救援せなんだが故にこうして聞く羽目になったが故に、機嫌が悪いと言う事であろうよ」
「……まぁ、彼がそうしようとしたのは一重に皆の為で、ソレをオジサン達がぶち壊しにしたんだから機嫌の一つや二つ悪くされたとしても、甘んじて受け入れるのが筋、ってヤツなんじゃないのかなぁ?」
「…………何と言うか、その……大変ご迷惑をお掛けした様子で、申し訳無いです……」
「そう思われているのでしたら、お早めにお願いします。
そうでないと、話の途中で帰る事になる、かも知れないですよ?」
「……では、単刀直入にお願い申し上げます。例の物件、旧グリント邸に発生したダンジョンの探索。その補助をお願いしたいのです!」
「あ、そう言うのはお断りさせて頂くつもりなので、却下させて頂きますので悪しからず」
「そんな事言わずにお願いします!?
募集を掛けて集めた冒険者の方々では碌に調査が進んでいない上に、既に何人か行方不明になってしまっているのです!
是が非でも、『追放者達』の皆さんにはご協力をお願いしたいのです!」
「とは言っても、向こうはそっち方面のプロでしょう?そんな彼らで歯が立たないのでしたら、俺達を引き込んだ処で大した役には立ちませんよ?
ご存じの通りに、既にトラップの位置やらが書き込まれた地図、だけでなく、意味在り気だったアイテムまで安価で提出しているのですから、ギルドの方でどうにかして貰わないとこちらとしても困るのですが?」
「ソコをなんとか!?
皆様がランク不相応の実力をお持ちであると言う事は、当支部に於いては公然の秘密となりつつあるので、途中参戦されてもやっかみの類いは起きないハズです!
それに、参加するだけでも報酬を支払う事を上役からも確約されておりますので、どうかご協力お願い出来ませんでしょうか!?」
「……えぇ~?そこまでやってあるんですから、俺達が探索隊に加わるメリットなんて何も無いでしょう?
後から入ってきた、ってだけで先遣の冒険者とは軋轢が出来る上に、俺達は只のDランクパーティーですよ?
なら、もっと上のランクのパーティーを、もっと早く投入していれば!って現場の冒険者達に思われるだけなんじゃ無いんですか?」
「そこは、大丈夫です。
当ギルド本部長より、皆様には今依頼を受注して頂くだけでパーティーランクをCに引き上げる許可を頂いております。これは、半ば特例的な措置では在りますが、パーティー『追放者達』の貢献度はそろそろ昇格試験を再度受けるのに相応しいだけ溜まりつつある、と言う事も関係しております。
更に、皆様には他の方々同様に達成報酬として金銭をお支払するだけでなく、万が一ダンジョンコアの発見、ないし破壊に成功した場合には、ソレを功績として更にもう一段階パーティーランクを上昇させて頂く予定です。
……これでもまだ、受けて頂けないでしょうか……?」
「………………俺達、『追放者達』にそこまで法外な報酬を支払う用意をしてまで、固執する理由は?」
「……私が、皆様しかいない、と思ったからです。
皆様よりもランクの高い方々は当然当ギルドにも所属しておられます。ですが、私は皆様ならば達成できると、他の方々では達成は難しいだろう、と判断したが為です」
「…………」
そこまで言われてしまったアレスは、返答する事無く目を瞑って腕を組み、そのまま長考の姿勢に入ってしまう。
そして、暫くそのまま動くことも無かった彼だったが、唐突に瞼を開くととある条件を追加するのであった。
「……達成報酬に追加として、あの物件を貰い受けたい。当然、無料で、しかも破損箇所の修復や使い勝手の悪い部分の改修等の費用はギルド持ちで。
それでも良いなら、俺は受けても良いですよ」
「……!有難うございます!
では、詳しい報酬の取り纏めは後程と致しまして、まずはこちらの契約書にサインを……」
アレスの言葉により、言質を取った!と言わんばかりに表情へと喜色を浮かべ、気が変わられては堪らない、とばかりにいそいそと契約書を取り出しかけたシーラだったが
バンッ!!!
「ちょっと待った!!!」
と、突然小部屋へと乱入して来る侵入者によって、無理矢理に中断される事となるのであった。
乱入者の正体は如何に!?
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