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『追放者達』、報告する・2

報告報告!

 



「…………いや、確かに確認しなかったのは悪かったって!

 でも、まさか普通に鍵使えば開いたなんて思わないだろうよ、普通は!?」



「……なはは。確かに、思いもしなかったよねぇ。

 でも、その『思いもしなかった事』を見抜いて先に危険を潰しておくのが君のお仕事なんだから、今の扱いは甘んじて受け入れるべきなんじゃないのかなぁ~?」



「……おぅふ。ぐうの音も出ねぇ程の正論……!?」




 そんな、珍しく溢されたアレスの情けない声が、無情にも周囲へと響く。



 しかし、それに応える声は、ヒギンズのソレを除けば今の処存在していなかった。



 もっとも、それは仕方の無い事だろう。


 何せ、一番最初と様子が変わった様には見えていない玄関が、外から開けた時と同じ鍵を使えば素直に開いていた、と言う事実を突き付けられたのだ。



 それはつまり、あのダンジョンの中に於いて起こった諸々の全て。


 疲労も負傷も恐怖もその何もかもが、経験する必要の無かった事であった、と言う事なのだから。



 しかも、ソレを最初に確認し、最後に思い付きで試してみたのがその道のエキスパートであり、そういう場合の生命線である、との認識を分断された状況下にて再確認していたアレスがやらかしていたと言う事により、より一層の徒労感として皆の心にのし掛かっていたのだ。


 なれば、幾らそうなった事に彼への責任が無かったとしても、この様な扱いになるのは些かの同情こそすれども、まぁ妥当であろうよ、と納得せざるを得ない……かも知れない。



 とは言え、彼らとて本気でヘソを曲げている訳でないので、道中にてどうにか機嫌を治して貰い、全員揃った状態にてギルドへと到着する。



 あの物件を訪れたのが朝と昼の中間位の時間帯で、現在が昼過ぎと言う事を考えると、あまり長い時間探索していた訳ではないのだろうが、セレンの回復魔法でも癒しきれない精神的な疲労により、リーダーであるアレスを置いてさっさと併設された酒場へと向かってしまう『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達。



 そんな彼らの行動に若干悲しくなりながらも、普段からしてこう言う事の担当はリーダーである自分の仕事であるし、何より彼らの精神的疲労の原因の何割かは自身である、との認識を抱いていた彼は、特に抗議する事もなく素直に受付カウンターへと向かって行く。




「はい、次の方!……って、アレス様?

 本日は、例の物件の内見の予定だと聞いていた様に記憶しているのですが、どうしてギルドに?」



「……いや、ちょいと予定外の事が起きて、ね……」



「……あぁ、と言う事は、やはり出たのですね?(幽霊が)」



「……ん?あぁ、まぁ、出たっちゃ出たな(魔物が)」



「どうでした?やっぱり怖かったですか?(幽霊が)」



「……いや?そこまででも無かったかな?(魔物は)」



「ふぅ~ん?では、内部はどうでした?(建物の中)」



「そうだな。結構広かったよ(ダンジョンの中)」



「満足出来そうでしたか?(間取り等)」



「……そこは、どうだろうな……。俺達じゃあ、手に負えないかも知れない、かな……?(ダンジョンの規模的に)」



「……え?そんなに沢山在ったんですか?(部屋数が)」



「……あぁ、かなり沢山在ったな(トラップが)」



「と言う事は、やはり適正な人数では無かった、と言う事でしょうか?(居住可能な人数)」



「あぁ、そうだな。俺達では、全然足りなかっただろうな(ダンジョンを攻略する為の人数)」



「…………そんなに、でしたか……?(建物の規模)」



「……あぁ、そんなに、だ……(ダンジョンの規模)」




「……いやいやいや!そんな訳が無いですよ!こちらの手元にある資料によれば、アレス様が仰られる程に大きな建物であった、と言う記述は無かったハズなのですが?」



「……いやいやいや!俺達はたったの六人だぞ?そんな少人数で、正体不明のダンジョンを攻略して来いだなんて、ギルドは何を何を考えてそんな寝言を抜かしている訳だ!?」




「「………………うん……???」」





 アレスと、彼ら『追放者達(アウトレイジ)』の顔馴染みとなりつつある受付嬢シーラが、会話の果てに同時に口を開き、同時に放たれた相手の言葉が理解できなかったのか同時に首を捻る。



 しかし、ソレにより互いに思い違いをしている部分が少なからず在る、と言う事に気が付き、取り敢えずアレスの方が向こうで何が在ったのか、をシーラへと説明して行く。



 最初こそ、何を言っているのやら?と言った感じを隠そうともして来なかったシーラであったが、話が進んで行くに従ってその表情を青ざめさせ、アレスがアイテムボックスから証拠となる袋一杯の魔核や、ダンジョンにて入手したアイテムの類いを提出すると、流石に信じざるを得なくなったのかその場で土下座でもしかねない程の勢いにて頭を下げて来た。




「誠に申し訳ございません!まさか、この様な街中でその様な事態になっていたとは露知らずに……!」



「……いや、まさかこちらも把握していなかったとは思って無かったんで……。

 でも、以前からあそこの内見を希望する様な人なんて、俺達以外にもいたんじゃないんですか?そうでもないと、例の『曰く付き』って条件も付かないんじゃ?」



「…………実は、あの物件は前の持ち主から『幽霊が出る』との話と共に売却されたモノである、との備考が着いているだけで、ギルドから送った調査員達からは特にその様な報告は無く……。

 ですが、実際に内見を希望された方々からは、何か居る、気配がする、とのお話が出て、あの物件は曰く付き、と言う認識が広まったらしいのです。

 ……でも、記録に残されているモノとしましても、到底ダンジョン化が起こっている様なモノは無く、内部の構造も一般的なモノであった、との報告しか残されていないのですが……?」



「じゃあ、その後にダンジョンになった、って事でしょうね。

 それで、ギルドとしてはどんな対応を取る事になる予定なんで?一応は発見者兼被害者って事で、ソレを知る権利位は在ると見ても良いでしょう?」



「それは、勿論です。

 取り敢えず、ダンジョンだと確定したのであればギルドから調査隊が編成されて投入される事となるでしょう。

 管理下に置けるのでしたら、定期的に討伐依頼が発行されるでしょうし、一定以上のランクの冒険者の方々には探索の許可も降ろされる事になるかと。

 もし管理下に置けない様な性質のダンジョンであれば、残念ながら討伐隊が組まれて一気に攻略する事になるでしょうね。

 ですが、どちらにしても、第一発見者にして攻略の先駆者となっておられる『追放者達(アウトレイジ)』の方々には、必然的かつ優先的にお声掛けがされる事に「あ、そう言うの結構ですんで」なる……って、え……?」



「いや、だから、俺達はそう言うので有名になるのも、面倒な事に巻き込まれるのもゴメンなんで、そう言うのは結構です。

 あ、一応、途中で手に入れた意味在り気なアイテムの数々は提出しておくので、俺達の貢献度の足しにでもしておいて下さい。

 必要になったら、俺達が探索出来た範囲でのトラップの位置やらを書き込んだ地図やらも提出するんで、その時はパーティーでの評価と金銭での支払いでお願いします。

 では、今日はこの辺で!」




 呆気に取られていたシーラが正気に戻る前に一気に捲し立て、半ば逃げる様にカウンターを後にするアレス。



 どうせ、買い取りにだした魔核の代金の受け取りの際に一緒に支払われるだろうから、と今は特に金銭の類いを要求する事もなく、面倒事から逃げるのが最優先、と言わんばかりのその姿勢には、内心でどうにか引き留めて依頼を受けさせよう、と画策していたシーラも、そのまま見送るしか無くなってしまう。



 そうして、先行していたメンバー達と合流したアレスは諸々の説明を行い、取り敢えず次の物件を探しておくか、と言う結論を出すのであった。





報告はしたが受けるとは言っていない!( ・`д・´)


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