『追放者達』、選択を迫られる
今までに無いペースで伸びるポイントに内心ドキドキしております
感謝感謝m(_ _)m
「「「「リーダー!?それに、セレンも!?」」」」
突然かつ、あまりにも都合の良すぎる登場に、思わず疲労や負傷を忘れて四人の台詞が一致する。
そんな彼らへと、慎重に周囲の敵が掃討出来ている事を階段の裏側から確認してからセレンを伴って出て来たアレスは、苦笑しながら口を開く。
「……一応言っておくけど、別段流れを見ていてわざと参戦していなかった、だとか、助けに入る最高のタイミングを図っていた、だとかの理由から遅れた訳じゃないからな?」
「じゃあ、なんであんなにピッタリなタイミングで登場したのよ!
アンタがノンビリしていたお陰で、こっちは大変だったんだからね!?」
「仕方無いだろうよ!?
ずっと二階以上に居ると思って下りの階段探していたら、まさか居るのが地下階で、途中で見付けてた登りの階段が正解のソレだっただなんて思いもしないだろうが!?」
「……では、偶々そうなった、と……?
流石に、それは出来すぎではあるまいか?」
「いや、コレが本当なんだって。
一通り探し回って、結局下りが見付からなかったから登ってみたら何だか騒がしかったんで覗いてみたらあの場面になってた、って話よ。
んで、取り敢えず皆襲われてたみたいだったから、範囲攻撃で薙ぎ払ってみた、って事さ」
「……でも、建物の中で火属性の魔法を使うなんて、結構思いきった事をするよね?
オジサン、延焼とか恐くて躊躇っちゃうと思うんだけどなぁ……」
「そこは、ほら。どうせダンジョンの中なんだから、建物まで燃える様な事態にはならないだろう、ってね?
それに、皆も結構ヤバそうだったから、手っ取り早く片付けた方が良かったでしょう?」
「……まぁ、そこは否定しないけどさぁ……」
「取り敢えず、今は怪我の治療を先にしてしまいましょう?
『神よ。敬虔なる貴方の子らに、病毒から立ち直る為の清廉さを授けたまえ!『天の恵みによる清潔』』!
『神よ。敬虔なる貴方の子らに、負いし傷を癒す奇跡の数々を授けたまえ!『神の祝福による範囲治癒』』!
これで良いでしょう。アンデッドに付けられた傷でしたので、一応消毒もしておきましたが如何ですか?」
「セレンさん、有難うなのです!
特に違和感も痛みも無いので、大丈夫なのです!」
「……ナタリア嬢、当方が着いていながら、誠に申し訳無い……」
「気にしないで欲しいのです。アレだけの数で来られてしまっては、流石に一人ではどうにもならないのです。
それに、こうして跡も残さずキチンと治してもらったのですから、もう大丈夫なのです!なので、ガリアンさんも気にしないで欲しいのです。
それに、アレ以外ではキチンと負傷させる事もなく、ボクを守り抜いてくれたのですから、感謝こそすれども非難なんてするハズが無いのですよ?だから、ガリアンさんが思い悩む様な事は無いのです!」
「…………だが、当方は己の職分を全うする事すら……!」
「……もう、反省する事は良いことなのです。でも、自罰的になるのは良くないのですよ?
……ボクが『気にしていない』『むしろ感謝している』と言っても聞き届けて貰えないのなら、ボクから一つ罰を与えるのです。ソレでこの件はお終い。ソレで良いのです?」
「……当方に出来る事であれば、この心命を睹して。
それで、罰とは……?」
「なら、ボクが好きな時に、好きな様に、好きなだけガリアンさんをモフモフさせるのです!
男の人が一度言った事を、よもや翻しはしないのですよね?」
「………………了承した。ナタリア嬢の寛大なる処置に、感謝致す」
「なら、良しなのです!
では、早速モフモフするのです!モフモフ~♪」
何やら深刻そうな雰囲気にて話し合いをしていたガリアンとナタリアも、ガリアンがナタリアからの提案を受け入れ、ソレによってテンションが上がったらしいナタリアが彼に飛び付いた事で途端に霧散し、周囲へと緩んだ空気が流れ始める。
同時に、彼らの背後ではヒギンズがタチアナの頑張り(実は囲まれた際にナタリアを背後に庇って得物を構えていた)について褒め、ソレによりタチアナが顔を赤らめて視線を逸らす、と言った何とも甘酸っぱい様な、そんな桃色に近い色合いの雰囲気が何となく広まって行く。
そこで、自身へと追求が逸れた事を察知したアレスが、取り敢えず、と預かっていた例の日記帳を取り出して他のメンバー達へと問い掛ける。
「処で、そっちは分断されてから合流する迄に何か見付けられたか?
俺達の方は、宝箱とかに入ってたアイテム以外だと、こんなの拾ったけど」
「……当方の処は、ソレ処では無かった故にその手の収穫はほぼ0に近しいな。とは言え、意味在り気に掛けられていたコレならば回収して来たが。
……ナタリア嬢、今は真面目な話をしている故に、少し我慢しては頂けないだろうか?」
「オジサンの処も、その手の収穫はあんまりかなぁ?
ほら、何せオジサンの経験が経験でしょ?だから、ダンジョンとかに設置されてるヤツだと、盗賊系の職の人が解除して安全が確認されたヤツしかオジサン触れなくなっちゃってね?
だから、蹴っ飛ばして特に何も無かったヤツの、中身も無事だったモノが幾つかと、タチアナちゃんが見付けたコレ位かな?収穫って言える様なモノは」
そう言って、ガリアンの組は彼の頭に張り付いていたナタリアが、ヒギンズの組みは何かを思い出して顔を赤らめているらしいタチアナが、それぞれアイテムボックスから古びた鍵と、淡い光を放つ宝石の一種にも見える球体を取り出す。
魔物が再度湧いて来ないかを警戒しながらも、それらを床へと並べて覗き込む六人。
しかし、幾ら眺めても日記帳は日記帳、鍵は鍵でしかなく、パッと見た限りで値打ちが在りそうなモノはヒギンズの組が見付けて来た宝石の様な球体のみであった。
意味在り気に設置されていたコレらのアイテムを一ヶ所に集める事で、何かしらが起きる様な仕掛けが施されていた、と言う事であれば何かしら起きたのだろうが、少なくとも玄関前エントランスには何かが起きる様な仕掛けは無かったらしく、特に何も起きてはくれなかった。
「…………さて、取り敢えずこうして合流出来たけど、どうしようか?」
「……そう、ですね……。どうしましょうか?」
「……正直、準備不足の感が否めない故に、出直すのが良いのではないか?」
「と言うか、ここがこんな状態だなんて聞いてなかったんだけど?ここを紹介してくれたギルドは、一体何を考えてこんな物件紹介した訳……?」
「どうだろうねぇ?流石に、ここがこんなになってるって知ってたら、紹介なんてしなかったと思うんだけどねぇ」
「そうなると、知らなかったって事なのです?
でも、曰く付き物件だ、って事は通達されていたのです。と言う事は、ギルドの方とボク達とで認識の齟齬が在る、って事で良いのです?」
「なんじゃないのかね?
まぁ、流石に文句の一つも言わないときが済まないけど、さ。
……さて、じゃあ、取り敢えず撤退って事で決定で良いか?」
「「「「「異議無し(だねぇ)(なのです)!」」」」」
「なら、取り敢えず開くかどうか試してみますか」
早々に結論を出した彼らは、得た意味在り気なアイテムの数々をアッサリとアイテムボックスへと放り込んで階段へと背を向けると、最初に開けようと試みて開かなかった玄関へと足を向ける。
そして、玄関のドアノブへと手を伸ばすと、無造作にソレを握って捻り、引いたり押したりしてみる。
当然の様に、ガチャガチャと音を立てるのみで開くことは無かったが、そこで何かを思い付いたのか自身のアイテムボックスからギルドで預かっていたこの建物の鍵を取り出し、ノブの下に付けられていた鍵穴へと差し込んで捻ってみる。
…………カチッ!!
すると、軽い金属音と共に、掛けられていた鍵が解除される音が周囲へと響き、呆気に取られていたメンバー達の目の前で蝶番が軋む音を立てながら玄関のドアが開いて行く。
それにより、油が切れて錆び付いたカラクリ仕掛けの様なぎこちない動きにて背後に振り返るアレスの視線の先には、笑っていない笑顔を向けて来る仲間達の姿が写っていたのであった。
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「…………はぁ!?おいおいおい!あそこまでやっておいて、攻略しないで帰るなんて、あいつら本当に冒険者かおい!?
折角、最初に触った時はわざと開かない様に細工して『逃げる』って選択肢を意識出来ない様にしておいて、その上でソレっぽいアイテムまで用意してやったって言うのに、マジで無いわあいつら!?
…………まぁ、良いか。あいつらが来るのが一番面白そうだったけど、どうせあいつらが持ち帰る情報で『誰かしら来る』だろうから、それに期待するとしようか。
……あ~あ、あいつらで遊びたかったんだけどなぁ~……」
最後の不穏な台詞は一体……!?
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