『追放者達』、曰く付き物件の内見(?)を決行する
ブックマーク等にて応援して下さった方々に感謝です(^^)
今回短めです
……ギ、ギィィィィイイイイ……
錆びた金属同士が擦れ合う、絶妙に不快感を掻き立てる音を耳にしながら、彼ら『追放者達』のメンバー達は、辛うじてレンガ敷きの道が残る前庭へと足を踏み入れる。
パッと見た限りでは、その段階では特に異常は見当たらない。
精々が、長年手入れをされておらず、野放図に生い茂る草木によって蹂躙された嘗ての造園の名残を不気味に思う位だろう。
……しかし、スキルにて『気配察知』等を所持するアレスや、感覚器が鋭い『獣人族』であるガリアン。その手の事柄に関して言えば専門職と言っても良い『聖女』のセレンと、長年戦いに身を置いていたが為に本人の技量として感知出来てしまうヒギンズには、全くもって別の『何か』が感じられていた。
「…………なぁ、何だかんだ言って、俺が自分で持ってきた案件だから言わないでいたけど、コレってヤバくないか?」
「……あぁ、そうだな。当方の鼻にも、死と腐敗の匂いがプンプン漂って来ておるよ」
「……えぇ、嘆きと怒りと哀しみに支配された、さ迷える霊魂の気配を強く感じます。
一体、ここで何が……?」
「取り敢えず、ここはまだ大丈夫みたいだけど、建物内部はヤバそうだねぇ。
でも、ここまで濃厚な怨念が残ってるなんて、初めて見るよ?戦場やら処刑場ならともかくとして、なんで街中でこんなのが放置されてたんだろうねぇ……?」
皆、一様に表情を険しくし、普段からして草臥れた見た目で口調も飄々とした感じになっているヒギンズですら、その雰囲気を張り詰めたモノへと変化させ、真剣な様子にて言葉を並べている。
そんな皆の様子に、スキルや職によるアシスト無しでは個人での察知能力に劣る二人が、今気付いた様に若干怯えた様な様子を見せる。
「……え?ちょ、冗談よね!?
流石に、霊魂とか専門外に過ぎるんだけど!?」
「流石に、そう言う方面は良く分からないのです。
……でも、この子達があの建物を見ながら怯えてるって事は、やっぱり本当なのです?」
生きている他人からの悪意には敏感な反応を見せるタチアナも、既に相手が死人では培われた第六感は反応を見せない様子。
ナタリアも、本人的には良く分かっていないみたいだが、連れて来ていた従魔である森林狼は尻尾を股へと挟み込んで鼻を鳴らし、月紋熊はウロウロとその場を行ったり来たりして落ち着かない様子を見せていた。
そんな二人を落ち着かせる為か、何処か自信すら感じさせる微笑みを浮かべながら口を開くセレン。
「大丈夫ですよ。私が行使出来る魔法の中に『神聖魔法』と言うモノが在ります。属性で言えば『光属性』になりますが、こう言う案件にはピッタリな効果が在るモノなのです。
ソレさえ予め掛けておけば、いざ『そう言う事態』になったとしても、少なくとも抵抗が出来ずに一方的に、と言う事態は防げる様になりますし、こちらからの攻撃も通せる様になりますので、取り敢えず掛けておきましょうか?」
「「是非ともお願いします(なのです)!!」」
「ふふふ!承知致しました。
ついでに、皆さんにも掛けておきましょうか?」
「「「お願いします!!」」」
そうして、セレンによる神聖魔法の付与を一通り終えてから前庭を通り抜け、玄関の扉へと到達する。
そこで、アレスが懐から一つの鍵を取り出し、門の時と同じ様に差し込む……前に皆へと振り返り、本当に良いのか?と問い掛ける。
「……今なら、何も見なかった聞かなかった、って事にしてトンズラする事も出来るけど、どうする?
こんなあからさまにヤバい案件に、わざわざ首を突っ込む必要なんてぶっちゃけ無いんだから、尻尾巻いて逃げるのも選択肢の一つだけど?」
「……それも良いが、そうなると当方らに負け癖が付いてしまうやも知れぬ。
正直、リーダーの言う通りに尻尾を巻いて逃げ帰りたくなってきているが、盾役たる当方が真っ先にソレをするのは些か以上に問題であろうよ」
「私は、このまま参ります。
既に教会からは破門された身では在りますし、殆ど信心すらも棄ててしまっている自覚は在りますが、それでもさ迷える憐れな魂達をこのまま放置しておくのは、私の『聖女』としての最後に残されたプライドに掛けて出来る事ではありません。
幸い、この手の事例には慣れていますし、何より職の適性としてはこの上無い程に適切では在りますので、私一人でも行かせて頂く所存です」
「…………正直、アタシはドロンしちゃいたいけど、そうするとアタシを追放してくれちゃったあいつらと同じになりそうだから、アタシも参加するよ。
……でも、これだけは言わせて貰うから!絶対に、絶っっっっっっ対に、アタシをあの中で一人にしない事!良いわよね!?!?」
「大丈夫なのです!ボクも付いているのです!
……でも、ボクでは盾にもならないので、タチアナちゃんと一緒に誰か守ってくれると有難いのです!」
「なはははは!二人揃って、そこまでぶっちゃけるとはオジサン思って無かったよ!
大丈夫、大丈夫!ちゃんと、二人ともオジサンが守ってあげるから、安心して同行して下さいな。
まぁ、もっとも?ちゃんとオジサンの目の届く範囲に居てくれないと、流石のオジサンでも守りきれるか分からないから、あんまり離れすぎないでね?」
「言ったわね!?言質取ったから!!絶対だからね!!?」
「……ボクは、可能な限りで良いのです。
いざとなれば、ガリアンさんに助けて貰うのです!」
「…………いや、流石に当方でも無理な時は無理であるからな?
可能な限りは守らせて貰うが、手の届かぬ処に居られては、流石の当方でもどうにもならぬからな?」
「なら、ボクはガリアンさんの背中にでも張り付いておくのです!それなら、何時でも頭をモフモフ出来るのですよ!ぬふふふふふ!」
「……あらあら、皆さん仲がよろしい様で。
でしたら、私はアレス様に守って頂くと致しましょうか?お願いしてもよろしいでしょうか?」
「……まぁ、俺でどうにか出来そうなら?」
「ふふふ!では、約束ですよ?」
「へいへい。分かりましたよ。守らせて頂きますよ。
……さて、取り敢えず、全員行くって事で良いな?
なら、ここで何時までもグズグズしていても意味無いから、サクッと突入するぞ!覚悟を決めろ!!」
「「「「「応!!!」」」」」
覚悟を問うアレスの声に、他のメンバー達が気炎を上げる。
ソレを目の当たりにしたアレスは、手にしていた鍵を錠前へと差し込み解錠してから玄関扉を押し開くと、合図を出して全員で一気に内部へと踏み込んで行く。
そして、エントランスへと突入すると同時に、セレンが魔法にて作り出した光球を天井付近へと打ち上げて照明と視界を確保する。
…………するとソコには、ある程度は普通ではない光景を予想していた彼らにとっても、予想だにしていなかった光景が広がっているのであった。
さて、彼らの見た光景とは一体!?
面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m




