『追放者達』、物件の内見(?)を決定する
―――『本物の曰く付きなので、そちらで対処するべし』
そんな脅し文句とも取れる言葉が添えられた物件の情報に、ソレを求めていた『追放者達』のメンバー達はどう反応するべきなのか、と言う事で意見が別れた。
取り敢えず見に行ってみて、もしその『曰く付き』と言う事が本当であればどうにか対処し、万が一それが出来なければ諦めよう。
そう主張する、取り敢えず行動してみよう派はガリアン、タチアナ、ヒギンズの三名。
そして、前情報からして怪しいし、何ならそう言う曰く付きのモノであるのならば、調べれば幾らでも情報が出てくるハズなのだから、まずは調べてみるべき。
そう主張する、ちょっと落ち着いて行動しよう派はリーダーのアレス、セレン、ナタリアの三名であった。
「……いや、流石に危険が待ってるって保証されてる場所に、何の準備もしないで突撃仕掛ける様な真似は出来んよ?」
「しかし、聞くだけでもかなり好条件な物件なのであろう?
で、あるのならば、直ぐにでも行動せねば他の誰かに奪われる事になるやも知れぬぞ?」
「そうそう。こう言うのは早い者勝ちって決まってるんだから、取り敢えず先に入って唾付けるだけ付けておけば良いのよ!
そうやって確保してから、じっくりと解決すれば良いんじゃないの?」
「ですが、ソレはあくまでも私達で解決出来る事が前提となっております。
私達の力が及ばず問題を解決出来なかった場合や、そもそもが私達では解決出来ない様な性質の問題だった場合はどうするのですか?
私達は同じランク帯から見れば破格の稼ぎと実力を持っているとは自負しておりますが、だからと言って今回待ち受ける出費は捨て金にするには痛すぎる額になりますよ?」
「なのです!魔物が住み着いているだとかならどうにでもなるかも知れないのですが、原因がそうでないならボク達では対処が不可能な可能性も有り得るのですよ?
それに、依頼を受けて初めての場所に赴く時だって、下調べするのは必須にして当然なのです!」
「まぁ、オジサンはとやかく言うつもりはあんまり無いし、どっちかって言えばこっち、って程度の話だからこっち側に居るってだけだからねぇ。
でも、この手の事柄って、オジサンの経験上、上手いこと納めようと思ったらサクッと動いちゃわないと大変な事になりかねないからねぇ。
それに、ここに居る面子なら、何が起きたとしても大概の事はどうにかなるとは思わない?だったら、このまま行っちゃっても大丈夫なんじゃないのかな?」
「……それは、まぁ、確かにそう、かも……?
罠や仕掛けの類いで何かしていたのなら、多分解除するだけならどうにかならなくは無い…………と思ってる。多分だけど。
それと、一応探索士も踏んでるから、練度はそんなに高くないけどマッピングもスキルとして持ってるから迷わされる様な事にもならない……かも?」
「……前々から思っていたのだが、そなた少々万能過ぎはせぬか?
対応出来ぬ状況が想像出来ぬのだがな……」
「いやいや、流石に出来る事しか出来ないし、出来ない事には丸っきり対応出来ないからね?
物理でゴリ押し出来る事ならともかく、ソレ以外、特に非実体系のゴーストとかの類いに出現されたりすると、途端に対応出来る幅が狭くなるから、言うほど万能でも無いからね?」
「まぁ、そう言う手合であるならば、私は大の得意相手ですので如何様にも対応出来ますけどね♪」
「…………アレ?それだと、別にこのまま行っても良くない?
リーダーと聖女サマの二人がいて、ソレをアタシ達でサポートすれば、大概の事はどうにか出来るんじゃないの?」
「…………言われてみれば、確かになのです?
なら、このまま行っても大丈夫なのですか?」
「オジサンは、大丈夫だと思うけどねぇ?
まぁ、ダメだったら一回引き返して来て、調べ直してからリトライするなり、それでもダメそうなら手を引く、って事で良いんじゃないのかなぁ?
まぁ、オジサンはアイデアだけ出させて貰うから、決めるのはリーダーの君達にお願いするよ」
「……なら、オッサンの意見を採用。異議は?」
「「「「異議無し(なのです)!」」」」
「じゃあ、そうと決まれば早速見に行ってみるか?
一応、門と玄関の鍵に、物件の位置が記されている地図も貰って在るから、何時でも行けるぞ?」
そんな訳で、何やら互いが互いに説得し合った結果、両方の意見を混ぜ合わせた様な結論が出され、その場の勢いも相まって例の『曰く付き』の物件へと突撃を慣行する『追放者達』のメンバー達。
「……地図によれば、ここ……かな?」
シーラから受け取った地図を手に先導するアレスに従って進んでいた一行は、とある建物の前でアレスが止まった事によって停止する。
そこは、アルカンターラの中心地からは離れた、どちらかと言うと外壁の方が近しい場所に在るが、そのお陰で敷地が広く取れているらしく、グルリと建物を囲む塀は門からかなり離れた場所にて奥へと折れていた。
流石に外門は蔦に覆われているが、それでも壊れる様なことは無く、確りと作り込まれている事が見てとれる。
そして、塀と外門の向こう側に見えるレンガ造りの建物は、複数の階層にて造られているらしく、玄関へと繋がる荒れ放題の前庭に繁る木々の間から高い屋根が垣間見えていた。
「……ほう?これは、中々に豪勢な館ではないか?」
「庭も中々に広そうなのです!この子達も、気に入ってくれたみたいなのです!」
「……でも、曰く付き、って話は冗談じゃ無かったみたいね……」
「……えぇ、そうですね。外からでも、ピリピリした嫌な雰囲気を感じます」
「これは、もしかしなくてももしかしちゃうかもねぇ。
……半分冗談のつもりで言ってみたけど、コレは冗談じゃ済まなさそうだねぇ……」
……しかし、そんな彼らの姿と会話は、到底物件の下見の為の内件に赴いた、とは言えない様なモノであった。
アレスとセレン、それにタチアナとナタリアは軽装ではあったが、ソレはあくまでも鎧の類いを纏ってはいない、と言うだけで各自で得物を腰や手に携えている。基本的に武装を持たないナタリアは、ギルドの従魔小屋に預けていた従魔達を引き連れて来ている。
ヒギンズとガリアンに至っては、鎧まで身に付けた完全武装状態にてそれぞれの得物を背負っており、油断無く添えられた手は何時でもそれらを抜き打つ事が出来るだろう事を連想させた。
そんな、街中を行くには些か以上に不適切な格好をしている理由はただ一つ、彼らの目的地にして目の前にしている建物が曰く付きであり、ソレに対処する為のモノである。
……とは言え……
「……確かに、この雰囲気から察するに、例の話はガチだったみたいだけど、流石にその格好どうにかならなかったのか?
ここに来るまでに、どれだけ好奇の視線に晒されたと思ってるよ?」
「流石に、得物だけにしておいた方がよろしかったかと……」
「正直ダサい」
「なのです!」
「「……ガフッ!?」」
若者(一名自称)達による口撃を受け、地面へと沈み込むオッサン予備軍と正真正銘のオッサンの二人。
「……し、しかし……当方の役割として鎧は必須で……!?」
「オジサンも、流石に装備無しって言うのは心細くて……!?」
「はいはい。言い訳は良いから、取り敢えず行くぞ~。
まずは見てみない事には、何も言えないんだからな~」
それなりに理由あってのその格好に、すかさず反論を試みる二人であったが、一人普通に私服で来ていた裏切り者たるアレスによって、釈明の機会はバッサリと切り捨てられてしまう。
そうして、地面へと項垂れる二人を放置して外門へと手を掛けたアレスは、預かっていた鍵を差し込み、若干の抵抗感を覚えながらも捻り回し、軋みを挙げながら門を押し開くのであった。
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