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『追放者達』、新しい仲間候補を面接する

 


『パーティーメンバー募集



 一・ポーターかそれに準ずる働きの出来る者



 二・最前衛のアタッカー、もしくは中衛を担える者



 必須要項・過去にパーティーから追放された経験の在る者

 もしくは、理不尽な扱いに耐え兼ねて離脱した経験の在る者



 性別、人種、得意武器等は不問



 採用試験として面接有り』




 そんな内容の募集用紙をギルドの方へと提出してから数日が経過した。



 一応、ギルドを通して正式に掛けた募集であった事もあり、悪戯や冷やかしの類いは今の処無さそうではあるが、逆にキチンとした募集がちゃんと在るのかどうかは微妙だと言わざるを得ないだろう。



 そんな事をうっすらと考えながら、この日も山盛りの素材と討伐証明の部位を抱えて受付へと向かうアレス。




「失礼シーラさん。依頼を達成して来たんで、受理と精算お願いします」



「……承りました。確認させて頂きます。

 今回は『犬鬼(コボルト)の群れの討伐』ですね。依頼票に在る通りに、犬鬼(コボルト)の討伐証明部位の尻尾を五十本確認致しました。

 素材の方は、牙と毛皮でよろしいでしょうか?」



「えぇ。それと、群れのリーダーだったらしく、上位種の『犬鬼英雄(コボルトヒーロー)』も居たので、そちらの素材の買い取りと、討伐報酬も頂きたいですね」



「一応、そちらに関しては、上位種が出現する可能性高し、と依頼票にも併記されていたハズです。

 ですので、以前の様な『賠償金』と言う形でのお支払は出来かねますが?」



「えぇ、ですので、今回は上位種の討伐を促す為の奨励金の方です。大した額ではないにしても、それでもそれなりにはなりますからね。

 そちらであれば、広く開かれ整えられた制度ですから、大丈夫ですよね?」



「…………えぇ、大丈夫です。

 では、買い取りに回される素材の査定が終わり次第、まとめてお支払させて頂きます」



「了解しました。では、今日はここで失礼しますね」



「…………あ、すみません、アレス様。少々お待ち下さい」



「…………???」




 呼び止められた事により、返し掛けていた足を止めて半ば無理矢理振り返るアレス。



『暗殺者』として欠かさずにいた柔軟が効いている為に本人的には問題無い姿勢なのだが、端から見ていると見えない柱に掴まっているか、もしくは天井から糸で吊るしているかのどちらかにしか見えない様な、そんな奇妙極まりない姿勢にて振り返った彼に、呼び止めた本人も驚愕から目を丸くするが、直ぐにその衝撃から立ち直ると咳払いを一つしてから要件を伝え始める。




「んん。失礼しました。

 先日、アレス様の所属するパーティー『追者達(アウトレイジ)』への加入希望者を募集する張り紙を提出されましたが、ソレに関する問い合わせと、実際に加入を希望なさる方からの申し出が在りましたが、如何なさいますか?」



「……え?本当ですか?ちなみに、ソレってどっちの方の募集でした?」



「確か…………あぁ、在りました。ポーターの方と、長物を扱う中衛希望の方が一人ずつ、面接を希望されております。

 一応、他にも応募は在りましたが、条件に当てはまるかどうかを調べた際に、必要条件の方に当てはまらなかったのでその殆どが弾かれ、その二人だけが残ったみたいですね」



「……へぇ?その人達の経歴だとか、得た職だとかって分かりますか?」



「一応、その二人には軽いプロフィールを認めて頂きましたので、そちらをお渡し致します。

 実際に面接を行うのは、『追放者達(アウトレイジ)』の予定に合わせて良い、との事でしたが如何なさいますか?」



「どれどれ……?

 …………へぇ、なるほど、ねぇ……。

 分かりました。他のメンバーにも確認してみない事にはアレですけど、取り敢えず近日中に面接を行うつもりだから準備だけはしておく様に伝えておいて下さい。お願い出来ますか?」



「承りました。では、その様に伝えておきます」



「お願いします。まだ何か在りますか?

 無いのなら、失礼させて頂きますが?」



「いえ、今回は、他には無いので大丈夫です」



「では、今日はこれにて」



「はい。お疲れ様でした」




 そんなやり取りを最後にシーラと別れ、面接まで漕ぎ着けた二人分の書類を手に他のメンバーの元へと急ぐアレス。



 その顔には隠しきれない程に喜色が溢れ、まるで思いがけない処で予想外の掘り出し物を見付けたコレクターの様にも見える。




「……それで?そなた、いったい何をしてきたのだ?」



「何も無い、とは言わないで下さいね?全部バレておりますので」



「理由なんて言わなくても分かるとは思うけど、そんなあからさまに嬉しそうな表情してたらバレバレだからね?

 アンタって、そこまでポーカーフェイス下手くそだったかしら?」




 あからさまに『良いことが在りました!』と言わんばかりな表情にて合流したメンバー達から、訝しむ様な視線と共に詰問する言葉が飛んで来る。



 しかし、それに対して反論したり、激昂したりする事も無く、無言で二枚の書類を差し出して読む様に促すアレス。



 促されるままにソレを覗き込み、一瞬で彼が言わんとしていた事を理解し、同じ様な表情を浮かべながら握手を交わす三人。




「取り敢えず、近日中に面接、とは返事しておいたけど、詳しい日程とかはどうする?

 他に盗られる心配は無さそうだけど、出来るだけ早い方が心証は良さそうだけど?」



「うむ、そうよな……。

 些か急にはなるが、明後日等はどうだろうか?」



「そうですね。明日では急に過ぎますし、明々後日以降では少々気を長く持たせ過ぎる事になりますからね。

 その辺りが丁度良いのでは無いかと」



「まぁ、向こうの予定と合えば、だけどね。

 流石にこっちが見る側とは言っても、向こうにも都合ってモノが在るんだし、ダメだった時の事も考えておいた方が良いんじゃないの?」



「なら、合えば明後日、ダメなら来週にでも予定を合わせて、って感じで良いか?

 良いなら、それで返事して来るけど?」



「異議無し!」「では、それで」「良いんじゃないの?」




 斯くして彼等の意見は統一され、彼等の都合としての予定を伝えるべく、足取りも軽く再度受付へとアレスが向かい、そこで面接の予定を告げるのであった。






 ******






 当日、予定していた日時にてギルドを訪れる『追放者達(アウトレイジ)』。



 すると、既に顔馴染みになりつつある受付嬢のシーラによって、ギルドの奥の方に設えられている小部屋へと案内されて行く。



 そこには、小柄で一見子供の様にしか見えない『小人族(ハーフリング)』の女性と、何処か草臥れた様な雰囲気を纏った爬虫類の様な角と尾の生えた『龍人族(ドラゴニア)』の中年男性がおり、後から入ってきた彼等『追放者達(アウトレイジ)』の面々へと視線を送って来ていた。




「……予め渡していた資料にも載せておきましたが、こちらがポーター希望の小人族(ハーフリング)のナタリアさんと、中衛希望の龍人族(ドラゴニア)のヒギンズさんです。

 この部屋自体は半日程は使用して頂いても構いませんが、出来れば飲食の類いは別の場所にてお願い致します。

 あまり、他者には聞かれたくない事も在るでしょうから、私はこれで外させて頂きます。良い結果になる事をお祈り致します」



「……あ、あの!色々とお世話して頂いて有難うなのです!

 出来れば、またお会いしたいのです!」



「そうそう。オジサンも、君には彼等への橋渡しをしてもらって感謝してるんだよねぇ。だから、もし上手く行って、キチンと分け前貰えるようになったら、その時に何か奢らせてくれないかい?

 何、無駄に長生きしてるオジサンからの、感謝の印だと思っておくれよ」



「……ふふっ、では、そのお二人の『いつか』を楽しみにしていますね。

 では、失礼致します」




 微笑みと共にそう言い残し、退室して行くシーラ。



 ソレを見送った後、何処か張り詰めた様な雰囲気を纏って無言のままに見詰めて来る二人に対し、アレスを始めとした『追放者達(アウトレイジ)』のメンバーは軽く笑みを口許に浮かべてから先に席に着き、手振りで二人に着席する様に促してからアレスが代表して口を開くのであった。





「……さて、取り敢えず単刀直入に言わせて貰おうか。

 あの募集要項で俺達のパーティーに応募したって事は、ここがどんな所なのかは理解していると思わせて貰うよ。

 そんな訳だから、まず初めに二人には何が出来るのかをある程度ぼかしても良いから嘘は無しで申告して貰ってから、その後で『何で追放されたのか』『どうして追放されたのか』を話して貰おうかな。

 あぁ、ちなみに、これは俺達にとっての通過儀礼だから、話せない事は話さなくても良いけれど、取り敢えず話せる分は全部話しちゃって貰えるか?

 何、正式に仲間になった後でなら、俺達の話も聞かせてやるから、今はそちらからだ。

 じゃあ、まずはそっちの小人族(ハーフリング)のお姉さんから始めて貰おうか?」






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