読者リクエスト・愚か者達のその後
予告通りに番外編風味の何かです
お楽しみに(^^)
カンタレラ王国の王都たるアルカンターラ、そのとある一角に複数の男女が招聘されていた。
パッと見た限りでは、特に共通点らしきモノは見当たらない。
大部分が人族だ、と言う程度であり、ソレを除けば比較的年若い者が多い、と言う位だろう。
彼ら彼女らにしても、特に全員が全員知り合いである、と言う訳ではないらしく、それぞれ『青い短髪と赤い長髪の女性二人』と『痩せぎすでフルフェイス型の男とソレに寄り添う女性の獣人族』『共に首輪を嵌められているが青年を睨む二人の女性』と言った具合にグループが自然と構築されており、ソレを是正するつもりも理由も無いからか、特に別のグループと会話したりする事も無いままに時間だけが過ぎ去って行く。
一応、交流してみよう、と言う気概と好奇心は在るらしく、女性二人組のグループは時折獣人族の二人組へと視線を向けたりしているが、そちらはそちらで非常に近しい距離感にて男性の方へと女性がソッと寄り添っている為に、まるで夫婦の時間を邪魔する様で声を掛けるまでには至っていなかった。
逆に、その二人組に対しては、奴隷の行動を縛る為の物として有名過ぎる程に有名な『隷属の首輪』(通称『首輪』)を嵌められている青年が頻りに視線を向けているが、彼女らにはソレに応えるつもりが無いらしく、殺意すら感じられる程に鋭く力の込められた視線にて迎撃されてしまっていた。
そんな、ギクシャクとした空気が流れる中、唐突に彼らが集められている部屋の扉が開き、数少ない彼らの共通点である『冒険者ギルド』の関係者が中へと入って来る。
制服を身に纏っていると言う事は、恐らくは受付嬢としての業務を日々こなしているのだろうが、普段は浮かべられていたのであろう微笑みはその口元には存在せず、冷たさすら感じさせる程にキリリと引き締まった表情を浮かべていた。
「…………失礼、遅れました。
私はシーラ。ギルドの統括維持機構に所属する者です」
「…………統括維持機構、ねぇ。
なぁ、もっと分かりやすく『暗部所属だ』って言ってくれねぇか?」
「…………統括、維持機構……ギルドに叛く、高位冒険者を処分、したり……ギルドが直轄する案件を、秘密裏に処理する、部門……通称『暗部』、か……」
「……そんな、御大層な権限を与えられてるハズの暗部所属のシーラ様が、一体俺達に何の用だ?
他の連中はともかくとして、わざわざ断罪する為に蘇生させられ、その挙げ句に『戦力不足だから』と最前線に送り付けられていた俺達を引き戻してまで、何をさせたいって言うつもりだ?」
自己紹介を済ませたシーラに対し、それぞれのグループから『青い短髪』と『フルフェイス型の男性』、『首輪を嵌められた青年』が代表する形で揶揄する声と現状への説明を求める声を挙げて行く。
ソレに対し、普段担当の冒険者達へと向けている柔らかく暖かなモノとは異なり、冷たく攻撃的な微笑みを口元に浮かべた彼女が言葉を返して行く。
「……残念ですが、ソレを貴方に答えなくてはならない理由は在りません。
むしろ、何故教えねばならないのですか?
彼らが、『追放者達』の方々が慈悲から蘇生させたにも関わらず騙し討ちを仕掛け、ソレを返り討ちにされてギルド内部に巣食っていた協力者と共に告発され、数々の罪状を取り調べている最中に偶然魔族との戦闘が激化し始めた為に、本来ならば監獄送りになる処を戦力として利用する為にこうして首輪を嵌めて反抗出来ない様にする程度に抑えられている貴方なんかに、懇切丁寧に説明して、承諾を得なくてはならない理由が何か在ると、そう言うつもりですか?」
「………………ぐっ……!?」
「もう少し、ご自分の立場と価値とを確認してから口を開くことをオススメ致しますよ?
元『Sランク』で英雄候補筆頭とも呼ばれていた、『栄光の頂き』のサイモンさん?」
「…………ちっ!この、雌犬が……っ!」
忌々しそうに舌打ちを溢し、悪態を吐いて黙り込むサイモン。
そんな彼へと、同じグループの女性二人を含む周囲全てから蔑みを多く含んだ視線を向けられるが、次の瞬間にはそれぞれの胸中に思う処が去来したのか、気まずそうにしながら逸らされてしまう。
その様子を無言のままに見ていたシーラは、事が終わったと判断したからか、無表情のままに視線をサイモンから外して他の面々へと向けると、今回彼らが集められた本題についての説明を開始する。
「今回皆様に集まって頂いた理由を説明します。
単刀直入に言えば、皆様には今回立てられた『勇者』タジマ様の仲間となって彼をサポートし、最終的には魔王を討ち取って頂く為に、こうして招聘させて頂きました。
何か、ご質問は?」
「…………質問したい事が多過ぎて、何から聞いたら良いのか分からない。
でも、取り敢えず聞かせて欲しい。その『タジマ』とは、一体誰?
現行の魔族を称する勢力からの各国への侵攻は、私も知ってる。だから、それらを押し返す為の旗頭として、『勇者』が欲しいのも、ソレを担ぎ出したいのも理解出来る。
だけど、挙げた功績やら実績やらを鑑みるに、勇者として立てられるのならば『追放者達』のアレスが妥当なハズ。そうでないのならば、その『タジマ』は一体誰?」
ザックリ過ぎる程にザックリとしたその説明により、その場に居た面々の頭上に?が乱舞する最中、赤い長髪の女性が眠たげな半眼のままでシーラへと質問を投げ掛け、周囲の面々もソレに同意する様に頷いて見せる。
ソレに対しシーラは、憐れむ様な呆れた様な視線を彼らへと向けると、今回も簡潔に言の葉を自らの口に上らせて行く。
「…………何故、ですか?
そんな事、決まっているじゃないですか。
新進気鋭かつ現行の『Sランク』冒険者の中でも上位に食い込むだけの実力と、一体だけでも国の戦力でも手を焼いている魔族を単一のパーティーのみで撃退して見せた功績から『勇者』候補筆頭であった彼ら『追放者達』には、既に断られたからですよ。
……そして、その際になんと言ってオファーを蹴られたと思いますか?
『不要だと切り捨てられた俺達を、今更『必要になったから』と担ぎ上げる様な真似は不快だし、そもそも俺達には関係無い話だよな?』
と、こう言われていたのです。
もう、お分かりですよね?彼らに断られてしまったのは、貴方達が原因である、と」
「「「「「「………………っ!?」」」」」」
一人首輪の効果によって『見る』『聞く』『話す』を封じられているサイモンを除いた他の面々が、シーラの言葉によって息を飲む。
何せ、実際に彼らを追放した過去の在る者達であり、ヒギンズの所属していた『栄光の頂き』を除く『連理の翼』と『引き裂く鋭呀』の二組に関しては、それぞれ『消極的和解』と『訣別』と言う終わり方をしていはしたが、それでも彼らの口からその様な言葉が飛び出して来たのだ、と言う事を告げられるのは、些か衝撃が大きかった、と言う事なのかも知れない。
傍目からして動揺を隠せていない様子の彼らに対し、一瞬だけシーラの瞳に憐れむ色が浮かびはしたが、ソレも次の瞬間には消失しており、事務的に彼らへと向けて言葉を吐き出して行く。
「……さて、ご理解頂けた様子ですので、ギルドからの正式な通達をさせて頂きます。
『連理の翼』と『引き裂く鋭呀』の両パーティー、並びに冒険者ギルド所有の奴隷たる元『栄光の頂き』の三名は、カンタレラ王国が行った召喚の儀によって異世界からお越しになった『タジマ シカノスケ』様の魔王討伐の旅路に同行し、その道中のサポートや実際に戦闘を行う際の戦闘補助、タジマ様自身の戦闘能力の向上やこの世界での常識的な面での指導等を行って頂きます。
内容は多岐に渡り、かつ長期間拘束される依頼となる予定ですが、その分報酬は膨大なモノとなるでしょう。
見事魔王討伐を成し遂げた暁には、このカンタレラ王国内部にて法を犯さない範疇に限られますが、文字の通りに『なんでも』願いを叶えよう、と国王陛下が仰っておられる、との事です」
「…………それは、所属する国が異なる、私達の様な者でも等しく、でしょうか?」
「えぇ、恐らくは、そうなるかと思われます」
「……じゃあ、ウチらみたいに、現在の地位からの解放だったり、貴族への取り立てだったりを口にしても、通る見込みは在るって事なの?」
「まぁ、貴女達に関して言えば、恐らくは恩赦で罪が精算されて奴隷身分から解放、と言った処になるのでは?
そこから更に『貴族に~』と言ったとしても、通じるかは知らないし保証もしないし、確実に監視の目が付けられる事になるだろうから、想像している様な『自由な生活』には戻れないでしょうけど」
「………………では、自分の様な……負傷が原因で、全力を出すのに、時間的制限が……掛かったり、ほぼ雑魚専門みたいな、状態に在る者でも、それらは……適応される、事になるのだろうか……?」
「何も、戦闘だけが今回の依頼に於ける役割では在りません。
なので、多少の報酬の多可が変動する可能性は在りますが、だからと言って無報酬でとはなりませんのでご安心を」
「……なら、オレ達の所属をここアルカンターラに移して、オレ達『連理の翼』とアレス達の『追放者達』とに合同で依頼を持ち掛けるだとか、そう言った関係改善の為の取っ掛かりを作ったりする協力を求める、なんて願いでも受け入れるつもりだ、と?」
「それは、強制的に仲立ちして関係を改善させる、と言う事では無く、あくまでも、場を整える、程度に留まりますし、『追放者達』の皆様方にその意志が無ければどうにもなりませんが、それでもよろしいならば」
それらの返答を聞き入れた面々は、それぞれのグループにて話し合いを開始する。
それぞれ、現状からの脱却や、しこりとなっていた心残りの解消、関係の進展や向上と言ったそれぞれの望みに対して道が拓けた……かも知れない、と言う目の前の現実に、思わず興奮した様子にて言葉を交わして行く。
そして、ある程度今回『勇者』として立てられたと言うタジマなる人物についての質問が追加された上で、『連理の翼』と『引き裂く鋭呀』に関しては自主的に、元『栄光の頂き』に関しては強制的に『勇者の仲間』として近く旅立つ事が決定したのであった……。
………………ただ一人、腹の奥に抱え沈めていた、憎悪に気付く事の無いままに……。
……はい、と言う訳で番外編風味のヤツもここまで、と言う事です
一応、この物語の続きを書く場合に必要になる接続部分を想定して書いてみたので、読者の方々の中には今後の展開をアレコレと想像してみた方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?
安心して下さい
続きに関してはまだ『構想は一応考えてあるけど、書く………………かなぁ?』程度にしか考えていないので、当分の間は書かないかと思います(笑)
流石に、毎日定時更新は疲れた(ヽ´ω`)
暫くは脳と精神を休ませたいとです……
まぁ、それでも望まれるのでしたら、期待し過ぎない程度にワクワクして待っていて下さると有難いですm(_ _)m
最後に、この投稿で本当に今作はお終いとなりますので、最後に記念やご褒美、もしくは『良くやった!』『頑張ったね!』等思って下さった心優しい読者の方々はブックマークや評価を放り込んで行って頂けると作者が踊る程に喜びます(^^)
では、また何処かでお会い出来る事を願っております
作者でした(^^)




